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王都へのルート

<神城有紀の視点>

ボクの時代・・・100年前の話になるけども、王国へ至る経路は冒険者ギルドがある街同士を繋ぐ道がもっとも整備されているから、その道筋が一番早い。


支配された村、というのはそう珍しい話ではない。

ダンジョンがないということは土地を開墾して、畑を作り作物を入手しなければならないし、数少ないフィールドのモンスターを狩って肉を入手する。言いかえれば「貧しい」ってことになる。

それだけでは生活できないため、村からどんどん冒険者を出す。彼らが得た報酬や購入した食料を持ち帰ることで村を潤わせるしかないけど、当然「自由が欲しい」と願うタイプの冒険者はそのまま村を出て行く。

もちろん怪我や挫折で戻ってくる冒険者も居るけど、基本的に人口は減り、村に利益をもたらす冒険者も減る。

こうして集落としての機能を失っていく・・・、というのは日本でも似たような問題があったけども、ここはもっと100年以上前から起きてた問題だから、更に深刻だと思う。

こういった廃村になりそうなところを狙うクランが居る。

村を拠点として活動したい、という話をまず村長にもち掛ける。村としては人が増えれば労働力が増えるので助かるだろうし、賛成意見が出やすい。・・・恐らく冒険者の持ち帰る利益を村にも還元する、という条件かな。

クランが村を拠点とする。もちろん村に利益・・・基本的に食料を還元する、しないと違反になって冒険者ギルドから潰されてしまうからね。

ただ、別のところで村から搾取する。

例えばボク達は料理を自分で作らない。作れるけど、基本的には酒場を含めて食事をするところで外食するのが冒険者の基本となる。その食事を作る人にもお給料が払われるというのは普通の話なのだけど、こういったクランが支配する村ではお給料が殆ど支払われない。他にも宿の経営もアイテムの販売も。

働いている人としてはたまったもんじゃない、自分の店で利益が殆どでないんだから。でも、クランは村への食料提供していて、それで生活できている人が殆どだからどれだけ不満でも村のために我慢せざるを得ない。もちろん村の人らが協力してタダで店の手伝いに参加してくれるだろうけど。

こうやって村人はクランの提供する食料を得るために安い賃金で働く。安い賃金のお陰で商品も安くなるし、宿代も安くなる。そうすると商人や冒険者がよりやすくなって、お金を落としてくれる。

その売り上げの殆どがクランに行ってしまうんだけどね。

こうやってクランが入り込むことで村は村としての機能を維持できるので、苦情をギルドに言う人も居なくて、支配状態が続くわけだ。

ダンジョンがない所はそうするしかない。昔は維持できてたシステムが徐々に維持できなくなって、クランの力を借りるというのは珍しくないんだ。


ただ、ギルドマスターさんの言い方でいうと、それ以上の状態か。

「でも俺達は被害に合うってことはないんだろう?それならスピード重視でも良いんじゃないか?」

修司の言うとおり、ボクら冒険者はクランにとって「お金を落とすお客さん」だから害を加える可能性は少ない。

恐らく低賃金どころか無料で働いているのは予想の範疇内。もしかしたら若い子が売春でもさせられてるのかな。売春は昔から利益を得るもっとも簡単な手段だからね。

支配するということは村人の管理もクランが行うことがある。行き過ぎた支配だけど「村」というシステム的にはかなり効率が良かったりする。

例えば村の若者のうち冒険者にする・・・させる人とそれ以外の人に振り分ける。冒険者になる若者はそのままクランに入れて下っ端としてコキ使う。もちろんクラン員だから結構優遇されるけどね。

そして冒険者に振り分けられなかった男女・・・特に女の子が殆どだけど、こうやって売春をさせられる。外からの客だけじゃなくてクラン員にも。避妊も恐らく許可されてないと思う。子供を増やせば村の人口が増えるし、いつかクランが村を離れた後にも集落の維持できる・・・ってことでむしろ村長や側近が避妊を禁止する。ちなみに男が女性冒険者に逆売春を持ちかけるパターンもあるから、当然男でも売春の対象だ。

男×男の組み合わせもあるだろうしね。

「修司、夜中にギシアン聞こえてきても眠れる?」

「は?どういうこと?」

ボクは今の考えを伝える。ボクは長年生きてきても一人で動いてたから恋人も作ってなかったし、人と話すのが怖いからって体だけ・・・ってこともしてこなかったから、ぶっちゃけ免疫がない。

でもそれは修司もだ。ムッツリスケベだけど生々しい現場を見ることもあるだろうし。

胸糞悪い環境であることよりもボクはそっちのほうが心配だよ。

興奮して眠れなくなったらボク襲われるんじゃないか?いや、ボクもね、ここまで親しくなかった人は魔女以外には居なかったし、別に襲われたら嫌とかはない。覚悟はまだまだ無いけど。けど・・・こう、やっぱりロマンシックさを求めたくなるよ、なるよね?

うーん、周りが売春してる雰囲気の中で襲われて嬉しい?って言われたらボクはあんまり嬉しくない、そういう趣味じゃないからね。

「うーん、ちょっと、なあ・・・。」

修司は顔を少し赤くしてる。やっぱりボクらには刺激強すぎるよね。


こうして別のルートを利用することにした。

ベタの町からのルートは今のところ特に悪い話が出ていないのでベタの町から王都までは最短経路でいけそうだけど、とりあえずベタの町までは迂回気味に向かおう。

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