アルカ村ダンジョン4層・・・そして
クレスさんのお陰で俺はこの世界の情勢が少し分かった気がする。
まあ、少しだけど、多分コレで十分なのかも。
というのも有紀すら途中から「そうだったんだ。」とか頷きだしてたからな。
いや、可愛いけどねそういう様子。でも、この子最低でも200年はこの世界に居たわけだろ・・・。
ツッコミ入れると目をそらして「ひ、必要なかったんだよ・・・」と言い訳を始める。
まーね!わかるよ、俺だってクラスのメンバーの関係図とか大まかなのは分かっても細かい人間関係とか分からないしさ、国同士ってなるともっと分からないしね。
良いんだよ有紀・・・、慈しみの目を向ける。「また気持ち悪い目してる」と引かれた。
更に2週間後、俺は4層へ潜っていた。
有紀のレーダーがあれば奇襲は防げる・・・本当は奇襲も対応できたほうが良いだろうと思うけど、それは慣れたらにしよう。
3層のほうは奇襲の対応も出来るようになったから竜眼なしでも良いんだけどね。
4層のスケルトンは人型だけあって動きが細かい。
盾もちのスケルトンはこちらの攻撃をガードしてくる。
両手剣をもったスケルトンは被弾を恐れず大きな一撃を放ってくる(が、盾でそらして弱点の胸部を攻撃すればよく、実は一番楽)。
槍もちのスケルトンは後方に引き、こちらが接近するのに合わせて踏み込み、槍を突き出してくる。
短剣もちは素早いし・・・、弓使いは細長い通路で遭遇すると攻撃を凌ぎながら一気に踏み込まないとダメージだけ受け続けるハメになる。
スケルトンの種類が多いのと武器ごとに立ち回りが違う。
「4層難しいな!」
俺は盾もちに対してブラインドを放ち、視野を奪う(視野あるんだな)。
スケルトンのガードがブレたところを狙いショートソードを胸部に突き刺す。
突き刺すのは肋骨の隙間から狙うだけで良い、ただ3回に1回は肋骨に当たり防がれてしまう。
「ここは難易度の割に依頼もクランからの魔石回収依頼だけだし、旨味がないから不人気階層だね。」
有紀は盾もちの後方に居る弓スケルトンにブラストを当てて倒す。
以前彼女は自分の持つサーベルは触媒だとか言ってたけど、一々取り出すのが面倒になってるらしく、素手というか構えの一つもせずにブラストをぶち込んでた。
うん、強い。
不味い狩場ではあるけど、実践経験には良いということで3層から4層に場所を移して修行中だ。
魔石の買取は安価だけどクレスさんの口聞きで宿泊費用と食事代が賄える程度に依頼料を上げてもらえたから4層に篭っても金欠にはならなくて済む。
武器メンテナンスもあるから少しずつ3層での蓄えを消費する形にはなっているけど、金が尽きたらまた3層に戻れば良い。
とにかく今は経験だ。
篭りまくった結果、1週間もせず4層の戦闘には慣れていた。
槍スケルトンは近づくと引いて、一定のところで急に前に踏み出して槍を突き出してくる。
こいつが意外と強いけど、踏み出しタイミングが読めるようになればバックラーで軌道をそらしてカウンターをあてるだけで倒せるようになった。
胸部への命中もほぼ100%。
複数のスケルトンとの同時戦闘は難しいがミスト、ブラインドを使うことで限定的にタイマンの状況を作り出すということも出来るようになった。
それともう一つ、防御向けの魔術であるハードスキン。
これは肌を硬くしてダメージを減らす魔術だが、逆に攻撃に転用することにした。
短剣スケルトンは素早く、バックラーをかいくぐってくる。
なので最初からハードスキンで硬くして攻撃を受けつつそのまま殴る。
短剣(骨で出来てた)ごとスケルトンの頭部を殴り破壊する。
弱点は胸部だが、これでも倒せた。
「こういう使い方もあるんだな。」
「修司、すごい!いや、もちろんボクもそういう使い方もすると想定して教えた魔術ではあるんだけど、そういった応用はもう少し魔術を覚えてから・・って思ってたんだけど、まさかボクが言うよりも先に自分で気づいちゃうとは・・・。」
親友が人を褒めるときは建前じゃなくて本心でいう子だから、本心からすごいと思っているのは今までの付き合いでよく分かる。
けどね、今この世界では親友は女だ・・・そう、可愛い女の子だ。
ニッコリしながらこんな風に褒められたらさ・・・なんていうかくすぐったい!
「うわ、修司、鼻の下すごい伸びてるよ・・・。」
ああやっぱり、そうだよね、そうなるよね。
「なんか褒められてくすぐったくなったんだよ。」
「いつもボクは修司のすごいところは褒めてるでしょ?昔からさ。」
いや、そうなんだけどね、やっぱ見た目が可愛い子だと同じ言葉でもこっちの気持ちは違うんだろうな。
そんなやり取りしてたら、有紀が真顔・・・真顔だけどこの子、どこかぼーっとしてる感じにも見えちゃうんだけどね、でも真顔になって話し出した。
「修司、明日にでも5層挑む?依頼となる薬草採集を受けるけど、『初見殺し』の討伐もしてみようか。」
急に言い出した。
「え?ええ?あれってパーティーで挑むものだろ?大丈夫か?」
「もちろん修司が危なくなったらボクが代わりに倒すよ。援護ももちろんするけど、基本的に修司が一人で戦う形になっちゃうかな。」
援護あるのはありがたいけど、本当に大丈夫かな・・・。
ニッコリ微笑む有紀。
「このダンジョンの初心者冒険者よりもずっと強くなってるよ修司は。だから、勝てるさ。」
※現在のステータス
佐野修司
ランク:1
ステータス
筋力:40
敏捷:30
体力:30
魔力:40
うーん、クレスさんが『初見殺し』とあったときはこれより低いステータスだったのかな。
「うん、というか3層の2週間目のステータスの時点で彼らよりステータスは上だよ。」
「え?なんで!?」
「だって、皆パーティー組んでるから・・・。修司はボクと二人・・・って言ってもボクは援護以外してないから実際に敵と戦い続けてるのは修司でしょ?ゲームでもそうだけど、複数より一人のほうが経験値は多くなるものだからね。」
つまり、パーティーじゃなくてソロぽいことしてたからステータスアップも大きいってことか。
「そういうことだね。だから自信持って!」と有紀が背中ポンポンと叩く。
あ、ポンポンってされるとバブみを感じますね。