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ベタ東ダンジョン4.5層

<神城有紀の視点>

今ボクらは4層と5層を結ぶ階段にいる。

修司は精神的に疲労してるし、少し休憩しないとね。

ウルフを3匹相手にして勝利するのは、正直ボクの予想には無かったし、ダメだと感じたらボクは直ぐに向かうつもりだった。右足も噛まれたときにボクは助けに行きたいっていう気持ちとまだ修司の勝利を信じる気持ちが鬩ぎあってた。もう少し傷ついてたらきっとボクは我慢限界だったかも。

アルカ村のダンジョンは同じ初級ダンジョンでも向こうは完全に初心者を対象にしたようなダンジョンで、こっちは駆け出し向けじゃないので、3層・4層のウルフで苦戦するのは当然と言えば当然なんだけども・・・

ちょっと修司の成長はちょっと早いとボクでも感じてる。チートとかそういうレベルではないし常識の範囲でだけど、素人からスタートしてもうウルフ3匹相手にするところまで成長してる。

チラっと修司を見ると、ボクの貸したクッションでガッツリ寝てる。

今日の戦闘を見てて、ステータス面の成長はボクの予想通りだと思う。

一発で倒せるほどの魔力はないし。アーツも敵の弱点部位を狙って一発で終わらせてるけど、もっと筋力があればどこを切っても恐らく倒せたと思う。そもそも、筋力があれば毛に衝撃吸収されても切れるか。

けど、修司は自分も持っているスキルの使い方が割と上手い。

ボクが教えるよりも先に武器へのハードスキン付与もそうだし、敵の攻撃を避けるアヴォイドを利用して逆に接近するという方法もそうだし。あとウォールによって弾かれる向きの調整もそうか、兎に角「ただ使用する」だけじゃない。

もちろんこれらの発想は経験の多い冒険者なら自ずとできるようになる。けど、修司は冒険者になってからまだ3ヶ月だ。やっぱり彼は凄い。

修司が寝ているのでボクは気を使うこともなくジーっと見続ける。

「全体的に筋肉ついてるね。」

前はもっとプニっとしてたはずなんだけど、今は引き締まってて指で押しても弾くような硬さがある。

って、触ってしまった・・・。起きてないよね?

ボクは修司が寝てるのを確認して、再度腕を見る。

あ、そうだった、傷塞がってるけど痕になってないよね・・・?

そーっと腕を持って噛まれた部分を凝視する。

回復は出来るけど中途半端に回復終わらせると傷跡残っちゃうんだよね。

んー・・・見る限りは痕残ってないし、撫でてみても特に噛まれた痕と思われるような凹みもない。綺麗な腕だ。

うん、筋肉がついてるけど皮膚はスベっとしてて綺麗なのはあれだね、女性陣には人気の腕なんじゃない?どうなんだろう。クラスの女子に好かれちゃうかもしれないな。

腕から手に視線を移す。前は鉛筆やゲームのコントローラーを握ってただけだからどちらかと言うと細長くて女の子みたいな指してたけど、今は剣を握って落としにくいようにゴツくなってきている。肌は綺麗なのに男らしい手っていうのもこれはポイント高いですよ、修司さん!

そういえば小説とかゲームとかで目にする光景だけど、手を頬に当てたら女の子は落ちるもんなの?気になるよね。そして丁度ボクは今女なわけで。

「た、試してみよう・・・」

修司が寝てることをもう一度確認してから、ゆっくり修司の右手をボクの左頬に当ててみる。

「ん・・・」

ジンワリと修司の熱が頬から伝わってくる。

惚れるとか落ちるってはないね。でも安心感が得られるっていうのはあるかも。

あーいいなこれ、悪くはない。カップル同士とかならアリなんじゃないかな。

なんて考えながら目をつぶって修司の手の熱を感じてみる。普段やらないことをここぞとばかりにやっちゃうなんて知的好奇心って怖いね!

「有紀・・・」

声がしてびっくりする!

思わずボクも声出ちゃうところだった。て、修司起きちゃったの!?

修司を見ると、目つぶってるっていうか寝てるね・・・。

危なかった。やりすぎはダメだね。

手を修司のお腹の辺りに戻しておこう。


そういえばウルフ3匹倒した次のフロアで湧き水を発見してビン5本に水を詰め込んでおいた。

修司も飲んでみた結果、ここで休憩できるまで歩く元気が出てたわけだけど、滋養増強の効果は本当にありそう。

ボクも飲んでみたけど、ボクは分からなかった。味はボクには少し飲みにくい、口当たりが重い感じがした。あれかな?ミネラルが豊富・・・とかそういうのなのかな。

地図に書き込んでいく。

4層は探索向けじゃないから、既に地図に軽く書かれていた5層までの経路のなぞり直しと、途中にあった各フロアの大きさ、湧き水の有無を記しておく。

それと湧き水は水溜りを作っていてその周辺には草が生えていたので、ちょっと採集しておいた。

「これ食べられるのかな?」

少しだけ口に入れて食べてみる。苦辛い、けど毒はないや。

あ!これ、鹿肉の口直しで食べてみても良いかもしれない。今夜やってみよう。

オマケ的に「こんな草も生えていた」と言う追記を入れておく。

今回ボクが書いてる情報は冒険者ギルドに無償で提供する予定だ。現時点では潜りたい人は少ないかもしれないけど、今後興味持った人が増えてきたら役立つと思うし。

ちなみに湧き水は小さな筋を描きながら壁の向こうに消えていったけど、あれはどこにつながってるんだろうか。こういうのも今後他の冒険者が発見するかもしれない。楽しみだね。


「ん・・・っはあ、よく寝たわ。」

ボクが丁度地図に書き込み終えた辺りで修司が伸びをして起きた。

大体2~3時間ぐらい寝てたのかな?

「おはよう、有紀。ありがとうな、地図の書き込みしてもらっちゃって。」

修司はまだ寝ぼけた顔してるけど、一声感謝を伝えてくれる。昔から「やってもらって当然」とは考えないでお礼言えるのはキミの良い所だと思うよ、ボクは。

だからボクもニッコリと笑顔を修司に向ける。

「おはよう、修司。地図はここまでで十分書けたよ。」

さあ、3層の拠点に戻るまでが冒険だから、油断しないで戻ろう。

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