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女になった親友と異世界ダンジョン攻略  作者: りょうりちょー
第2章 王都からの冒険者生活
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バリアント

バリアントは英語で「多様性」を意味する。


「うちのクランはパーティーで活動する事が多くてな」


中年男…リーダーのランベールは話す。


現在洞穴を出て彼らと共にバリアントの拠点へ移動中だ。


ランベールが先頭から2番目を歩くので必然的に俺達の側に位置する事になる。


先頭は盗賊の冒険者であるサモロンという20歳ぐらいの男だ。


この小柄な男が先頭なんだ…と俺は少し思うが、ランベールは気付いたようだ。


「先頭は盗賊に、最後尾に狩人の冒険者を配置するこの陣形はモンスターへの警戒を優先したものなんだ」


後方…先程の女冒険者は弓を担いでたし、彼女が狩人だった訳だ。


なるほど。パーティーだと策敵能力を生かした移動陣形と、戦闘時には戦闘用の陣形…といった使い分けができるんだな。


俺達の場合は、陣形も何もないから面白いなと思う。


しかし、盗賊でも冒険者になれるというのは改めて面白いと言うか変な感じする。でもゲームだと普通に存在してるし、そんなもんか。


5時間歩く間には2~3度の戦闘に遭遇し、戦闘の光景を見せてもらった。


戦闘に入るとまずランベールを戦闘とした陣形に変更し、モンスターを威嚇する。


剣で盾をガンガンと鳴らし、モンスターの注意を引き付けている間に、盗賊のサモロンが気配を薄くし、背後に回ろうとする。というかサイレンスの魔法も魔術も使わずに音を立てないと言うのは流石盗賊だと思う。


他の冒険者…全体的に軽装で拳だけゴツゴツした金属製のナックルを装備したジャンという男は魔力を練り上げる、狩人のマリーは斜線確保のためにランベールから少しずれて立つ。最後に杖を触媒として魔法の構築を始めているのはオノリーヌだ。


「いくぞ!」


まず、マリーが矢を放つ。モンスターが避ける所をランベールが追い詰め正面から敵の攻撃を受ける。


俺なら盾で受けても飛ばされる事が多いので受け流す所だけど、彼はしっかりと盾で受けきっている。


「あれはアーツなのかな」


有紀がつぶやく。俺も気になるところだから後で聞いてみよう。


ランベールが正面から抑えたその隙にサモロンが後方からダガーで攻撃し、モンスターがサモロンに振り返った所を魔法が命中する。


オノリーヌ…触媒となる杖を持った獣耳にふわふわの尻尾が生えた女冒険者は丁度俺達の側に居る形になってて、使用した魔法を教えてくれる。


大体「フレイム」「アイス」など初級の魔法を囮として弱体化の魔法を使っているらしい。


「初級の攻撃魔法が~当たるなら儲け物でね~。当たらずに避けてもらっても構わないんだ~。本命は敵の弱体化だから~」


彼女の話し方は少し独特だなあ。


モンスターに弱体化の魔法が命中し、ランベールが更に盾で殴りつけると、どのモンスターもその時点でふら付く。


そこをジャンが全力の一撃を以って仕留める。


概ねこんな感じの戦闘だった。


「パーティーでの戦闘の良い点は各自の負担が軽いという事だ」


ランベールが解説する。確かに俺もそう思う。


周囲を見てもまあ、全力の一撃を放ったジャンだけは疲れた顔をしていたけど、それも慣れたもので数分で回復してるし、他の冒険者は汗をかくような激しい動きはしていない。


「でも、何故またアトス山の山頂エリアに拠点を…?」


俺は気になって尋ねるが、その質問の直後さっきまでの雰囲気が変わり「シーン」としてしまう。


あれ?俺何かしちゃいました?


「うーん…」


ランベールは言葉を捜してるようだけど…やがて話し出してくれた。


「まあ大した話ではないし、山頂エリアに拠点を置くクランの共通点なのだが…」


簡単に言うと、かつて所属していたパーティーやクランから脱退したり追放された者達が寄り添い、クランを設立したらしい。


「だが、我々は追放された身だから、何時何処で昔の仲間に会うか分からないだろう?だから出来るだけ人が来ないエリアを拠点として活動しているんだ」


追放…。


でもこれは別に「悪い事をしたから追放された」とは限らない。


話を聞いてみると、ランベールの場合は年齢による体力の衰えから高ランク冒険者パーティーの盾役が勤めきれないと感じて自分から脱退したらしい。…まあいずれ当時のメンバーからクビ宣言される所だったみたいだから実質的に追放されたようなものだ。


一応、彼の場合は昔の仲間に出会っても仲間も「足手まといになる前に抜けた」ランベールを邪険にする事はない。


「だが、やはり彼らに会うと気まずくてな。だから私は当時活動していたエリアから離れてここに来たわけだ」


マリーは先走った冒険者の死亡を「警戒役であるお前がサボったからだ!」と非難を受けて追放されたらしいし、サモロンも盗みの冤罪で追放(まあ盗賊だから疑われやすいのかもしれないけど)…。


まあ色んな苦い理由があるわけで、俺は無遠慮に足を踏み込んでしまったわけだ。


「すみません…」


俺は知らなかったとは言え、相手を不快にさせてしまった事を詫びる。


「良いんですよ。確かに誰も管理していないエリアに拠点を置くと言うのは普通は考えませんからね」


「そうそう!修司だっけ?お前真面目だなー!」


マリーに続きジャンも俺のフォローをしてくれた所でまたパーティーの雰囲気も戻るのを感じた。


どうやら彼らも無意識に沈んだ雰囲気出してしまったようで、ランベールから「変な空気にしてすまない」と逆に謝られてしまった。


でも、そうか…普通に考えれば大手クランの管理していないエリアは流通面でも安全面でも不便な所なわけで、そんな場所に拠点を作る事はしない。


だが、そんな場所だからこそ他の冒険者達との接点を減らせるというメリットがあるわけで、彼らのように山頂エリアに拠点を作るクランは「他の冒険者との積極的な関わりを減らしたい」人達の集まりだったわけだ。


「ただ修司君。勘違いしないで欲しいのだが…」


ランベールは付け加えて発言する。


「冒険者として活動する以上、他の冒険者との接点をゼロにする事までは考えていない。だから、君達のように一夜を明かしたい冒険者を拒否する事はないよ。…まあ対価次第だが」


「そうねえ~。君達は十分に対価払ってくれるから、大歓迎~」


オノレーヌが言うと皆ほわんとするのはこのノンビリ口調の話し方のせいか。


恐らく彼女がマスコットなんだろうな、このパーティーの。


こうして5時間の道のりを経て、俺達はバリアントの拠点となる小屋へ到着した。


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