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ベタ東ダンジョン6層3

6層に来てから5日が経過したが、マッピングはまだ全体の7割ぐらい?

滞在には余裕あるものの、この滞在期間での完成は難しので「一度帰還する」というのが昨日俺たちが話し合った結果だ。

この広いフロアは途中からなだらかな下り坂が続くが、奥はまだ見えない。

帰還を決めたのは「思ったより広いから」というのもあるが、ロックゴーレムの岩も結構な数が溜まったからだ。これなら一度換金して今度はもっと長い日数を潜ることが出来る。


ロックゴーレムだけではないが、ダンジョンのモンスターは基本的に群れることは無い。

ウルフを3匹相手にしたときですら連携プレイらしきものは無かった。俺が攻撃のときに生まれた隙を別のウルフが狙う程度はあったが、それだけ。

基本的に1体ずつ倒せるので短期決戦の戦い方がダンジョンでは相性が良い。ステータスを見ても筋力と魔力が少し高めなのはそのせいだと思う。

この短期決戦型の問題点は長期戦には不向きな点か。初見殺しというボスがアルカ村ダンジョンに居たけど、あれは結構きつかった。

俺自身の集中力が落ちてくるのもあるけど、敵の攻撃に長時間耐えるだけの耐久がないっていうのもあった。

有紀が言うには今の俺は攻撃よりのバランス型ステータスらしい。

同程度のステータスの冒険者達と比べて純粋な接近攻撃専門…メレーよりも攻撃力は一歩劣る、キャスター系よりも魔力も一歩劣る。みんなの盾になるタンクよりも防御力は二歩ぐらい劣る…という状態なんだとか。

「それでも冒険者3ヶ月の人と比べたら突出してるステータスだよ」と有紀は言う。

そりゃそうだ。確かに良い点だけで比較すれば一歩でも二歩でも劣ってるだろうけど、火力を出す人と比べれば俺は耐久力があるし、盾役に比べれば攻撃力がある。要は見方の問題なだけだしね。

冒険者として3ヶ月。俺は少数パーティーのダンジョン攻略向けのステータスや戦い方になっているんだ、と自覚した。

ま、自覚してもしてなくてもどうでも良い話でもあるんだけど。


今俺たちは大フロアを壁際に沿って歩いている。

移動中はゴーレムを倒す必要なんてないので有紀がミストを展開する。彼女のミストはブラインド・サイレンスも織り込んでいるので俺たちの姿や音を隠蔽してくれる。

ついでにスピードアップも掛かってるので素早い移動が出来る。

体が軽くなるというよりは、周囲の動きが遅くなって俺の体感時間が引き伸ばされるような感じだな。

アヴォイドも回避技ではあるけどこちらはこんな感覚にならない。1秒は俺にとっても1秒だ。

スピードアップは1秒が俺の中で3秒ぐらいになった感じだな。

魔術は魔法と違い1回ごとは効果時間短いが、有紀にとっては連続使用はさほど負担にならないようだ。

ちなみにもっと素早く動くことも可能らしいのだけどこの「体感時間の引き延ばし」に慣れてない俺には負荷が大きいのでこの速度に留めてるんだとか。

魔術の効果を高めすぎると効果が無くなったときに俺の中の時間間隔のズレが大きくなりすぎてしまい、平時の動きの感覚に違和感を持ってしまうようになる。


今日の地図記録を開始してしばらくして直ぐに異変が起きた。

「む…?」

「どした、有紀。」

「ミストの端の制御が崩れてるんだよ。なんだろう?」

ミストの効果範囲は有紀により制御されてるが、その制御の乱れというのは有紀の魔術構築に対して予想される効果とズレが発生しているということだ。

ついでに龍眼によるレーダーも俺たちの前方は何かに阻害されているようにその効果範囲が歪んでいるらしい。

その異変の原因はものの数秒で分かった。

紫がかった霧がミストに混じってる、というか進入してきている。

「…これ、これが噂に聞く瘴気か。」

有紀も初体験だし俺も当然初めてなんだが、この足元にうっすらと広がっている紫の霧が俺の世界とは別の世界から発生している瘴気なんだな。

瘴気で魔術の効果がやや落ちているようだ。龍眼も魔力の流れを見る能力だが、それも瘴気により魔力の流れが阻害されているためにレーダーとしての能力が落ちている。

だから、何時もより気づくのが遅れてしまった。

「前、な、何か来る。ゴーレムじゃない。隠れて、修司。」

有紀も過去に体験したことがない自体でちょっと慌ててる。

壁際に一人分が入れる窪みがあったのでそこに俺を入れようと背中を押し、俺もその流れに乗り窪みに入る。石筍も程よく生えており、確かにここなら見つかりにくい。

俺が窪みに入ったところで、「俺より有紀が入るべきじゃないの?」というレディファーストの精神が芽生えてしまった。

「いや、有紀お前が…ムグ!?」

振り向いたら俺の顔を何かが覆う。っていうか有紀も窪みに上手く潜り込んだようだ。1人分を2人で占領するからめちゃくちゃ狭いんだけど。

とりあえず、俺は顔を動かす。俺の話を聞いてくれ、有紀。

「ちょ、ちょっと修司…。ま、待って動かないで、冗談でも今はダメだよ。」

顔をぎゅっと押さえ込まれ、俺は首も動かせなくなってしまった。

そして気づく。この腕の位置と、俺の顔に当たる感触…柔らかさからして…

(有紀の胸か!!)

有紀の汗の匂いもわずかに混じって普段なら絶対俺の理性がどうにもならなかったと思う。

いやあ、緊急事態だから我慢できたけどね。普段なら絶対この後前かがみで移動するはめになってたよ。

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