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女になった親友と異世界ダンジョン攻略  作者: りょうりちょー
第2章 王都からの冒険者生活
188/229

バリアント3

「おはようございます」


「ああ、おはよう。修司君は朝早いな」


俺は目が覚めて少し冷たい空気を吸うために外へ出たら、既にランベールが剣と盾を持って素振りをしていた。


「ランベールさんこそ、早いですね」


一応年上だから「さん」付けだけど、そう言えば昔よりも俺は物事を考える時に人に「さん」付けしなくなってる気がする。


まあだからなんだ、と言われると…なんだろうね?


「段々衰えを感じてるからね。せめて長く戦えるように、こうやって朝から鍛錬を積んでおくのさ」


「そんな…昨日なんて攻撃をしっかり受けきってたじゃないですか」


「あのくらいの攻撃ならまだまだ余裕さ」


という事は、アーツを使わずに己の力だけで敵の攻撃を受けてたわけか…。


「そういえば修司君も盾を使っているね。アーツは何かあるのかな?」


「ええ、カウンターシールドだけ…」


「ふむ、それは使いどころも多くて良いアーツだな」


ランベールが「ほう」という顔をする。


「ただ、ここのシカの突進ぐらいの攻撃になるとアーツで弾けなくて…」


「なるほど。重すぎて相手の姿勢を崩せずに自分だけ崩れてしまう、という感じだな」


「そうです」


「うーん…修司君の場合は、回避を中心とした戦い方だろうから、盾で逸らすのが基本なんじゃないか?」


「そうですね…」


良く見てるなこの人は。


「ま、それでも避けるだけではなく受ける事も考えないと彼女が守れない…か」


「いや彼女じゃないです…」


やっぱり良く見てないなこの人は。


「ああ、そうなのか。…だが守るためには避ける事が出来ないケースは確かにあるよな」


「そうですよね」


俺は頷く。それを確認してランベールは話を続ける。


「私はアーツを使わずに耐えられるものは耐えるようにしているが、しかし正面から敵の攻撃を防ぐためのアーツもある。そうだな…良ければ教えようか?」


「是非!」


多少ダメージを受けてでも回避以外の手段も欲しかったし、丁度良い。俺は喜んでランベールに指導をお願いした。


教えてもらった盾のスキルは2つ。


まず、シールドチャージ。盾を掲げて突進するスキルで、2~3メートル位の距離なら移動が可能。


「シールドチャージはカウンターシールドでは弾けないような威力でもこれなら対応できるはずだ」


ランベールの持つ盾アーツの中では初級らしいけど、高ランクの盾役冒険者が最も多様するスキルの1つという事で俺が習得する価値は十分ある。


そしてもう1つはシールドバッシュ。これは盾を利用して殴りつけることで相手を一瞬だけ気絶させるスキルで、割とゲームでは良く見るスキルだ。


「気をつけなければならないのは、シールドバッシュが通用するモンスターと通用しないモンスターが居るという点だ」


「はい」


何となくイメージは出来る。ゲームでもスタン出来ないモンスター居るしね。


「無生物系…ゴーレムやスケルトンの類はスタンしないから気をつけるんだ」


「分かりました」


無生物系は確かに脳があるわけじゃないから殴りつけて気絶するなんてことは無いよな…。


「修司君。中々覚えが早いな。君が持っていたカウンターと、今回のチャージ、バッシュ…この3スキルは初級アーツだが盾役ならまず習得する基本アーツだと思ってくれ」


「分かりました」


初級アーツは威力や効果は上位アーツには及ばないものの、発動後の硬直の少なさが良い。


硬直で味方を守れなかった、何てことは盾役として避けたい訳で、彼らにとっては高ランクであっても隙の少ない初級アーツは何処までも重宝する訳だ。


俺は殆どソロみたいな感じだからこれらのアーツを多用することはないと思うが、それでも防御手段が増えるのは戦闘の組み立てが必要な俺にとっては望ましい話だと思う。






「ええ…!もう、もう行かれるんですか!?」


ニーカが寂しそうな顔で俺…と言うか有紀を見る。


「…有紀ずいぶん懐かれたな」


「まあ…」


昨日の食後から有紀とニーカはベッタリだった。寝る時も同じベッドだったしね。


でも気持ちは分からなくもない。


有紀は勿論結構な年齢という事になるんだけど、見た目はニーカと同じくらいにしか見えない。


恐らくここに来てから…もしかしたらここに来るよりもずっと前から、ニーカは同年代の人との交流が無かったのだろう。


「バリアントの中でも彼女の周りは年上だからね、確かにボクがニーカに一番年齢が近くて懐かれるのは無理もない」


有紀がやれやれと言った感じでそういう。


年齢って…。お前何百歳とかじゃん、この中で最年長じゃん。


まあツッコミたくなるけど我慢しよう。


「こら、ニーカ。有紀さん達も予定があるんだから引き止めるのはダメよ」


ティーナがニーカをなだめる。


勿論ニーカだって馬鹿じゃないし、冒険者との一期一会は十分理解している訳で、ダダをこねるという事なく、言いつけ通り引き下がる。


しょんぼりしてるニーカにクランメンバーが少しオロオロしてる。


…恐らく彼女は他の冒険者には明るく送り出してたんだろうな…。


だからこの空気は他のクランメンバーにとっても予想外で対応が出来ていない訳か。


少しシーンとした空気になった所に、ランベールが突然発言をする。


「あ、そうだ。修司君達は山頂行って、その後の下山ルートはどうする?」


「ああ、えっと…」


まず、山頂にて一晩過ごしてその後は登山と同じルートで下山する、そのプランを俺からランベールに伝えると、彼は少し考えて口を開く。


「山頂もここと同じくらいには冷えるし、そこでは寝ずの番をするのかな?」


「はい、そのつもりです」


山頂には龍牙穿空を設置して強化するのに向いているポイントがあり、そこで一晩置いておくとなると、俺達も当然側に居ないといけない。


宿なら盗まれる危険は無いが、野外では話は別だしね。


「分かった。それなら、ニーカと…あとジャンを動向させよう」


「え!?」


俺が驚きの声を上げる。というかニーカも「え!?」って顔してるけど…。


「いや、しかしニーカを連れて行くのは危険じゃ…」


「修司、お前ニーカを舐めたらいけないぞ!」


俺の心配に対して、ランベールではなくジャンから反論が来た。父親だしね、ジャンは。


「俺やティーナと共に旅してきた娘だからな。当然戦いだって出来るように手ほどきしてきたから、戦闘に関しては問題ないぞ」


ジャンが言うとティーナもそこに付け加える。


「娘にはちゃんと私の冒険者時代の基本を伝えてありますし、拠点近辺の狩猟ならこの子も行ってますから、お2人の足手まといにはならないと思います」


両親が言うならまあ…。俺は有紀を見ると、有紀も同じ気持ちだったんだろう。


「修司、お言葉に甘えておく?」


「そうだな…、じゃあニーカとジャンさん、良いですか?」


「おう!」


「やったー!」


こうして俺と有紀は山頂向かうにあたり、思わぬ助っ人が加わる事になった。


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