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VS『初見殺し』

『初見殺し』というのは4層でスケルトン対応が余裕になって慢心・油断した冒険者がコイツに殺されまくったことから「慢心した初見は必ず殺される」という意味で名づけられたらしい。

「でかいけど所詮スケルトンだ、と・・・そういうノリで挑んだ結果、後悔しながら死ぬことになります。」

クレスさんの200年前の自身の思考を踏まえて教えてくれた。要するに慢心するな・・・ということだ。

大丈夫、油断はない。

特殊なことはしてこないかわりに、ひたすら攻撃力と防御力が高い、だから触れられたら終わりだと思う。

俺ができる事は敵の攻撃を避けるかウォールで無効化させて、弱点の心臓の核を攻撃する、ぐらいか。


「そろそろだよ、修司。頑張ってね!」

「おう!」

ぎゅっと両手を握られる。別に魔力による特別な支援を貰ってるわけじゃないけど、そんな気分になる。

まず、2フロア全体にミストを展開。地面からちょうど俺の頭までを霧が覆う。範囲も広めなので霧の密度は低い。

でも『初見殺し』は俺を見下ろす形になるはずだから、この霧で多少回避はしやすくなる。

ガシャガシャと奥の通路から音がする、もうすぐこのフロアに来る。

ミストの効果時間は5分、ブラインドは敵次第だけど、あの骨は強いから5秒程度か。

あと3・・・2・・・1歩・・・、見えた!

でかい!思ったより・・・いや予想の範囲内ではあるけど、それでも自分は3メートルぐらいだと思っていたが間違いだった。5メートルか?天井よりは低いけど通路を通れるぐらいの高さならそのくらいだ。

けど、俺は自分の作戦通りに動く。

(ブラインド!)

『初見殺し』の目に当たる部分を暗闇が覆う。まだアイツは俺を認識できていない。

魔法とは違い魔術は場所を指定する・・・つまり・・・

(ブラスト!ブラスト!)

直接核の部分を指定して魔術を当てれば肋骨に防がれずにダメージは通る。

ドン!ドン!と爆風が巻き起こる。

1番目のフロアと通路の間で他は待機してる。彼ら目でもミストが邪魔してしまってるかもしれない。

ブラインドの効果が消える。これも予想より早い。3秒程度だ。

「こっからか。」

『初見殺し』が俺を認識した。アイツは右手に骨で出来たダガーを持って襲いかかる。

振り下ろしにブラストか・・・って!!早っ!!

横転して避ける。でかいし、巡回中の動きから動きは遅いと思ってた・・・。

やばいこれは完全に予想外だった。

更に横薙ぎにダガーを振るう。腕とダガーで横薙ぎに切りかかるとダガーにあたらなくても腕に当たれば代ダメージだけど・・・。避けきれない!!

「アヴォイド!」

声に出してしまった、いや、悪いわけでもないけどさ。

一気に後方に逃げて距離を取る。この判断は間違いだった。

向こうのほうが歩幅が大きい、一歩であっさり間合いを詰められ、更に左手を振り下ろしてくる。

「う・・・おおおお!」

辛うじて避けるが礫が体を打つ、痛い。幸いダメージ自体は大きくない。

大きくないというだけでゼロではない。続ければダメージ蓄積していく。

横薙ぎの攻撃はむしろ前に出るべきだった。相手はしゃがむ分核への攻撃が届きやすくなるわけだからね。

俺が現時点でもっとも攻撃力が高いのは魔術ではなくショートソードによる攻撃だが、それが届かない以上、ブラストを打ち込む以外に手がないものの、魔力量は限られている。

マジックポーション1本忍ばせているが、それでも今の『初見殺し』の挙動から残る魔力を全部ブラストにしても倒せるか分からないしミストは必須だ、これがなければ避けきれない。

魔術だけで押し切るのは無理、というのは予想済みだけど、今ある情報から組み立てていかないといけない。


5分・・・10分・・・ミストを維持しつつ戦闘を続ける。

攻撃を避け損なってウォールを発動させた回数は2回、掠ったり軽微なダメージも蓄積されていくのでポーションを全部服用していた。

マジックポーションも服用済みではっきり言ってジリ貧だが・・・。お陰で戦いの組み立て完了だ。

ミストの弾幕でクレスさんたちには見えてないだろうけど、龍眼発動してる有紀は見えている。きっとハラハラして参戦しようとしてるのをクレスさんに止められてる気がする。イメージできるだけ長く居たんだな。

よし!倒すぞ。乱れていた息を戻す。呼吸って大事だね。

攻撃は確かに痛い、防御も硬い。けど絶対無理ではない。有紀が言ってたように「倒せるよ。」というのは嘘でもなくて実現可能な話だった。

『初見殺し』が横薙ぎの攻撃をするときに前に出ようとして失敗しウォールを消費したけど、次の横薙ぎ攻撃で決める。ある程度パターンがあるけどそろそろだ。

予想した通りに横薙ぎ攻撃が来る。

(バインド!アヴォイド!)

アヴォイドは回避魔術で指定した方向に攻撃を避ける。だが、早い攻撃は避けきれない(熟練度があがれば避けられるだろうけど)。さっきまでの回避失敗から俺にはアヴォイド単体で横薙ぎ攻撃のスピードを回避するだけの熟練度はない。

だがバインドで一瞬だけ止めることでぎりぎり回避可能になる。1秒も持たなかったけど、一瞬止まれば十分だ。

頭上を見るとオレンジに光る核があった。ブラスト6発ぶつけたから表面はだいぶヒビが入ってる。でもやっぱり魔術だけじゃ削りきれなかったな。

肋骨を左手でつかみ密着する。これでバックラーは使えない。

そのままショートソードで核を突く・・・その前に!

(ハードスキン!)

俺は気づいてしまった。アヴォイドは後方以外にも避けられるように、ハードスキンも体にかけるだけじゃないということに。硬化したのはショートソード。

ズン!と核に突き刺さる。この一発で表面のヒビが奥まで広がる。あと少し!

と言うところで『初見殺し』の左手が握りつぶそうと襲いかかる。

コレも予想済みだったから対応は簡単だ。

「リリース、ウォール!」

魔力はこれ以上無駄にできない。恥ずかしいけど声に出すと、ガン!と見えない壁に阻まれ『初見殺し』の左手が弾かれる。

ウォールは接近攻撃に対しては弾く効果もあるようで、再攻撃までのディレイが発生する。

残りの魔力を・・・

(ブラスト!)

核にぶつける。奥まで入ったヒビが更に広がった。

何度も・・・と言っても残り3回が限界だけど、『初見殺し』の再攻撃までに使える回数でもある。

出し切るように魔術を使う。そして、アイツの左手が迫ってきた。けど、遅い。瀕死まで追い込んだ証拠だ。

肋骨をつかんでいた手を離し、ついでにショートソードで横切りして離脱。

ぼろぼろになった核が最後の一撃で横に割れ、『初見殺し』は断末魔も上げずにガラガラと崩れて消えていった。


「はは!よっしゃ!」

と、言ったつもりだったけど声が出なかった。というか着地のときに立てずに転んでしまった。

力入らない、魔力も体力も枯渇するとこうなるのか・・・。でも心は高揚している。

パーティーで倒すはずのボスモンスターを一人で倒したぞ!どうだ!

駆け寄る有紀を見て俺は叫んだつもりだったけど声がでないから心で叫んだ。

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