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女になった親友と異世界ダンジョン攻略  作者: りょうりちょー
第2章 王都からの冒険者生活
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バリアントパーティー

「よし、倒せたな。大群で来られるとドロップ拾うのが大変だが、皆頑張って拾ってくれ」


ランベールがそう言い、ヒョイっと何かを摘み上げる。


リスの毛皮だ。


「まあこいつらのは小さい毛皮ではあるんだが、防寒具に使いたいから、修司君も頼む」


「分かりました」


なるほどね。確かにこのリス達、モコモコして暖かそうだし、毛皮を使ったコートとか、暖かそうだな。


しばらく黙々と拾う。とは言っても先程のオノリーヌの魔法で空高く舞い上がった奴らのドロップは一箇所に落下してたので大半は回収が簡単で、3分位で回収が終了した。


「さて、魔力は皆問題ないか?」


ランベールはみんなの状態を確認した、この後も狩りを続行した。


イノシシやシカも出現してたし、クマも居た。


だがこのパーティーで狩れないモンスターは居なかった。


クマは爪も凶悪だし、噛まれるとダメージもでかいだろうけど、ランベールがしっかり盾で押さえる間に機動力と攻撃力をサモロンとマリーが削って、更に弱体化魔法(ウィーキングと言うらしい)をオノリーヌが打ち込んだ所をジャンと俺がアーツで攻撃し、倒せた。


正直、めちゃくちゃ楽だ。


そのくせ、クマの狩猟はドロップが多かった。皮・肉だけではなく内臓もドロップ対象だったようだ。


「このクマが落とす内臓は、人間の体で言うと胆嚢という部分だそうだ。クマから取れる胆嚢…という事で熊胆(ゆうたん)と呼ばれるこの内蔵は薬に加工すると消化を助ける民間薬として使える」


ランベールが解説を始める。そういや、熊胆というのは聞いたことあるな。熊の胆(くまのい)とも言われてたような気がする。いや、テレビでやってただけだから詳しくは無いんだけども。


「まあ流通は殆どしないが、俺達や雪風のように商人が来なかったらポーションも入手できないような場所に居るクランからするとこういった民間薬の材料と言うのは重要なんだ」


「確かに、雪風でもツワブキが買い取られてましたね」


俺じゃなくて商人のライナスが売却したんだけど、売れたという事は使用されているという事だ。


「あれも打撲や火傷に使えるな!ティーナが料理中火傷したときなんかは重宝するんだよな」


ジャンが反応する。なるほど、火傷も回復魔法が使えれば治癒が可能とは言え、このクランには神官の冒険者は居ないので薬に頼るしかない訳だな。


「さて、体力はまだあるだろうが時間も時間だ。一旦あそこの休憩用の洞穴で昼を取ろう」


ランベールの指示で俺たちはまた移動を開始した。






洞穴で休憩をする。


「ほら、修司君。これは有紀さんからだ」


ランベールがバッグから包みを取り出し、俺に渡してくるので受け取る。


ちょっとだけズシっとした感じがあるし、厚さもある。


「なんだろう?」と包みを開けてみると…。


「おにぎりだ」


三角形のおにぎりで、海苔は流石に巻いてないが、味噌を使用したものもあるし、塩もある。


最近和風料理に飢えてた俺には丁度良いな。


「お?愛妻弁当か~?」


「いや、そんなんじゃないと思いますけど…」


とジャンのからかいに反応する。でも、まあ有紀が俺の為に作った弁当って考えれば愛妻じゃなくても「特別」ではあるよね。


「まあ、我々も同じく握り飯だが、修司君のは有紀さんが作った特別製だ」


ランベールが更に各人に弁当を配る。


言ってた通り、皆同じようなおにぎりだけど、向こうはティーナさんが作ったものらしい。


「修司さんのは中に具を入れてあるんですか?」


マリーが興味を持ち、俺の側に来る。


「ああ、具を入れてないのもありますね」


味噌や塩をまぶしたものは具なしだろう。俺や有紀が幼稚園の頃にはお互いの家で母親に作ってもらったおやつ代わりに食べてた簡単なものだ。


簡素だけどこの世界では俺と有紀の2人だけの思い出の品だと思うと、心が温まるな…。


それとは別に、具を入れたものもあるが、これも他のメンバーとは違うようだ。


ためしに具が入ったおにぎりを半分に割る。


「それは、なんでしょう?」


ますますマリーが興味を持つ。他の人も興味あるようで視線が俺の手元に集中してるのがちょっと恥ずかしい。


中には緑色の具がある。これは…ふきのとうかな?


取り合えず一口頬張る。


「うお、甘辛くて美味い」


ふきのとうを甘辛く炒めたものを具にしたようだ。


後からちょっとした苦味も出てくるのに、おにぎりの米の出す甘みが混じって心地が良い。


「お、美味しそうですね。ちょっと貰えますか?」


マリーが結構必死な顔で近づくので俺は思わず「は、はい」と返事をしてしまい、半分あげる事になった。


「すまんな、修司君。マリーは食べる事が趣味で、こういうときは普段の冷静さがなくなってしまうんだ」


ランベールは苦笑いしながら語る。


まあおにぎりはまだあるし、半分上げるぐらいは構わないけどね。


「ん~~!これは美味しいですね!今度ティーナにも作ってもらいましょう」


幸せそうな顔してやがるぜ…。


他のおにぎりも強請られたけど、流石に他はぶつぶつ交換という形で半分ずつ分け合ったけど。ただ、味噌握りと塩握りは拒否した。この2種類は恐らく有紀から俺へのメッセージだと思う。…思いたいだけだけど。


「この2つだけはダメですよ。マリーさん」


「そうですか…」


「すみません」


「いえ、こちらこそ沢山強請ってすみませんでした」


マリーは冷静になったようで、頭を下げ自分の席へ戻る。


「修司が拒否するって事はそれは何か特別なのか?」


ジャンが今度は興味を示す。


「まあ小さい頃の2人の思い出の味ってやつなので…」


「なるほどな!やっぱお前、有紀に慕われてると思うぞ」


メッセージ性があるのかどうか俺には分からないけど、ジャンにはそう捉えられたようだ。


そしてジャンのその言葉にランベールやオノリーヌも頷く。


サモロンだけ無反応で飯を続けてるけど。


「うーん、そうなんですかねえ」


単にどの味が良いか考えた結果思いついたものを入れたんじゃないの?って感じもあるし。


まあでも俺にとって大事な思い出なので、やっぱりこの味噌握りや塩握りは他人に分けたくないな。


そう思いながら味噌握りを取り、頬張る。


「うん、美味い…」


俺はボソっと呟く。


でも、あれ?この味は有紀の母親の作ったおにぎりよりも、俺の母親が作ったものに味が近い。


だがこの世界では俺達は野宿の為に調理をする以外では拠点で購入したものを食する。もっと言えば基本的にこういうおにぎりや或いはサンドイッチは出来合いのものを買うわけだ。


つまり、有紀が自分でおにぎりを作るのはこの世界に来てからは初めてなんじゃないだろうか。


小さい頃に食べた俺の母親の味を再現しようと、四苦八苦して作ってくれたものなんだと俺は感じた。


たかが分量の問題ではあるけど、再現するのは難しいんだよな。


そういう苦労を俺の為にしてくれたんだと思うと、凄く愛しくなる。


もう一度2人きりになったらちゃんと気持ち伝えよう。


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