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ガマー村への移動5

翌日、バスは山を1つ越える。

険しい山道を上るためにスピードを落として進むため移動距離自体は昨日とあんまり変わらない。

昨日のせいでぶっちゃけ寝不足だ。

あの二人が戻った後も寝た振りして、しばらくしてから起きるって演技をしたし。

日中は俺と有紀が番をするのだけど、ウトウトしてしまう。

「眠ってていいよ。修司。」

耳元で有紀が言う。吐息が昨日の夜を思い出させてしまう。

鎮まれ~!と内心思いつつ平常心を装う。

「ん、すまん、少し眠らせてもらうよ。」

「龍眼で見る限りはこの山道に盗賊出るって事もなさそうだから急な対処が必要なトラブルは起きないと思う。」

流石龍眼(レーダー)、頼りになるぜ。

ルカさん、レイヤさんは今日の夜の為に寝てる。バス内部は寝転がるだけの広さがないので座ったままだけど。



<神城有紀の視点>

この山はアルカ村、ガマー村の領域外なので盗賊・・・この場合は山賊なのかな、ヤツらはこの2日目に現れやすいと見てたけど杞憂だったみたい。

冒険者として200年過ごしてたけど、ルカさんやレイヤさんのようなダンジョンで結ばれるカップルは結構いた。いたけど・・・昨日のような現場は基本的に見てこなかった。

いや、目撃自体はしてたかな。でも、当時のボクは人間に興味がなかったから、一人で居ることにしたから、あんなにじっくり見ようとは思わなかった。

・・・ん?

人間に興味なかった、ってまるでボクが人間じゃないような言い方だ。

修司には言ってない、というか言う必要ないと思ってることだけど、ボクは修司の世界に転生する前の記憶がモヤがかかった様にあいまいなんだ。

知識、情報は残ってる。けど、()()()()()()()()()()()()()思い出せない。

陽光の魔女にボコボコにされた記憶はある。クレスさんだけじゃなくて何人もの冒険者を助けたこともある。

でも、ボクがどんな性格だったのかわからない。そもそも一人称はボクだったの?

「まあ気にしてもしかたないね。」

魔女なら時間はたっぷりあるんだし、後から考えればいい。

まずは修司の為に動こう。

修司か。皆が元の世界に戻れるときはボクもそっちに行きたいもんだな。

でも、また次元の魔女に頼んで転生させてもらったとしても、魂が向こうに行くまでに100年かかる・・・それじゃあ修司とは会えない。

修司だけはこの世界に残したいと言う気持ちもある。寿命は違うからいつかは別れがあるけど。

あ、悪いほうに考えちゃってる。判断は彼がすれば良いことであって、ボクがその思考を誘導しちゃダメだね。

寝顔を見てると「手放すのが惜しい」という気持ちが出てきちゃうみたいだ。

こうやって一人で思考をしてるのは、話し相手が居ないからだ。

皆寝てる。昨日寝てたはずのジャックさんも寝てるし・・・。

多分ね、ジャックさん昨日起きてたでしょ。



<佐野修司の視点>

目を覚ましたら山頂付近だった。

「起きたね、修司。」

「ありがとう、有紀。寝たお陰ですっきりだ。」

「それは何より。」

有紀はいつも通りニコリと答えてくれる。

向こうに居る頃は、有紀は「女っぽい」とよく言われてたけど、今は見た目も女だから、多分クラスの女子より女らしい言動なんじゃない?って思ってしまう。

「可愛いな。」

有紀を見ててつい口に出してしまう。

「ふぁ!?」

赤面有紀の出来上がりである。いや、俺も言ってから顔赤くしちゃってたけど。

「すまん、つい・・・。」

「いや、良いけど。不意打ちすぎてびっくりしたよ。」

気まずくて顔を窓にやる。

この付近では一番高い山だったみたいで、景色はすごい良かった。

一番手前がアルカ村、そこから見える範囲には村は見当たらないけど、自然に囲まれてて気持ちが良い見晴らしだ。

もっと奥にはものすごい絶壁の山脈が並んでいる。

「見晴らしいいな。」

素直に感動した言葉も口にしてしまった。独り言言う癖やめないといけないんだけどね。

「うん、綺麗だよね。」

でもそれに有紀は応えてくれた。同じ景色や気持ちは昔から有紀と共有してきたんだよなあ。

「南にあるあの絶壁はなに?」

「あれは、『天龍山脈』だね。」

おい、なんかかっこよくない?この世界にしてはすごいネーミングセンスだ。

「竜族はネーミングセンスが良いんだよ、若干中二病だけど。」

竜族・・・龍も含めて「リュウ」と言われる種族のことらしい。

彼らはトカゲ・ヘビ・ヒトなど外観が違うものの

①鱗がある

②言語を操る

③龍神を祭る

この共通した3条件を満たしているために全部まとめて「竜族」と言うそうだ。

「ボクのサーベルはその龍神の牙から作られたものだよ。」

「は?有紀、龍神倒したの?」

倒して出てきたドロップアイテムから作ったのか!って俺は驚く。どんだけ化け物だよ!みたいな。

でも違った。

「いやいや・・・違うんだ。ボクは確かに天龍山脈で龍神に会いに言ったけど、それは『龍』眼を名乗るために挨拶に向かったんだよ。彼らは龍という字を勝手に使われることを良く思わない。普通の人が使っても『短命な種族がどうしようが些細なこと』と気にしないけども、魔女のボクが使うとなると挨拶しないのは良くない。」

おい、魔女って単語出してるけど!?って思ったけどよく考えたら皆寝てたわ。

それに小声だし、まあ問題なかったな。

「上って龍神に『龍眼って綽名がついたので、よろしくお願いします』と・・・。そしたら『丁度今歯が抜けたところだから、魔力に還る前に拾っておくといい』って言われてお土産に貰ってきたんだよ。」

すげえ龍神のノリ軽くない?なんか凄いイメージがなくなってしまったんだけど。

「龍神は自分に害がなければ基本的にノンビリ屋さんだよ。別に竜族から信奉されてることだって『たまに上手い飯持ってきてくれるからラッキー』なノリだったし。」

本当軽いな、ファンタジー世界、大丈夫か!?

「サーベルにも名前付けてくれたけど、『龍牙穿空』って名前でカッコいいんだ。龍の牙が天を穿つってそのまんまの意味だけど、これは龍神が本気になったときに空が割れたという言い伝えがあって、そこから来てるんだよ。本人は言い伝えじゃなくて事実だと言ってたけど。」

ふお・・・中二病な名前だけど、普通にカッコいいじゃないか。

俺のショートソードにも名づけてくれないかな・・・。


バスは頂上を登りきり、そのまま下る。

上るときと違うのはバスがスピードで過ぎないようブレーキをかけるようにスピード調整しなきゃいけないって点で、魔力は正直こっちのほうが消耗するんだとか。

山頂には昼ごろ到着したけど、ここから2日目の宿泊地点までのほうが時間かかるわけだな。

ルカさん達も起きてノンビリとバスの中で過ごす。

この二人やジャックさんは何度も往復してることもあって、同乗者と無理やり会話するという考えはないようだ。

俺達のように話を繋げるのが苦手なタイプには助かる。

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