ベタ東ダンジョン5層
ダンジョンに潜って最短経路で向かう。
もちろん4層で湧き水を確保して、5層に到着。今日はここで1泊する。
1・2層でシカ肉を少しゲットしたので滞在は今回も2週間以上行けそうだ。(元々2週間分の食料だけ買ってた)
途中ウルフとの戦闘も行ったが、武器性能の大幅アップだと思うけど、毛皮を燃やさずともパワースラッシュで傷を負わせるぐらいに火力が上がっていた。
バックラーのほうも重量が増えた分、盾を振り下ろすように攻撃に使うことも出来る。手数が増えた分ウルフの攻撃チャンスを潰し、回避したところを魔術で狙えばダメージを与えることが出来る。
連戦でも余裕あったし、今回も遭遇したウルフ3匹同時でも戦闘慣れしたことも影響あるのかもしれないが、割と楽に勝利した。
ただ、レザーの強化の恩恵は分からなかった。いや、分からなくても良いんだけどね。
「思ったより普通に4層までこれたな。」
「そりゃね。修司は他の冒険者との比較せずに今までやってきたけど、修司はランク2でもステータスは上位のほうなんだよ。ボクが援護することはあるけど基本的に戦闘は一人なんだから。」
パーティーで進めるのが普通の場所でも俺は二人で進めてるため、ステータスの上昇が大きいようだ。確かにゲームでも4人で戦うより1人のほうが入手経験値多いケースあるしね。
さて、ダンジョンは普通は3層で一泊するのがセオリーだけど、今回俺たちは地図を元に最短経路で向かったので5層で寝泊りが出来る。
スライムとも戦いたかったけど、5層のマッピングも行うからどの道ここで何日か過ごすことになるだろうし、慌てない。
5層入って直ぐのフロアに拠点を作るために有紀は「清風の杖」を地面に突き刺す。
直ぐに淡い光がフロアを照らし拠点完成だ。さっとこなしたけど、正直結界作るよりも手間掛からずだし、その癖に性能が良いのチートなのでは?
「4層はウルフの獣ぽい匂いがあったけど、ここからは無臭だね。」
有紀の言うとおり、4層とは違って5層は無機質な感じがある。
正確にはスライムと言う生物が居るわけだけどね。
スライムはダンジョンの壁から滲み出る水滴を食料としているらしい。4層の湧き水と同じか類似の成分だとしたらミネラルとかもそれで摂取してるのかもしれない。
「少し休憩したら付近のマッピングだけしておく?」
「そうだな。有紀今回もマッピングしてもらえる?」
「お安い御用だよ、修司。」
任せて!って腕まくりして力瘤作ってみたようだけどさ、残念だけど出てないぞ。
5層は3層までと対して差がない(4層はマッピングしてないからわからない)つくりになっていて、第一フロアから二手に分かれている。
今日は左側から調査する。古い地図だが、左側に途中の十字路やT字路を無視してまっすぐ進むと大きめのフロアが2つ、小さなフロアが3つで行き止まりとなっているようだ。
とりあえず大きめのフロアまで行ってみる。
「ん~、スライムは居ないね。」
有紀がマップを作りながら話す。マッピングと言っても大まかな大きさや発見されてない通路の有無を確認したり、資源(食べられるものも含めてね)が無いかどうかをチェックして地図に書き込む。
草が生えるのも毎回同じ場所のものもあれば毎回違う場所に生えるものもあるのでそこまで細かくは書き込まないけど、「こんな草があった、食べられる、味はこんな感じ」ぐらいは掲載しておく。
冒険者ギルド経由で商人ギルドにこういう情報とサンプル渡せば「○○という植物が生えている」と鑑定できるんだろうけどね。
ちなみに今回は何も無かったので大体の大きさを記入するだけに留める。
「スライムね、次のフロアに居るね。」
うほほ、早速戦闘か。
俺も気を張り、戦闘への集中力を高める。
隣のフロア・・・ゼリーがいた。いや、あれがスライムか。壁に張り付いてプルプルとしてる透明な四角い物体、そして中にはオレンジ色に光る玉がある。多分核かな。
有紀の解説によると、スライムのゼリーの部分は酸や毒を含む場合があるらしい。今回はどうだろう?
俺は武器にハードスキンを魔術をかけて突っ込む。
先手必勝!どうなるかな。
スライムも当然反応してる(気がする)が、そのまま核を狙って振り下ろす。
ズブブ・・・と沈むような、弾くような・・・そんな不思議な感触が手に伝わってくる。アーツ「パワースラッシュ」は剣を振り終えるまでは止められない限り持続する。
ゼリーの弾力が威力を殺すが、剣の動きはまだ止まらず、核に到達し・・・割れる。
パリンという音はしなかったが、そんな感じに核が割れると、先ほどまで形を保っていたゼリーがふにゃふにゃと崩れていく。
「・・・あら?」
特に攻撃してくる感じも無かったし、拍子抜けだな。
「この階層のスライムは特に酸や毒を含まないようだね。」
有紀が良いつつ地図に書き込む。
その後もマッピングしつつスライムとも戦ってみたけど、驚くほど弱い。動きも鈍いし。
ぶっちゃけ、これで良く5層でやっていけるな!ってレベル。
だけど、分かったことは二つある。
一つはゼリーの防御力は結構高く、俺は確かにパワースラッシュで一発だが、通常の攻撃なら恐らく刃が通らず途中で止められたと思う。要するに中途半端な攻撃だとまず通用しないってことだ。
もう一つ、意外と感知が難しい。
有紀の龍眼レーダーでモンスター感知をしているが、ウルフを含めて所謂動物系モンスターと比べて、有紀が認識できる範囲が狭い。有紀によると「無機物系モンスターは魔力の流れがダンジョン内部の魔力の流れと似てる」らしい。つまり一種のカモフラージュ効果だな。
ついでに匂いや気配も殆どないので視覚を中心としてスライムの位置や動きを把握する必要がある。
防御力と隠密性、この二つが今までのモンスターに比べて優れているのがスライムというモンスターなんだろう。
「ウルフには相性悪そうだな。」
「実際そうかもしれないね。」
ウルフは匂いを中心に策敵するが、スライムはそれに引っかかることはなく、奇襲を仕掛けられる。ゼリーに頭部を取り込まれれば窒息死だ。もがいて核を壊そうとしても牙は通らないわけだしね。
俺たちの場合もスライムによる頭上からの奇襲には要注意だが、逆に俺達はウルフとは異なり視覚で策敵するわけだから、まず頭上から確認していけば奇襲を受けることは無く、俺のアーツで倒すことができる。
有紀が6層を目指すって言った理由は良く分かる。
「正直初級ダンジョンのスライムのレベルは大体同じくらいだから、予想ついてたよ。」
酸や毒を含んでたらその対応が必要になるからそこだけ心配してたみたいだけど、それもないわけで、正直3層よりも余裕ある。
「ま、スライムの強さも分かったし、今日は一回引き上げて明日からまたマッピングしようか。」
「そうだね、5層はそんなに時間かける必要はなさそうだしね。」
俺たちは5層入り口の拠点へ戻った。