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女になった親友と異世界ダンジョン攻略  作者: りょうりちょー
第2章 王都からの冒険者生活
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夜のアトス山2

俺が有紀の手を掴んだのは…。


「有紀、お前…手めちゃくちゃ冷たくなってるぞ」


俺は掴んだ有紀の手によって急激に自分の手の体温が消えていくのを実感しながらも離さず有紀に告げる。


「あ…そ、そうか。でもボクは前から言ってるけどこういうのは平気なんだよ」


「それは分かってるけど、俺はアトス山来てからずっと寒さに対して有紀の世話になってると思うとな」


俺が暖を取れる代わりに有紀の手や体は冷えてるんだと思うと何だか申し訳ない気持ちになる。


勿論、寒さや暑さに対して平気なのは分かっていてもだ。


「ははは、気にしなくても良いのに」


「まあ…」


「さ、修司。手を離してもらえないかな?流石に恥ずかしくなる」


「あ…そうだった…」


有紀ははにかむ感じの笑顔をする。…照れてるのね。


俺は多分このまま手を離してさっきと同じように話をして、交代まで時間をつぶすべきだと思う。


が、有紀の顔を見てると心がくすぐったく感じる事がたまにある。…そして今まさにその状態だったわけだ。


俺は一度力を緩めた手をまた握る。


「え!?」と驚く有紀を引っ張ると、有紀も油断してたようで俺の方に向かって転んでしまう。


「ちょ、ちょ…」


有紀がそんな事を言いつつ転びそうになる所を俺の体が壁になり、支える。


戦闘の時なら多分有紀はこんな事にならないと思うが、恐らく今俺と2人きりだったことで完全に油断してたのだろう。


俺も引っ張りに耐えて「何するんだよ」と有紀が軽く怒るのを予想してただけに、転んでしまいそうになる有紀に驚いてしまう。


「す、すまん有紀。そんなつもりじゃなかったんだ」


「ボクも油断してた…。でも修司急にどうしたの」


「いや、少しちょっかい出してみたかっただけだったんだ。それが、こんな事になるとは」


「もう…何してるの、修司は。…でも、支えてくれてありがとう。お陰で怪我なかったよ」


有紀が俺に掴まり、ニコリと微笑む。


まあ、この位で怪我する事はないんだろうけど、怪我無くてよかった。


でも、やっぱり俺と有紀が密着してる所はヒンヤリとする。有紀がこれだけ冷えてるという証拠だ。


「…有紀!」


俺は申し訳なさと有紀の健気さ(本人はそういうつもりないようだけど)に心を動かされ、つい抱きしめてしまう。


「うああ、しゅ、修司!何するの!?」


抱きつかれてさっき以上に驚く有紀。そりゃそうだ。


でも俺は我慢出来なかった。


だって現実で考えてみて欲しい。自分の体が冷えようとも俺の身を案じて行動してくれる女の子が居たら心打たれるはず。打たれない?


「すまん、有紀。しばらくこうしてたらダメか?」


「え?え?いや、えっと、はい…」


有紀はまだ思考が混乱してて、変な返事だったけど許可は貰えた。貰った事にしとこう。というか、彼女は混乱はしても俺から離れるような抵抗を示さなかったし拒否しないだろうというのは返事受ける前から分かってたんだけども。






「…」


「…」


有紀が俺の前で体育座りしてて、俺はその有紀の後ろから抱きしめるようにして腕を回す形になって、2人で火を見つめている。


これなら俺の背中にかかった毛布で有紀ごと包めるから、温まると言う意味ではかなり良い。


最初は氷のような体温だった有紀も今は普通の体温になっていて、お陰で俺も暖かい。というか暑い。


俺達は…と言うか俺は今猛烈に後悔している。


確かに雪風では有紀とエミリーが俺に抱きつく形で寝たわけで、絵面で言えばそっちの方が頭おかしいと思うが…、それでもあの時は「俺が温まるため」という名目はあったわけだ。


人肌と毛布で熱を逃さないようにする、と考えれば効率的だったわけだけども、今の俺達がやってる事はそんな効率的な話ではない。


そもそも火の番をする以上、寝る訳ではないので多少寒いぐらいの方が目が冴えて良いわけで、こうやって2人で暖まり合う意味は無い。


冷えた有紀の体を暖めたいという気持ちからつい出てしまった行動は、今こうやって2人を気まずい状態にしていたりする。


と、有紀の方から話し出す。


「修司…あれかな?溜まってる…ってやつなのかな?」


それどっかで聞いたことある台詞だぞ。


「…しょうない?」


俺は続きを口にする。いや、まあムラムラしてる訳じゃないんだけどね。


「うーん」


有紀が悩んでる。即ダメとは言わないのはイケるって事か?


でも俺はそっから先の方法なんて何もしらないしな…どうしよう。


と内心焦り始めたが杞憂に終わる。


「今はダメかな。また今度ね」


有紀はそう答えて顔をジャン達の寝床に視線を向ける。…まあこっちからは見えないけど頭の向きからそういう視線の移動をしたんだろうと思う。


ああ、2人が居るからそりゃ無理だな。火の番する以上離れるのもダメだし、かと言ってここでイチャイチャしようもんなら2人が起きてくる可能性もある。


「そ、そうだよな」


「そうだよ…うん」


有紀の顔、今どうなってるのかなって思っちゃうよね。見てみたくなるよね。


でもあくまで紳士的に振舞うぞ、俺は。


「有紀」


「ん?」


「寒くないか?」


「寧ろ暑いくらい。修司は?」


「俺も暑い。でも多分有紀から離れたら寒くなるかも」


「ふぁ!?え?」


有紀の声が裏返ってる。俺はまだ冷静な振りできてるけど、有紀はそろそろ冷静な様子維持できなくなってるようだ。


いやいや、紳士的に振舞おう。


有紀に回した腕を少し動かし、指で有紀の髪の毛を撫でる。


「…ちょっと…待って…」


「え?」


「いや、その…髪の毛なんでいじってるの…?」


「ああゴミが付いてたからさ」


「そ、そっか」


勿論嘘だ。


撫でつつ有紀の、普段は髪に隠れた耳を露出させる。


「ん…ねえ、もうゴミ取れたでしょ?」


有紀は少しだけ抵抗するけど、抵抗と言っても少し身動ぎするだけだ。


「取れたよ」


と、露出した耳に囁く。


「ふあ…」


ビクっと有紀が反応する。


普段の有紀は体とかがエロいって感じだけど、今はもう雰囲気がエロい。


あーなるほどね、と俺は沸騰しそうな頭で考える。


有紀は男の姿でも正直時々「可愛いな」と思うことはあったり、指が細いせいで指を俺の口に当ててくるときなんかはエロさを感じたものだ。


が!


そんなレベルじゃなかった。女の姿の有紀は「めちゃくちゃ可愛い」し「めちゃくちゃエロい」と思う。


「耳、やめて」


従兄弟から借りたエロゲーで似たような台詞あったけど、これマジで言うのか…。


「なんで?男の時は良く内緒話とかで耳元で話したじゃん」


俺は更に畳み掛ける。あれ?紳士ってなんだっけ?


「そうだけどね、この体だと耳とか肌とか男よりも感度高い気がするんだ」


ほう!感度と来ましたか。


「それと」と有紀は続ける。


「修司、凄く息荒い…」


そうかな?と思ったけど意識してみたらめちゃくちゃハアハア言ってるわ。


でも…。


「有紀もじゃない?」


「…え?嘘…」


俺だけの息遣いだけじゃなくて、有紀も荒いよ息が。まわしてる腕を通じて伝わってきてるしね。


「や、やめよう、修司」


「あ!」


有紀は気力を振り絞ったのか、何とか俺から離れる。腕に残る熱は有紀の体温か。


有紀が離れた事で空いた隙間から冷たい空気が入り、俺を冷やし冷静にする。


「…すまん、ちょっと悪戯しすぎた」


「良いよ…。いや、良くないね…。火の番、ちゃんとやらないと…」


「そうだな」


「それに…ね…」


チラっと有紀が寝床を見るので俺もそっちに顔をずらす。


「いや、俺達にはお構いなく続けてくれ」


ジャンとニーカが顔を覗かせていた。


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