ガマー村2日目2
<神城有紀の視点>
ボクは明日からの旅路に備えて買出しをする。と言っても水に食料を2日分だけど。
旅程は1泊二日、しかも1泊は運行会社とベタ町共同出資による宿泊地があってそこに泊まる。
宿で寝泊りすることは出来るけど、その宿には食事する場所がない。その代わり周辺にはベタ町からの露店(主に飲食)が出てるのでそこで購入して食べても良いわけだけど、正直高い。
ということで高いのを購入するよりも村の食料を購入したほうが良いだろうというのがボクらの結論だった。
素材を購入してその場で作るか、出来合いのものを食べるか・・・。バスの中の飲食も踏まえると出来合いのものを購入して収納するほうがいいかな。
お弁当売り場を見に行く。色々お弁当があって、木の板を使ったお弁当箱に入ってる。
「修司は育ち盛りだからなぁ。多めに購入しておこう。」
しょうが焼き弁当らしきものを購入したり、卵を挟んだサンドイッチを購入したり、バリエーションも増やしておく。
「ここにもマヨネーズあるんだな」と修司が言ったことあるけど、食事はどこの世界でも必要なものだから発祥に差はあっても同じような調味料は出来るよね。
一通り食事は購入し終えて、あとは道中喉が渇いたときの対策に何かないかなー、と喫茶店を見てみる。
ここは紅茶やハーブティのパックが売ってたりするから、バスの中でのちょっとしたお楽しみになるといいな。
「お、水出しのティーパックだ。」
お湯じゃなくても作れるタイプがあるのはありがたい。バスの中で沸騰させようなんて迷惑行為をしなくて済むし・・・。
てことで早速購入しておく。そのついでにアイスティを飲んでいこうかな。
「ふう。」
外を見ると今日も晴れていてさわやかだ。
アルカ村と同じく温和な気候なので極端に暑くなることもないしね。
というよりダーズ王国は全体的に穏やかな気候の地域が多く過ごしやすい。
ボーっと外を見てると、外を歩いてた男女がボクを見る。というか近づいてきた。
「え・・・え・・・?」
混乱しそうになったけど、よく見たら女の人は運転手の人だった。
「有紀さんでしたっけ。こんにちは。」
「こんにちは。えっと・・・」
そう、ボクは彼女の名前を知らないんだ。
「ああ、ごめんね。私はララ、こちらは旦那です。」
隣の男がペコと会釈する。
「ララさん、アルカ村からここまでお世話になりました。」
何をしてるか聞かれたので明日からの移動用に飲食購入していたことを伝えた。
「そうなんですね。ベタの町については私は行ったことがないのでわからないんですがアルカ村よりも更に沢山の冒険者がいるんですよね?」
そりゃ、ガマー村からもクラン員が出稼ぎに行くはずだしね。
「人ごみ苦手だから、あんまり都心部とか行きたくないんだけどね・・・。」
ボクが返事をする。人ごみ本当に苦手だし人と話をするのも苦手だ。
今もララさんとの会話はちょっときつい。というかララさんこんな喋る人だったのか・・・。
喋るときの緊張感で口が渇いてしまうので紅茶を飲む。
「あ、そういえば修司さんとはお付き合いしてるんです?」
ブーと紅茶を吐き出す。お約束だね!
「え?ええ?そんなわけ無いよ!」
「あら?そうなんですね。好意とかもないのかな・・・?」
「う、うーん・・・分からないね。少なくとも他の人よりも信頼はしているし、友人としては好きだけども。」
「そうなんですね。・・・ふーん・・・」
じろじろ見られる、やめてー!
居心地の悪さを感じてたらララさんが突然言い出す。
「服を買いに行きましょう。」
ふぁ!?何で!!?
そんなわけでボクは今村で一番女性向けの洋服を取り扱っている店にお邪魔している。
「安心して、私が奢るからね。」
「い、いや、ボクは服はそんなに・・・。」
断ろうとしても「いいからいいから」としか言われない。何だこの人。
「すまないね。ララは可愛い女の冒険者を見ると『女の子らしい服を着させたい』という衝動に駆られるらしいんだ。もちろん服はベタの町で売却してもいいから今だけ付き合ってくれるかい?」
旦那さんが謝りながら言う。
ボクとしては早く帰りたかったけど、売却してもいいってことは多少お金になるよな・・・、と考えて付き合うことにした。ボクらの資金に出来るなら我慢すべきでしょ?
「アナタ、先に家に戻っててね。ここからは女の子だけの時間だから。」
ララさんが旦那さんを追い返した。
ミランさんと一緒に雇われたとは言え、毎回ジャックさんの乗るアルカ村のバスを運転するわけじゃないらしい。ミランさんはメイン運転手だから付きっ切りだけど、ララさんはもう一人のサブ運転手とローテーション組んで運行するため2週間仕事をしたら2週間休暇というペースで仕事するだとか。
兎も角、ララさんにはまだ時間がたっぷりあるわけで、ボクに付きっ切りでも問題ないようだ。
・・・問題あったほうが良かったな。
魔女衣装はあれはあれで背中と太ももが見えるのが恥ずかしいんだけど、ララさんはそれに匹敵する服を見繕ってきた。
「え?こ・・・これ?」
「そう、今の流行とは少し違うけどね。20年前に流行ったんだけど、有紀さんは今の流行モノよりもこちらのほうが良いと思う。」
今の流行は肩だしのトップスにワイドパンツの組み合わせらしいんだけど、20年前に流行ったのはドイツの民族衣装ディアンドルに近いファッションだったようだ。っていうかディアンドルだよね、これ。
早速着てみる、というか着させられた。
まず白いブラウスを着る。この時点でヤバイ。
「ね、ねえ。胸元が開いてるんだけど・・・。」
「ね!セクシーアピールとしては今のファッションよりも上なのよ。肩だしも胸元広いタイプがあるけど、そうなると今度は露出しすぎてる感があるからね。」
「ええ・・・これも十分露出してるよ。」
今度は上から紺の胴衣を着る。そうすると心元なかった胸元が隠れるのかと思ったら、逆に胸以外を覆ったせいで余計目立つ。
「これは、恥ずかしいなぁ。」
別にめっちゃくちゃ胸が見えるって訳じゃないんだけど、ボク自身こういうのは着ないからとても恥ずかしい。
更に腰のあたりで締めるとくびれも強調されてしまうし。
「うん、自分で選んでおいてあれだけど、イイネ!」
ガッツポーズされた。
あとはスカートとエプロン巻いてディアンドルの完成。
「今のワイドパンツだと有紀さんの日常的に履いてるハーフパンツと大差がないからね。スカートを履くならこのファッションかな、って思ったんだ。」
「下は・・・良いんだけどね。上はちょっと恥ずかしいかな。」
あ、でも肩だしのトップスも肩の辺りはガッツリ開いてるからそれはそれで恥ずかしい。
「うーん、それならコレを着てみましょうか。」
ララさんはボクの肩に緑のストールをかけてくれた。少しマシに見える。
「外歩くときはストールを羽織れば恥ずかしさは減るでしょう?室内で、修司さんの前ではちゃんとストール脱ぐのよ。」
「修司の前でこの格好って絶対まずいでしょ・・・。」
「修司さんは言っちゃ悪いけど・・・女の子に安易に手を出すタイプじゃないでしょ?男としてはもっと攻めてもいい気がするけど、彼はそういうタイプじゃない気がする。」
否定できない。修司はムッツリスケベで昨日も一晩お楽しみだったみたいだし。
「だから、ああいうタイプを相手にするなら、もっと女アピールして行かないとね!」
ふぁ!?
ララさんの中ではボクと修司が付き合うような流れなの!?