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ベタ東ダンジョン

ベタの東に位置するところに存在するため、単に「東ダンジョン」と言われるこの初級ダンジョンは10層構成だ。

1層はアルカ村と同じくダンジョン内が外の陽に対応して天井にある苔が光るため、割と明るい。

作物も良く育つっていうか勝手に育っていくのでそれらの採集依頼が多い。

2層は1層同様に作物が育ちやすいものの、ここはシカ系モンスターが陣取っており生えてきた作物をモグモグと食べてしまう。が、ドロップするシカ肉も独特の旨味があるので1層は作物の収集、2層はシカ肉の収集で依頼が張り出される。

「ココア冒険者同盟」はこの2層までの依頼を毎日のように受けて安定供給を行っている。

ふざけたクラン名だけど、町にとって大事な供給はちゃんと維持しているし、悪徳クランというわけじゃないんだな。

3層にもシカは存在するものの、3層ではシカはあまり襲ってこない。というか3層は彼らの天敵となるウルフが居るため、シカとしてはイチイチ人間に構う気はないのかも。

4層はウルフのみ。恐らくモンスター独自の経路で3層で狩猟して4層で生活をしてるんだろう。自分の生活エリアへ入り込んだ人間に対する攻撃性は異常で、同じウルフなのに3層よりも強いしガンガン襲ってくる。

その代わり4層には湧き水が複数個所あって、ここの水に含まれる成分は滋養増強の効果があってたまに健康マニアのお金持ちから採集依頼が来るんだとか。

「とりあえず」と有紀。

「どうしようかな、本当は1層とか2層で慣れておきたかったけど。」

有紀が考えてると角刈りが有紀の側に来る。

「ごめんな。君が一時的にでもクラン員になってくれるならそっちの男と一緒に1層の依頼とか受けさせてあげるよ?」

あ、目線見て気づいた。有紀は今冒険者用の服装だから変な露出はないけど、顔が良い。

値踏みするような目で見てた。あわよくばゴスロリ女以外の女も入れて自分の欲求を満たそうとしてるんだろう。・・・まあ多分ゴスロリ女(予想してたけど名前はココアさんと言うらしい)はそれを許さないだろうけどね。

「いや、大丈夫。結構です。本当無理なんで。」

最後はよく分からないけど、早口に有紀が断った。無表情だった・・・、嫌だったんだろうな。

ココアさんに有紀が声をかける。

「でも、3層からはあんまり依頼受けて無いんですね。」

ピンクゴスロリのココアさんが答える。有紀の見た目に対して明確に嫉妬の目が向けられてる。

女ってこわくない?いやコイツだけか。

「3層からは1日じゃ戻って来れないじゃない。マッタリクランには無理でしょ?依頼腐らせるわけにもいかないからたまーに受けるけどね。あ!そっか!キミたち、3層から先の依頼なら空いてるから受けてもいーよ!」

最後のほうは見下すような、バカにするような目線を俺に向けてきた。ココア「さん」じゃないな、ココアめ・・・。

俺はムカっとしつつもそういう目を向けない。こういうのはトラブルの元だからね。

有紀は少し考えてココアに聞く。

「実は3層以降の依頼を受けても良いかなと考えてるんだけどね、ココアさん。」

「そのほうがいーよ!二人が頑張ってくれたら3層の素材ほしがってる人は大喜びだしね。」

明るい声出す割に、その目は笑ってない。

有紀が「女として」自分の脅威になってるのを自覚してるなろうな。外見的に明らかに有紀の勝ちだし。

「ココアさん、お願いがあってね。3層以降はダンジョン内で泊まらなきゃいけないし、食料分けてほしいんだけどダメかな?このダンジョン管理してるのって『ココア冒険者組合』さんでしょう?」

有紀はココアの目線受けてもサラリと流して話を続ける。

ココアもこれ以上は敵意を向ける意味もないと思ったのか「さっさと話を切り上げよう」という態度になった。

「そうよ、管理しているのは私たち。依頼期限もなく『いつでも良い』レベルの依頼は放置しているけど、ちゃんと必須依頼なら3層だろうが4層だろうが行くわよ。・・・私以外の男達が。」

ココア冒険者組合・・・、中位~高位のランクが割といるから潜ること自体は簡単なんだろうけど、ココアは潜らないので「ココアと居たい」彼らも潜らない。ココアが指示したときだけ3層以降に潜るようだ。

今回貼られてる依頼は生活に必須な、要するに期限のある依頼はないので、3層以降に行くのは自由にどうぞという感じなんだな。

「そうね、いいわよ。食料よりは、ねえ貴方・・・2万コム彼らにあげなさい。」

「はい、ココアさん!」

角刈りが自分のポケットマネーで2万コムくれた。これで自分で買えってことか。

ここも実はココアなりの考えがあって、食料を分けても良いのだろうが「毒が入ってるかも」と疑って手をつけないという無駄を避ける狙いがあったようだ。

ウザい女だけど配慮はそれなりにちゃんとしてるみたいだし、真面目なのかもね。

「ありがとう、ココアさん。修司、行こう。」

お金を受け取った有紀はいくつか依頼を受けて、準備の為にギルドを出て行く。

ココアも既に興味を失ってたみたいで「行きましょう」と角刈りを引き連れてギルドの別室に向かう。

ギルドの2階にクランの事務所があったみたい。


「3層行き成りいけるのか・・・?」

俺は正直慣れてないからちょっと不安なんだが。

「慣れる時間はほしかったけど、余裕だよ、修司なら。アルカ村のときは武器の扱いやダンジョンの歩き方をレクチャーしてたから時間掛かったけどね。今の修司ならモンスターごとの対策だけ覚えれば3層でも4層でもいけちゃうよ。強さだけで言えば修司のステータスで十分倒せるはず。」

「そうか、なら3層行っちゃおうか!と思ったけど、3層で寝泊りするんだろう?モンスターに教われない?」

「それは大丈夫。ボクが結界を張るからね。」

魔術に「サンクチュアリ」というものがある。奇跡と呼ばれる神官のスキルにも存在してるらしいけど。

でもそうすると有紀はゆっくり休めないんじゃないか?

「ああ、ボクは魔術や奇跡じゃなくて、アイテムを使うよ。」

有紀が杖を取り出す。

上のほうに大きな青い宝石が取り付けられていて柄は金色だ。流石に金で出来てるわけじゃないと思うが。

「これを地面に刺すと一定範囲にサンクチュアリと同じ効果が得られる。サンクチュアリは張り直しするし、その度に魔石を消費するけど、これは魔力が切れるまで張りなおさなくても良いから何泊もするには重宝するよ。」

「清風の杖」と呼ばれるこの杖は溜め込んだ魔力を宝石から放つことで光が届く範囲にモンスターを避ける効果を発揮する。この光は影を作らず、例えば宝石の前に立っても背後に影が出来てモンスターが出現する・・・ということはないわけだ。

「設置中も魔力の補充は可能だから、2~3日に1回ボクが魔力補充しておけば杖を置くだけでずっと効果が続くサンクチュアリみたいなもんだよ。こっちのほうが魔石の消費気にしなくていいからボクには楽なんだ。」

魔石なー、嵩張るし残りの数把握するの面倒だったりするもんな。それに全部売り払って今は手持ちもないし。

食料も購入したし、早速東ダンジョンの3層に乗り込むことにした。

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