表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/229

ベタ東ダンジョン3層3

魔術「フレイム」を覚えてからの対ウルフは「最初のは何だったの?」と言うぐらいに楽になった。

流石に俺の魔力じゃ一発で倒すのは無理だが、それは予想通り。

タイミングとしてはハウリング→圧し掛かりのところをウォールで弾き返し、相手が着地する前にフレイムをぶつける。こうするとウルフは回避できず発火する。そして火をつけられ怯んだところでパワースラッシュを首筋狙って倒す。これだけだ。

ただウォールの詠唱は間に合わないので基本的にキープを利用しておかないといけないので、連続戦闘は避けないといけない。

「バックラーだとまだ筋力が足りなかったな。」

「体大きいから重量もあるんだね。」

俺は最初バックラーで弾くことを考えていたが飛び掛ってきたときの全体重を押し返すことが出来なかったので結局ウォールを利用することになったわけだ。

それにバックラーの面積ではどのみちウルフの体全体を押しのけるのは難しいんだよな。

ちなみにウルフは視力より嗅覚が優れているようだが、同時に魔力感知能力も高い。地面に着地されるとフレイム発動させる直前にその場から飛びのかれてしまうので、弾き返して着地されるまで回避不可能な所を狙わなきゃいけない。

この攻略法に慣れるまではフレイムタイミングをミスったことは何度もあるが、そんなときは有紀にフォローしてもらう。彼女のフレイムはウルフが避けても避けた先にもう一発当てることが出来るので、俺のように「ミスったら別の手段」と考える必要はない。

「早いなぁ。」

俺は思う、というか口にしてた。

有紀の魔術はとにかく早い。俺が一発撃つ間にいくつもの魔術を発動させられるぐらいに。


そんなこんなで1週間。

俺達はひたすら3層のマッピングしつつ、ウルフ討伐に勤しむ。

シカも居るので食料としての鹿肉を得るために狩る。2層よりも攻撃的ではないので心が痛むところではあるけど、俺達も飯がないとね。

他にもダンジョンのいくつかのフロアにはレタスに似た野菜いやぶっちゃけレタスだもあった。もちろん少しゲットしとく。

「だいぶ地図も埋まってきたね。」

拠点にて、作ったスープを飲みつつ有紀が言う。

フロア自体は地図が完成していると半日で通過できるが、俺達は戦闘を中心にしながら休み休みのマッピングなのでゆっくりペースだ。

「そうだな、多分まだ埋まってないところに4層につながる階段があるのかな。」

「だろうね。明日はそこ埋めに行こうね。修司、お替りは要らない?」

「お、頼むよ。」

俺は器を有紀に渡す。戦闘ずーっとすると疲れるのと、魔力と体力の消費からか異様に腹が減る。

「しっかり食べておくんだよ。」

有紀がニコリと笑顔を向け、言う。

俺達はもうずっと二人で行動してるよなあ。俺にとっては生まれたときから、か・・・。

スープを啜る。シカ肉とレタスが良く煮込まれてる。

「・・・ふぅ。」

腹を満たす感覚に、今度は眠気が出てくる。

「なあ、有紀。」

「うん?どうしたの?」

お前は俺と一緒に元の世界に戻るのか?と聞きたくなるのを我慢する。彼女にとってはここが自分の世界だろうけど、俺にとっては昔から一緒に居たヤツだから何となく居なくなるのは寂しいな。

「・・・いや何でもないよ。ご馳走様。美味かったよ。」

「ぷっ。修司、これ煮込んで塩コショウ適当に入れただけじゃん。誰でも出来るよ。」

「いやいや、有紀汁がね。」

「ちょっと!この前も言ったけど生成した水、別にボクの体からでてる訳じゃないんだよ!」

「ははは、分かってるよ。冗談だ!」

「まったく・・・。その何チャラ汁ってさ、ボクら前の世界ではネタで使ってたけど、いざ言われてみるとゾワワってするんだね。」

「そうなんだ。修司汁とか確かに気持ち悪そう。」

「うん、汗臭そう。」

おい!とツッコミを入れると有紀も面白そうに笑う。

俺達は基本的に他人との距離をあけるタイプだ。全く話せないわけじゃないが「可能なら避けたい」わけだ。

ただ俺は有紀とは冗談を言い合えるし、本音を漏らすことも出来る。・・・まあ肝心の質問は避けたけど。

「他のヤツら、今頃何してるんだろうな。」

クラスメイト、一応俺達は仲が悪いわけじゃない、俺達が距離をあけてるから向こうも距離をあけた接し方をしてくれてたし必要以上に絡んでこないっていうのは「良いクラス」だったと俺は思う。

「うーん・・・同じようにダンジョンで修行してると思うけど。ただ、王国がサポートしてるとしたらもっと効率的にレベルアップできるだろうし、もしかしたらだいぶ冒険者ランクも上げてるかもしれないね。」

「あ、冒険者には登録してるのか。」

「基本的には。登録しないとダンジョン利用できないからね。ほら、ボクらがラッキーリップスにお世話になるときもお金払うのと同時に身分証明書として冒険者カードだしたじゃない?」

「ああ、確かに。そうか、王国の援助があってもダンジョン内のクランの世話になるとなると身分証明書代わりに必要か。」

「そうだよ。それにステータスだって分からないでしょう?」

それもそうか。

ちなみにステータスは自分にしか見えないようになってて、俺の数字は有紀には見えない。

これがプライバシー保護ってやつか。

有紀が言うには「ステータスは最大の個人情報」で、むやみに他人に伝えてはいけないんだとか。というのも、対人戦で「アイツは筋力特化だぞ」とばれてしまえば対策されてしまう。組織同士の戦闘において情報がバレるのは「戦力が一人減る」のと同じだ。

もっとも、冒険者カードの内容を見ることは他人には出来ないので「嘘の数字」を伝えるということも出来るし、相手にとっては真偽の見極めも必要になるので高度な情報戦が展開されるわけだ。

話はそれてしまったがクラスのヤツらも冒険者として登録してるってことなら、どこかの冒険者ギルドで噂話を耳にするかもしれないな。

俺がここの世界に来て3ヶ月・・・だったかな。彼らもこの3ヶ月で成長しているだろうし、会っても俺がついていけないから一緒にダンジョンとかは無理そうだな・・・。

「でも、本当なんで召喚されたんだろうな。」

「う~ん、なんだろうね。ボクにも分からないや。」

有紀が肩をすくめる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ