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出発の前に

ベタの町までは迂回することをクレスさんに伝えるとクレスさんがお勧めルートを伝えてくれた。

少し時間はかかるものの、ガマー村を経由するのがベターのようだ。

割り切って最短ルートを選べれば良かったけど、難しいな俺には・・・。

「冒険者の中には正義感の強い人も居まして、クランが村を支配するのはありえない、と立ち向かって殺されるんです。駆け出しじゃ敵わないですからね。もちろんギルドに訴えても村からの救援依頼がないんじゃ動くわけがありませんし。」

3層から地上に戻るためにクレスさんに挨拶を交わしたときに言われたけど「中途半端な正義感を発揮するよりは、避けたいものを避けるほうが冒険者としてはプロ」なんだそうだ。

地上に戻ったときには夕方だったので一泊し、翌日ギルドマスターにも挨拶をしたが、そのときに同じことを言われた。

「中には変な正義感でクランに立ち向かうやつもいるからな。そういうやつは大抵殺される。冒険者はダンジョンで死ぬこともあるし、別に殺されてもギルドとしては動くような案件ではないからな。くれぐれも無茶な選択をしないように。」


冒険者ギルドを出る。

「そういえば、どうやってガマー村に行くんだ?歩き?馬とか居るのかな。」

今のところ徒歩以外の移動手段を見たことがなかった。ダンジョン生活だったし。

「んー、そうだね、修司。こっちおいで。」

チョイチョイと手招きされて俺は勇気について行く。

誘導された先は広場だった・・・って!ええ・・・!?

「バス、あるんだよ。」

ええええ!?

「うっそだろ・・・?」

「いやいや、そりゃあるよ。馬はモンスターとして出てくるけど、あれを手懐けるよりもバス作ったほうが簡単だからね。」

こっちの自動車はガソリンや電気で走るが、この世界では魔力で走るので、完全に一致という訳じゃないし、人力とも言えるけど外観はバスだこれ。

一部木造だけど、大部分が金属、特に前方は厚めに作られてる。タイヤなんかゴムだし。

「加工過程が魔力なのか機械なのかという違いはあるし、工場も規模は全然違うけど、効率的な人と物の移動を考えたら同じ方向性になるんだろうねえ。ただ、ボクが見たときよりも更に頑丈になってるや。」

有紀が「私見だけどね」と言うけど、全く的外れってことはないかもね。

むしろ逆にビーナへ召喚された人がこっちに戻ってきたときに自動車の概念を持ち帰ったのかもしれない。

前方が頑丈なのは人やモンスターからの攻撃対策だとか。

「異世界なのにこういうの見るとなんとなく冷めるな。」

「ええ・・・逆に異世界って言ってもさ、歴史はあるわけだし、こういうもんだよ・・・。確かに建物はね、気候や土地の広さを踏まえると小説とかアニメにでてくるような建築が多いけども。」

ちなみに鉄道もあるらしいが、これは他国とを繋ぐ目的で、国内移動には用いないんだとか。

首都から首都の移動ではなくそれよりもだいぶ手前までしか繋いでないとかで、理由を聞いたら「それは国同士いつも仲良しとは限らないから。」ってことだった。

本当色々あるな。


アルカ村とベタの町を4つのルートに分けて運行しているようで、一番利用が多いルートは1日2本、他は1日に1本しかバスはない。

さっきギルドマスターとお別れしたばかりだから乗り損ねたら気まずいなと思ったが、幸いにもアルカ村から出発するのはお昼で、まだ時間がある。

「有紀は、もう自分の村の面影とか残ってなかったりするのか?」

魔女となって200年、更にこの地を離れて100年・・・これだけの月日が変われば村も変わるよな。

「そうだね。」

ほんの少しだけ寂しそうに見えた。って言っても俺がそう思っただけかも。

有紀が歩き出すのでついて行くと、すぐに小高い丘が見えてきた。丘に大きな木が1本生えている。

丘を登りながら有紀が語りだした。

「この木は、大きくなったけど、ボクが小さい頃からあった木だよ。子供達はここでよく駆け回ったり、遊んでたな。ほら、あの子達みたいにね。」

木の周りを子供達が駆け回っている。鬼ごっこみたいだ。

俺もこうやって男女関係なく遊んでいた時期はあったんだよなあ。有紀と俺だけじゃなくて、他にも数人いて友達じゃなくても一緒に遊んだ記憶がある。友達じゃなくても遊ぶだけのコミュ力は昔はあったんだよな。

「ま、でもそれ以外は変わったかな。ボクの実家はとっくに取り壊されてるし、子孫は居るのかもしれないけど面識はないしさ。だから村をまた出るといっても僕は特に思うことはないかな。この土地への愛着は多少なりともあるけどね。」

大木から少し離れたところにベンチがあったので、二人で腰掛ける。

風が気持ち良い。丘の周りにも木々があってそこから来た風はすごく落ち着く。

よく「マイナスイオンが~」ってCMでやってるけど、今こうしてると気持ちが分かるわ。

ぼーっとこうやってベンチに腰掛けてるだけでダンジョン生活の疲れが取れる。

チラっと有紀をみると、日光の明るさで肌の白さが際立つ、流石に輝くとかはないけど。

遊んでいるアルカ村の子供達も日焼けせず綺麗な白肌だし目が大きい。

「おや?修司は女の子供に興味あるの?」

「ちがうよ!」

ロリコン?って目でみてくる有紀の発言を否定する。

ってか改めて目を見ると、こいつも目が大きい。

「目が大きいな、って思っただけさ。確かにウチの女子たちも目が大きかったけど、あれは大半がメイクだったりするだろう?」

「あんまり変わらないんじゃないかな。ボク向こうに居たとき女子のことあんまり見てないんだけど。」

「そうかあ?うーん・・・。」

ジーと有紀の目を見る。あ、瞳は龍眼のときはすんごい緑で普段は黒だと思ったけど、よく見ると深い緑なんだな。

「ちょ、っとまった!見つめすぎじゃない?」

恥ずかしそうに顔を逸らす有紀。その横顔を見て分かった。

「すまん。でも、分かったわ。ここの人は二重で睫毛も長めなのな。」

その視点で子供達を見てみると確かに皆そうだ。少しコーカソイド系の要素があるのか。

「あんまりそういうの気にしてなかったよ。なんせビーナは修司が好きなネコミミも居るし、人によるパーツの違いなんて沢山あるしさ。」

「なに!?ネコミミ娘が居るだと?王都に行けば出会えるか?出会えるな?」

エルフはクレスさんが居たけど、彼以外は俺達と同じ姿の種族しか居なかった。

恐らく近辺の村に異種族が居ないからかな。

「まあ、王都ならいるかもね。」

うわぁ・・・って目で見ながら一応有紀は答えてくれた。

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