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女になった親友と異世界ダンジョン攻略  作者: りょうりちょー
第2章 王都からの冒険者生活
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アトス山護衛依頼5

夜中は勿論交互で…のつもりだったけど、結局2人に番をさせてしまった駄目男はここに居ます。


「いいよ、修司…。修司の方が戦闘多いんだからしっかり休まないと」


と有紀は言ってくれるし


「そうだよ。私達だって交互にちゃんと寝てるんだよ」


とエミリーは言ってくれるけど。


罪悪感でヤバイ。


「何してるんですか?そろそろ出発しましょう」


俺のそんな気持ちはどうでも良いとでも言うようにライナスがそう言い外に出る準備を始めていた。


「ほら、修司も。気持ち切り替えて!」


有紀に励まされ、ようやく俺は動き出す事にした。






昨日リスの集団と戦った場所が丁度森の入り口で、2日目の今日はその森の中を抜ける進路になる。


またモンスターが出るかもしれない…。


「有紀、周りの状況は?」


「モンスターの魔力は無いかな」


「あ」


エミリーが急に声を上げる。


「え?何?」


俺が振り向くと、エミリーの見ている方向に黄色い花が咲いて居る草がある。


このアトス山、冬のような寒さに雪も降る。にも関わらず緑の葉が多い茂る木々があったり、こうして花が咲いていたり、日本の冬を考えると結構様子が違う気がする。


と言っても俺も別に日本中を知ってるわけじゃないんだけど。


「綺麗じゃない?何か、緑と白に黄色って」


「いやあ、ボクはあんまり気にした事ないや」


「有紀は、うん…ドンマイ!」


「ええ!?」


そんな会話をしつつ思う。


確かにここはダンジョンとは言え他の所より色んな景色があるし、敵の警戒だけじゃなくて景色を見る余裕も持った方が良いのかもしれないな。


「ちょっと採ってくるね」


エミリーがタタっとかけていき、戻ってくる。


「そんなガッツリいくんだ」


俺はツッコミを入れる。てっきり花を手に入れたいのかと思ったら茎も葉も付いた状態で…って言うか根も含めてゴッソリ持ってきてるから、そりゃツッコミ入れたくなるよね。


「そうだよ。うーん、君…商人ならこの植物の価値、ちょっと分かるんじゃない?」


エミリーがライナスに話を振る。


「え?あ…はい。とは言え私は植物は取引にないのですが」


いきなり話を振られて慌てるライナス。


いや、でも女の子に話振られて喜んでるだろう?俺にはわかるぞ。


「これは、ツワブキ…ですか?」


「流石商人だね。勤勉で助かるよ」


エミリーがライナスを褒める。そしてライナスは気を良くして更に話を続ける。


「ツワブキは根の部分…根茎と言いますが、ここと葉が調合に用いられます。この植物のみでも打撲や火傷…切り傷…かな。化膿止めとして用いられてきました。」


「へえ…」


俺と有紀が頷く。


「ああ、ただ現在はポーションで傷の回復は出来ますし、毒消しにしても別の薬品が流通していますから、実のところこの植物を使った調合は殆ど行われていません」


「要するに昔の民間療法…ってやつだね」


なるほど。


民間療法は体系化されておらず、地域によりその手法や内容は様々らしい。昔はこの草を使った消毒などもしてきたのかもしれないけども、一部の地域でしか使われてなかったわけだ。


こういうローカルな知識や技術は他の大多数が用いる手段の前に廃れる流れにある。例えば先ほどの例ならポーションや毒消し等のアイテムの方が大量に流通しているため、冒険者にとっては限られた草木でしか使えないやり方は効率が悪く、現在では使われる事が殆ど無い。


「他にも神官職の冒険者が全国に広まったのも民間療法が廃れた一因ですね。彼らは回復魔法が使えますからね。解毒も行えますし…」


人と物が不足していた中で生まれた生活の知恵…それが流通が良くなるにつれ消えて行くわけか。


便利な世の中と言うのは一方で昔の技術を捨てる事でもあるのかもしれない…。


「ただ」とライナスは付け加える。


「このツワブキ自体は単体で使っても良いですが、解毒薬の材料としても使えます。解毒薬自体レシピが複数存在していますが、その中の1つにこの草を使った物があります」


「ライナス君、物知りだね」


「いえ、そんな」


エミリーがニッコリとライナスに微笑むと、ライナスは顔を赤くし背ける。


あ、これは惚れたな。


「ま、まあ、ツワブキの流通量は少ないですし、単価も高くは無いのですが、この後雪風の拠点についたら薬品作れる人にあげれば喜ばれるかもしれませんね」


ライナスがエミリーに返そうとすると、エミリーはそれを断る。


「君の方がクランの人に顔が聞くんだし、君から渡した方がすんなり行くんじゃないかな?」


「それも…そうですね。では頂きます」


ライナスも即納得し、収納する。…顔赤いままだけどな。






2日目はありがたい事に距離は長いもののモンスターが出る様子は無く、無事に雪風のクランに到着した。


クランの拠点に近づくほど人の気配が増えるので、出没するモンスターは減る。逆に言えば小屋を出たあたりが一番警戒しなきゃいけないエリアだったのかもしれないな。


「ふう…到着だ」


それでも警戒しながらの移動は疲れる。時々景色を見てリラックスしたから精神的にはそうでもないか。


「お疲れ様でした。クランの受付に行きましょう」


拠点内ならモンスターの心配はないし、ライナスが先頭になり歩きだすのを、俺達は後ろからついていく事にした。


「ああ、受付で収めるコムは僕が払っておきます。これも報酬の一部だと思ってください」


「それは助かります」


「ありがとう」


「ライナス君、良い人だね」


俺達はライナスに礼を言う。まあ俺じゃなくて有紀とエミリーのためのサービスだろうけどね。


クランの受付で金を納めるのは場所代みたいなもんだな。アルカ村のダンジョンでもやったっけか。


ともあれ、これで護衛依頼は終了だ。


ライナスも「また依頼するときにはよろしく」と言い残し雪風のクランが使用しているらしい建物へ向かっていった。報酬の半分…5万コムを俺達に残して。


依頼の報酬は冒険者ギルドから貰うわけだから本来は10万コムをギルドから受け取る形になるんだけど、それだと俺達の資金がヤバイ。


ここで過ごすときにも金を使うんだから手持ちは欲しい…という事でライナスとギルドのオッサンで「依頼人から半分、その後ギルドから半分」という報酬の渡し方になったらしい。


まあ別にギルドもライナスもこの渡し方で困るわけじゃないしね。


とりあえず俺達の初護衛依頼は戦闘らしい戦闘も1度だけで、無事に終了した。


ちなみにライナスは後でエミリーに迫って振られました、まる。


「だって『僕に微笑みかけてくれたのは好意からですよね?でも男の僕から告白します』と言われても、私そのつもり全くなかったし…」


やれやれという感じでエミリーが愚痴る。


うん、心が痛い。


俺だってニッコリされたら「あれ?好意持ってるのかな」ってなる。ていうか、女の方はそう考えなくても、ピュアな男はそう捕らえてしまうんだよな。


俺だけはライナスの味方であろうと、そう思うことにした。


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