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ガマー村へ出発

バス・・・外観は俺の知ってるバスと同じだ。前方が厚めに作られていたり、一部木材を使用している、という点が違うところか。

ドアは後部についていて、そこから乗り込むのも違う点だけど、中はだいぶ異なっていた。

まず前方には運転席と、交代制で運転するために休憩する運転手用のスペースが設けられている。

そこから柵で仕切られて残りは板張りの床があるだけで、内部についてはバスというよりトラックの荷台部分という印象を受けた。

この荷台部分には荷物と乗客の区別なく同一スペースに入ることになる。

「内部は違うんだな。」

「そうだね。元々貨物の輸送がメインで設計されたものだから、むしろボクらのほうがオマケなんだけどね。」

「そうなんだ?なるほどなあ。」

ついでに言うと運賃は1人1万コムと、3層の宿泊費用より高かった(向こうは1部屋2人で1万だし)。だが、ガマー村までは2泊3日の旅になるらしいので2泊分2万コムって考えると大体同じくらいか?

そしてこのバスの乗車にはいくつか暗黙のルールがある。

①乗客間のトラブルは禁止

例えばめちゃくちゃ偉い人が女性に強引に迫ったりしてもアウトで、この場合はもし女性が同乗を嫌がった場合は偉い人がバスを途中で降ろされることになる。

②トラブル時は冒険者同士は協力しあう

バスは道中でタイヤ破損することもあれば、モンスターに襲われることもあるし、道中で野営を行う場合もある(というか野営は確定だけど)ので、その際には冒険者がクランやパーティーの垣根を越えて協力し、他の乗客や運転手の安全を確保する。

③商人の荷物を守る

バスの運営資金は商人ギルドが出資しているため、荷物に関しては盗難や破損に注意をする必要がる。もちろん荷造りの段階で破損の無いようにするので、道中の揺れで破損することはないけども。

盗難に関しては冒険者でない乗客も予防のためにむやみに近づかないようにしたり、あるいは人が近づいてないかチェックしておくことになる。

モンスターに襲われ全滅するケースでも、冒険者がバス外で囮になる間にバスを走らせて荷物を届けることだけは達成させるぐらい物資輸送は重要な任務となる。


「バスの暗黙のルールは守ったほうがいいよ。特に商人の荷物は場所によっては届かなければ村1つ滅びる可能性があるから重要なルールだね。」

「でも、その割には依頼見かけないな。」

ギルド掲示板ではダンジョンへの護衛依頼はあるが、他の村への護衛依頼は滅多に出てこない。

が、その理由は簡単で、周辺の村からアルカ村に出稼ぎに来た冒険者が帰るときに必然的に護衛するからだった。

そりゃね、自分の村にお金と物資を落とすのが目的なんだから、依頼があろうがなかろうが守るよな。

ただ時々冒険者の乗客が見込めない日があるので、そのときは依頼を出したり便をずらしたりするようだ。

「ただここの周辺で強盗は無いと思うよ。」

「え?なんで?」

と、そのとき人が乗ってきた。40代ぐらいに見えるオジさんと20代のお姉さんだ。二人とも同じような衣装と腕章をつけている。

「このアルカ村は初心者向けダンジョンですから、例え奪えるものを奪っても稼ぎとリスクが見合ってないんですよ。後日ラッキーリップスから報復受けますからね。そこまでのリスクを負ってでも冒険者のいるバスを襲うメリットが無いんです。」

オジさんが教えてくれる。多分運転手だな。

バックに不良がついてるヤツから100円目当てに恐喝するか?っていうと、そりゃしないよな。多分、そういう感じなんだろう。

「我々がこのバスを運転します。今日からしばらく、よろしくお願いします。」

オジさんが丁寧に挨拶をしてくれる。俺達も「よろしくお願いします」と挨拶をする。

「アルカ村とガマー村の領外だけは盗賊も出てくるかもしれませんが、この地域で活動する盗賊はランク1でリタイアした元冒険者ばかりです。奇襲だけは警戒する必要がありますが、戦闘自体は私達も普通に対応可能です。」

お姉さんが言う。そうか、運転手って魔力も結構あるんだろうから、状態によっては戦闘にも参加できるんだな。


結局出発までに搭乗したのは俺達以外には3人だった。

自己紹介を軽くし合う。俺達二人の自己紹介・・・って言っても俺は「冒険者なりたてです」ぐらいしか言えないし、有紀もあんまり「魔女です」というと面倒に巻き込まれるのが嫌なのか「冒険者です」としか自己紹介できてなかったりする。

「私はガマー村商人のジャックです。村に物資を届けるために月に1度アルカ村を往復しています。」

物腰の柔らかい男・・・俺よりちょっと上かな?がお辞儀する。

後ろには山のような荷物がバス内に固定されている。

「俺はルカだ。ジャックが買い付けている間はギルド依頼で村周辺の見回りをしたり、1層降りたりしてるな。ランクは強敵を倒したわけでもないがコツコツ積み重ねたのが評価されて今はランク2だ。」

イケメンの男が挨拶をする。武器は剣で・・・背中に背負ってる剣が2本あるから、二刀流かな。

「私はレイヤ。ジャックとルカとは幼馴染で、私とルカが冒険者なの。彼と同じくランク2よ。」

有紀が可愛い系だとしたら、このレイヤさんは美人系だな。掘りが深いからかキリっとした顔をしてる。

っと、武器は・・・珍しい。弓だ。

「ダンジョンだと弓使いの冒険者はあんまり見ませんでしたね。」

俺が興味あって声をかける。

「ダンジョンでは狭いところで戦闘することがあるし、弓もルカの二刀流もだけど、不向きなのよ。だから下層には潜らないで1層での依頼か地上の依頼を専門にしているわ。」

なるほどね。もっと言うと、ガマー村では徘徊するモンスターの討伐もあるから地上での戦闘に比重を置いた装備構成になってるわけだ。

ルカが有紀のほうを見る。

「有紀さん?は武器持たないのかな?修司君は剣と盾あるから分かるけど。」

「ボクは魔術を使うのと、収納の魔術がありますよ。」

有紀が手をかざすとサーベルが出現する。

あ、それ魔術だったんだ。

「そうだよ、だから妨害されたら武器も取り出せないから注意しなきゃね。」

ちなみに魔術名はそのまま「収納」らしい。魔女を除くと先天的にこの魔術を使用する素質がないと使えないんだとか。一般人にはレア魔術故に「名づけてくれる人が居なかった」結果として「収納」というシンプルな名前になったらしい。

名づけに関しては適当だなやっぱり。

少し驚いたあとに手ぶらの理由が分かったルカは納得の表情だった。

「なるほどな、収納使えるのは羨ましいな。うちの村でも使い手が居ればジャックの買った荷物を安全に輸送できるんだけどな。」

「有紀、収納してやればいいんじゃないの?」

「いや、修司君、それはいかん。人に頼むなら対価を支払わなきゃいけないけど、俺達はそのお金を出す余裕はない。収納の依頼ってこの荷物量だと20万ぐらいするらしいぞ。」

20万・・・収納先は破損することもないし盗難にも逢わないし普通に輸送するよりも非常に安全性が高い一方で使い手があまり居ないってことを考えると確かにそのくらいするのかな。村に金を運ぶのに収納依頼したら金なくなっちゃうな。かといって初対面の人に「無料で」と言うほど俺はお人よしじゃないし、有紀はほわーんとしててもその思考はやっぱり冒険者の思考だからボランティアという考えは持ってない。


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