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ビーナ2

俺の世界から召喚された「グレン・ステイプルトン」という人間が仮説を立てたらしく、今でもそれを否定する研究結果は出ていないことから概ねこの仮説が正しいのではないか、と言われている。

有紀は「あんまりきっちり覚えてないから、つっこみ所あるかもだけど・・・」と前置きしつつ話をし始めた。


モンスターはダンジョン内の魔力溜まりで自然発生する。

にも拘らず地表にモンスターが居るのは(そして狩猟しても数を減らさないのは)なぜか?

昔は地表にモンスターは存在していなかったが、何らかの理由で1層のモンスターが餌を求めて地表に出てくる。

当然陽の光は弱点なので消滅する固体が出てくるが、夜に活動するようになったり、あるいは日光の光に徐々に慣れていくなど・・・環境に適応できるようになっていく。

同様に2層のモンスターも3層のモンスター・・・もしくはそれ以降の階層のモンスターも何かの拍子で外に出るようになった。

また地表にモンスターが増加することで草木もその繁殖法をより効率の良い形へ適応させ、一部が俺達の世界と同じように花をつけ花粉を動物経由で運ぶという形に進化したのだろう。

さて、その「何らかの理由」とは何か?

グレンは「人間がより多くの食料、より多くの素材を求めた結果、1層やそれ以降の生態系が乱れた結果ではないか?」と推測している。

例えばダンジョンに生える植物が魔力の影響で1日100本生えるとする。昔はダンジョンにいるモンスターが食す分と人間が収穫する分で釣り合いが取れて居たところを、人間が多く収穫するようになればモンスターの食す分は減る。

ダンジョン内で自身の生活維持が困難になったモンスターが地表に出るようになった、という訳だ。

同様に、とあるモンスターを捕食するモンスターも、捕食対象が減り餌を求めて地表に出てくるようになった。

以上がグレンの提唱する仮説の大雑把な説明なんだけども。

まあよく分からん。とりあえずモンスターが餌不足で地表に出たって言うのと、陽の光に適応するようになった、てのは分かった。


次にグレンは「モンスターのサイズ・生態が地表とダンジョンで全く異なる」という点についても研究していた。

モンスターのサイズは地表のほうが小さい。

これはダンジョンには「不純物」を含んだ空気がモンスターの栄養補給になっていたが、地表には不純物と言われる何かは混入されていないので、摂取できる栄養・エネルギーの問題からサイズダウンすることで「環境に適応した」ということになる。

そしてサイズダウン=弱体化することで簡単に倒されないようグループで行動するようになったと思われる。

また、モンスターはダンジョンで自然発生する以上、一定数のモンスター数に到達すると魔力溜まりが生成されなくなるためそれ以上に増えることは基本的に無い。(でも稀にあるらしい)

一定数のモンスター数を維持するために、ダンジョンで生まれてくるモンスターは全て成獣で生まれるが生殖能力は存在しない。

ところが地表のモンスターは自然発生することがないので、個体数が減れば集団を維持できなくなってしまう。その必要から、彼らは個体数の維持もしくは増加を目的として「生殖能力」を獲得したとグレンは推測している。

昔は「無性生殖」という安易な増殖を以って集団の維持をしてきたと思われるが、地表はダンジョンと異なり環境の変化がある。そのため多様な環境変化にも適応させるために「有性生殖」の能力を取得し、オス・メスに分化したんだとか。

なるほどね、楽に増殖できる無性生殖は環境の変化には弱い。ところが手間の掛かる有性生殖であれば自身と相手の特性を掛け合わせて新たな特性を生み出すことが出来る。環境変化を考えれば筋の通る話だと思う。

と言うことであれかな。

地表のモンスターはダンジョンよりもサイズ小さく、集団で行動する傾向があるってことでいいのかな。


自然発生。

俺達の世界では否定されてる説だが、ここでは魔力の存在により実際に起こっているわけだ。

また、適応しない個体は消滅し、適応できた個体が地表で増えていくという自然淘汰も起きているし、何となく俺の世界と似てるようなところもあるし似てないところもある。

「でもそこはファンタジーだからもっとガバガバでよくない?」

つい突っ込んでしまった。

「修司、ここもまた一つの世界だよ。向こうで説明つかない話もここでは通じたりするからね。」

そう、例えばこの世界ではモンスターは倒されると消えて、肉がドロップしたり牙がドロップしたりするあたりは非常にファンタジーだ。人間だって数時間放置したら消滅するし。

この点についてはあんまり解明が進んでない。

一応クローディーヌ・デュランという、俺達の世界で宣教師をしていた人が召喚された際に、宗教的見解として「この世界と人間は女神達が創ったもので、モンスター達は人間が生活するために創られた存在だ」という説を提唱していて、これは王都の学者が支持している。

しかし、ブシ市の書物においては「人間も自然発生したもの」という説の書かれた書物が存在しており、ブシ市の学者はクローディーヌの提唱には懐疑的な意見を示している。

もっとも、人間が直ぐに消滅しない理由やモンスターが消えた後にアイテムを落とす理由についてはブシ市側の説では説明しきれて居ない(ブシ市図書館に書物が多すぎて発見できてないというのもあるようだけど)。


「うーん、要するにモンスターは地上とダンジョンで別の生き物として分かれたってことでいいよね?」

「ボクは学者じゃないからなんとも言えないけど、そういうことなんじゃないかなぁ?」

「この世界では数時間で人間が消える、けど俺達異世界から来た人間はどうなるんだ?」

「ボクらよりは消滅するまでの時間は長いけど、最終的には消滅する。」

ただ・・・と有紀は付け加える。

「召喚されるときに女神の加護を得てるから不慮の死事態少ないんだよ、彼らは。」

なるほど、天寿を全うしてるってことだな。

ん?あれ?

「召喚された人らが元の世界に戻ったって言う話はないの?」

「あるよ、もちろんね。ただ・・・その方法が分からない。女神達じゃないとね。」

それもそうか。戻り方がどこかに書いてあったら今頃俺は戻ってるしね。

・・・いや、戻らないかもしれないな。有紀次第では。

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