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ガマー村への移動8

ルカさんはブラストによるダメージとバーサクポーションの反動でガリガリになってしまったが、それでも起き上がろうと必死にもがく。

「畜生。ジャック・・・!お、俺はな、先のことなんて考えられねえ、大事なのは今なんだよ。それが冒険者の生き方だ・・・。」

何とか立ち上がるけど、もう戦闘は無理だろう。足、ガクガクだし。

「ルカさん、村の皆が同じことしたら、村は潰れてしまうよ。ボクとしては命を取るつもりはないから、このまま大人しく村まで行かない?」

きっと村に行けば処罰・・・どうなるかな、もしかしたら結局殺される可能性もあるかもしれないけど。

ただ俺達の手でルカさんを殺すってのも違うしな。

「俺は、諦めたくねえ・・・。」

「じゃあ、仕方ない。って言っても安心して、後一発ブラストぶつけて気絶させてる間に村に連れて行くだけだからね。」

有紀はそういって指先をルカさんに向ける。普段ならやらない動作だな。

そうか、ワザとやってるのか。そしてその理由は・・・

「やめて、有紀さん。」

レイヤが泣いた声で言う。

「レ、レイヤ、離れとけよ・・・。」

ルカさんの前に立つレイヤさんの肩をルカさんが掴む。

「私は、薬を使われて惚れさせられたのかってショックだったけど。やっぱり違う。貴方の必死にもがく姿を見て理解したわ。私は貴方が前に進もうとするその姿勢が好きだったのよ。」

有紀はその二人をみて「ふう」と息を吐き出す。そしてジャックに向かって頭を下げる。

「ジャックさん、こういう結論になってしまったよ。ごめんね。」

そしてレイヤも続いて頭を下げる。

「ジャック、ごめんなさい。私は貴方の堅実な所も好きだったのよ。婚約を決められたときだって『ジャックなら』と思ったもの。他の商人じゃなくて凄くホッとした。でも、ごめんなさい。私はルカと一緒に居たい。」

しーん・・・としばらく沈黙が続く。

ていうか、俺この場で最も要らなくね?そんな気持ちが沸いてきたときにジャックさんが返事をする。

「分かった。ルカ、レイヤ。君達は今日ここで死んだことにする。ここからなら2~3日かかるけど、近隣の村にはとりあえずたどり着けるでしょう?そこについたら更にこの地域から離れるといい。」

ジャックさんはそれだけ言うとバスの中に戻っていった。

「え?いいのか・・・?」

「お二人とも冒険者カード回収します。死亡報告に使用しますから。今後はお二人は偽名を名乗り生きてください。」

お姉さん運転手が二人からカードを没収するのと同時にポーションを地面に置いてバスに戻る。

オジさんも一緒に戻ろうとするけどその前に二人に声をかける。

「ジャックさんは、前から悩んでましたよ。もしレイヤさん、貴女がルカさんを選ぶなら諦めるつもりだったようです。ジャックさんは商才あるのにこういうのは全然ダメですね。」

残るは俺と有紀、ルカさんとレイヤさんだ・・・

えーと、これはどうしたらいいんだろう。

「すまねえ、有紀さん。こうなるように仕組んだろ?」

ルカさんが話しかける。

「ズルをしてたのは昨日覗き見したときにレイヤさんの腕を見て分かったし。それを明らかにして、その上でルカさんとレイヤさんの本音を引き出したかっただけだよ。」

二人の顔が赤くなる。レイヤさんが特に。

「ええ、み、見てたの!?」

「うん、申し訳ないけど、後学の為にじっくりと。」

ひでえ覗き宣言だぜ。

「でもね、注射使ったよってところでレイヤさんがルカさんを捨てる可能性もボクは思ってたというか、むしろそうなるかなって思ったんだけどね。その先は成り行きだったね。」

まあね、確かに俺達は「どっちに転んでもいいや」って感じだしな。

今日は俺本当に何もしてなかったけどね。

ポーションを飲んで、少し体力の回復を待ってから二人は森の中に消えていった。

「二人も良いカップルだと思うわよ。」というレイヤさんが最後に言い残してたけど。


<神城有紀の視点>

二人が森に消えるのを見届けたせいで火の番ボクらがやることになってない!?

それを修司に伝えたら「うわ、確かにそうだ。でも今から戻ってきてもらうとか気まずいしな」って、そうだねボクもそう思う。

・・・我慢して火の番しようか。

しばらくして、ジャックさんがバスから降りてきた。

泣きはらした顔だけど、少しすっきりしたみたい。

「すみません、変な顔になってしまってますけど。」

「いいよ。ジャックさん。」

どうぞ、と飲み物を渡す。と言ってもボクの作った3層産ハーブティだけど。

収納の魔術は鮮度も保てるから、こういうのは便利だなって思う。

こっそりダンジョン3層でハーブの地上への輸送依頼もこなしておいたし。

ジャックさんはそのハーブティを受け取って、それから半分ぐらい黙々と飲んで、更に一息ついてから語りだしてくれた。

「私は今までルカにコンプレックスを持っていたんですよ。彼、イケメンでしょ?それに運動も昔から出来てましてね。同じ年代の女の子は皆ルカのファンでしたよ。だから、正直に言いますと、15歳のときにレイヤが婚約者になったとき優越感に浸ってました。」

確かに彼、イケメンだったね。しかも運動も出来てればそれは入れ食い状態だもんね。

「『ルカは何も苦労せず私が欲しいものを手に入れてるじゃないか』ってずっと思ってましたからね。『私が一番欲しいものは貰う』と、そういう気持ちだったんですよ。」

でもね、とジャックさんが続ける。

「私がレイヤを好きだという気持ちは本当ですし、今だって好きですよ。でも、さっきのルカの姿見て考えさせられましたよ。昔からルカが女の子にモテるのは、レイヤに好意を持ってもらうために努力をしてきたのだろうと。媚薬は使って良い手だとは思いませんけど、彼は必死だったんだなって思いましたよ。同時に・・・私は確かに商人として一人前になろうと頑張りましたけども、レイヤに対してはそこまで必死になって動いていなかったな・・・。だからレイヤがはっきり意思表示したから私は諦めることにしました。」

ジャックさんはルカさんに、ルカさんはジャックさんにコンプレックスを持ってたんだって近くに居てもお互いに気づけなかったようだね。

だからさっきルカさんを追い詰めたときに彼が本心を叫んだことでジャックさんも心を打たれたのかな。

「最近は、商人をやっていても好きな人は私のことは好いてくれないと、自身なくなっていましたけどね。でも、それも今日レイヤはちゃんと自分のことも好きで居てくれてたのは分かりました。まだ踏ん切りはついて居ませんけども。」

ハーブティを飲み干す。そろそろ話も終わりかな。

「私は商人を続けますよ。村を発展させて、いつかどこかに居るあの二人にもガマー村のジャックの名前を耳にするぐらいになってみせますよ。」

まだ辛いだろうけどボクらに笑顔を向けるジャックさん。

「強いな、ジャックさん。」

ボクは人と関わることが怖いし、出来るなら避けたい。

修司だっていつか別れるときが来る。それは元の世界に戻るときかもしれないし、寿命が来るときかもしれないけど、ボクはそれを考えると不安になるな。

今回の出来事はボクは長く冒険者をやってきて直接関わったのは初めてのことだったから、恋愛っていうのは人を狂わせるるんだな、って思う一方でボクはずっとそんな感情なかったから自分が同じ立場だったらどうするのかな?って色々と考えさせられる一件だった。

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