ベタ東ダンジョン6層4
瘴気…それは今居るビーナの世界の「すぐ下の世界」に溢れているものだ。
女神に関する神話でも「穢れた場所」として女神が忌み嫌っている世界だとか。
その世界と時々つながってしまうことがある。その時に向こうの世界の瘴気が漏れてくるわけで…、今ここにその瘴気があるってことは「この先は異世界と繋がっていたことがある」ということになる。
恐らく今は異世界と空間が繋がっている状態ではないんだろう。繋がっていたならこの瘴気は上の階層にも徐々に侵食してるはずだからね。
有紀の胸の弾力…柔らかさ…暖かさ…を味わいながらも俺は冷静に考える。
というか、冷静に考えてないと理性がヤバイ。なので俺は思考を続ける。
瘴気があるということは異世界からの訪問者も居るかもしれない。
モンスターなのかヒトなのか…
ここの世界特別するためにそれぞれ「魔物」と「魔族」と呼んでいるそうだが、そのどちらなのか?
魔物の場合、コミュニケーションが通じないから倒すしかない。それと魔族の場合でも侵攻を考えているよなタイプなら倒すしかない。唯一戦闘を回避できるのは「侵攻を考えていない魔族」ぐらいか?
戦闘だけなら、恐らく有紀なら倒せる。
以前彼女が言っていた。高ランク冒険者が対応できないケースにランク0が対応すると。
問題はそれに巻き込まれると俺がヤバいという点だ。
俺は俺で戦闘になったら…という心配があるけど、有紀は恐らくそうじゃない。
勝てるわけだし。
彼女が怖いのは恐らく侵攻も何も考えていない魔族の場合だ。コミュニケーション必須になるし。
ふう…しかしこんな有紀に密着するのは恐らく初めてか?
小さい頃を除外すれば、だけど。
女の胸ってこんなに柔らかいのか。エロ漫画でも男が胸揉んだりするけど、すげーわかる。分かりすぎて辛い。しかもハリがあるという表現もまさに俺は顔で実感してるわけだ。
おっと、思考戻せ。今は現実を見ないと。
俺の視界は完全に遮られているが、聴覚は別に遮られていないわけで…。
ダンジョンの奥から声が聞こえてくる。
「良いか、お前も今日からは一人の狩人として獲物を取りに行かねばならん。」
「はい!」
渋い声と若い男の声が聞こえてくる。若い方は俺とそんなに変わらない年齢かな。
有紀がビクっとする。刺激するな…俺までいろんな意味でヤバイ。
「ここにはゴーレムというモンスターが居る。取れる素材を利用して我々の生活の道具、武器…さまざまなものを作るわけだ。食べためではないからそこまで狩りの頻度は多くない。しかし、分かるな?」
「はい、武器が無ければモンスターも狩れません。狩れなければ食事も取れません。ここで取れる素材も生活に必要なものですね。」
「その通り。だがここには瘴気がない。見ろ、ここですらこんなに瘴気が薄いんだ。先ほどまでのゴーレムとここから戦うゴーレムの強さは変わらない。だが…。」
「分かります。瘴気が薄いということは我々の力も落ちている状態ということですから、相対的にゴーレムが強くなります。」
男2人の会話は続くが、他にも居るような…気配は3人か。
と思ったら3人目の声があった。
「少年、君の認識は半分正解だが、半分違う。」
キリっとした感じの女性の声だ。どうやらベテラン2人と新人1人の構成かな。
更に女性の声が続く。
「瘴気が薄いということは。我々が使う能力は自身の瘴気に頼ることになる。確かにゴーレムは相対的に強く感じるが、それだけではない。自分自身の生命の要である体内の瘴気を消費することになる。」
「ど、どういうことですか?」
「うむ。それは俺が説明しよう。我々は瘴気が生命の要になる。お前が生活していた空間は瘴気が満ちていたから問題はないだろうが、ここのように薄かったり…あるいはこの先は瘴気は存在していないんだが、そこでは能力を使うたびに体内の瘴気を消費していく。要するに使いすぎれば死ぬ、ということだ。」
「死ぬ…」
「まあ大げさに考えることはない。瘴気が濃い場所に戻ればまた体に取り入れられるわけだからな。大事なのは無闇に瘴気の領域外に行かないことだ。いいな?」
「はい、分かりました。隊長!」
こんな会話が聞き取れるのはやっぱりお約束主義で同じ言葉を使ってるからなんだろうなあ。
しかし、内容からして瘴気の外に無闇に行かないってことは少なくとも侵攻意思はないんじゃないか?
会話も成立するなら俺は少なくとも友好が築けると思うんだけど…。
でも有紀は動かない、話すのが怖いから。
今までを思い返すと…大体俺が最初に一言目を話してるんだよな。有紀から話しかけるって言うのは殆どなかった気がする。もうこれは小さい頃からずっとそうだったけど、まさか転生前もこういう人見知りタイプだとは思わなかった。
てか、でも良く考えたらこの世界に来てから、有紀にとっては故郷の世界なんだが、やっぱり俺が最初に話すること多かったぞ。コレがコミュ能力ランク1の魔女の力だ。
しかたない、俺が行こう。
有紀をどかすために、俺は有紀の尻に手を回し、揉む。
(うわあ!)
有紀が声を出しそうになってぎりぎり我慢する。見えないからそんな気配がする、というのが正しいか。
俺は更にセクハラ気味に揉みつつ、胸に当たってる顔を振り回す。完全にセクハラ親父だ。
触り心地は最高!!だけど、堪能している場合じゃない。
最後は根負けして有紀が俺を離すと、俺は窪みから出ることに成功した。
(ちょっと、修司!)
(敵対型の魔族でもないみたいだから、話をしてみるよ。)
(う~~、危ないよ。)
(いざって時には有紀が俺を連れて瘴気が無いところに逃げてくれるだろ?)
(…分かった。修司も逃げられるように構えてよ?)
有紀が折れる。てか戦闘なったらあいつのほうが強いんだからそんなに怖がらなくてもいいのにね。
やっぱりファーストコンタクトにビビってるんだな。