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ガマー村への移動3

<神城有紀の視点>

修司は即寝てしまった。確かに人をダメにするソファー並みにダメにするからね、このクッションも枕も。

ボクも安全確保できてないと使えなかった、すごく気持ちが良くて。

「ああ、また・・・。お腹冷えるよ。」

もぞもぞ動くとかけてあげた毛布がずれてお腹が出ちゃってる。

ここは温和な地域だけど、それでも夜はそこそこ冷えるんだから、ダンジョン生活の直後は風邪引いてしまうよ。

しかたないな、と思って毛布をかけ直してあげる。

全く・・・小さい頃からこんな感じだね、修司は。

修司がアニメや漫画にはまるようになるまではボク達は外で良く遊んでたけど、修司は無茶ばかりして怪我して、何度君のお母さんを呼びに行ったか。

「あの、有紀さんは、彼と付き合ってるの?」

レイヤさんがいきなり言い出す。

「え?・・・え?」

確かにダンジョンで二人で行動することでカップルかな?って思わせるように仕向けてるけど、普段はどっちかって言うとお母さんと子供じゃない?今みたいに。

「うーん・・・どっちかっていうと、ママじゃないかな?」

「そう?ママね・・・。確かにそうやって頭撫でてるのも子供を可愛がるママという感じにも見えるね。」

ん!?撫でてる・・・?

見たらボクは左手で修司の髪の毛を撫でてた。

「ええ!?い、いつのまに!?」

慌てて引っ込める。流石に自分でも無意識だからびっくりした。

いや、確かに小さい頃から修司は無茶するし、心配させられた分保護者みたいな立場になってたし、今だって毛布のかけ直しもしたけども、頭撫でたりはしないでしょ友人相手に。

ボクの記憶に残ってる限りで、ここまで人のことを心配して面倒見るのは修司が初めてな気がする。

「どこまで」が友人としての境界なのか?と聞かれるとちょっと分からなくなる。

男同士で手を繋ぐのはおかしい?でもそれを文化とする国もある。というかボクは多分向こうの世界に居たときも別に抵抗なかったけど、周りがやらないからやらなかっただけで。

だから「向こうの世界の常識」が少しずつ薄らいでるのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。そこはボクには分からないんだよね。ソロ専でずっとやってきたせいで。

「そういえば」と話題を切り替える。

「修司の他に最近召喚された人の話って聞いていますか?」

あんまりボクは人と話をするのは得意じゃないけども、頑張ろう。

アルカ村は冒険者は集うけど思いの他情報が届かない。アルカ村に行くのは周辺の村の冒険者や商人ばかりで、ベタの町や王都から来る人はほぼ居ないからだけど。

ただ、アルカ村以外の村はベタの町に行く冒険者・商人も居るので彼ら経由で都会の情報が入ってくるということもある。

「うーん、俺やレイヤは都会の情報が疎くてな。その辺の話は分からないんだが・・・。ジャック、お前なら商人仲間から話聞いていないか?」

「聞いてますよ、王都で大規模な召喚が行われたそうですね。正確な人数は不明ですが30人ぐらいかな?だから修司さんが召喚された、と聞いて彼らとの関係があるのでは?と私は思いました。」

「修司だけこっちに飛ばされてしまって、彼らと合流するために王都に行かなきゃいけないんだ。修司と同じく彼らもまずはこの世界のノウハウを受けると思うのでまだ王都に居ると思うのだけど。」

ボクはジャックさんから情報を得ることにした。

「召喚の儀式の後、王都の物価は上がります。彼らの武器・防具や日用品、当分の生活費を国が用意するのですが、そうなると需要が一時的に増し価格も上がる、という流れです。1人召喚したときでも半年分ぐらいは用意するらしいですよ、国は。今回は何十人という単位ですから物価の上昇が顕著だったそうです。ガマー村のほうは何もアクションとって居ませんが、一部の商人は『更なる物価上昇』を見込んで買占めを行ったようです。」

需要と供給の関係だけじゃなくて、国がお金を落とすことで市場にお金が出回って1コム当たりの価値が下がってしまい、物の価格が上昇する。

上昇した物品を国が買うと更に市場にお金が出回って・・・の繰り返しになるらしい。

ルカさんが「都市部との流通が殆どない俺達ガマー村やアルカ村にはそういう影響がでないんだけどな。」と付け加える。

ガマー村か都市部に買い付けに行った商人は「価格上昇しすぎて手を出せなかった」そうだけど、幸いガマー村も含めた複数の村々はアルカ村ダンジョンを中心とした流通が大半を占めており、アルカ村は王都の物価上昇の影響を受けていなかったために「生活が出来なくなる」ような被害はどこも受けていない、らしい。

「ただ、国も『市場の異常な価格上昇』を危険視して買取を止めました。その買取終了宣言を持って市場の物価上昇は落ち着いたのです。まあ買い占めた商人は大損していましたけどね。」

なるほどね、商人はお金や流通を気にするから、そこから情報とその推測がすごいや。

「今私が手に入れてる情報ですとこのくらいでしょうか。特に王都から出た、という話は出ていませんし、そう推測できるような流通や物価についての情報はありません。」

「ありがとう、ジャックさん。」

まだ王都に居るなら、合流できるのかな。

合流・・・するだけじゃなくて「召喚された理由」や「戻る方法」を女神から聞いてるか確認しなきゃいけない。

戻る、というのはボクはどうなるのか、そこを考えないようにして、まずは修司の為に合流しなきゃね。

一通り話を聞いて、ボクは修司の隣で寝ることにした。

地面に布のシートを敷き、上から毛布をかけて寝るという簡素なものだけど、冒険者的にはこれで十分。

うーん・・・、ボクは無意識ながらも修司をなでなでしてしまったんだね。

ジャックさんが「いいなぁ」という目で見てたのはちょっとキツかった。やめてよ、ボクら変な関係じゃないからさ!わかるでしょう!?って思ったけど言わない。修司には「エロい目で見るの止めてくれない?」とか普通に言えるけど、他の人には言いづらいね。


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