アトス山護衛依頼2
護衛開始して昼食を摂り、移動を再開する。
この昼食中分かった事だけども、ライナスは自分の分は用意してるみたいだ。
収納魔法に作り立てを保管すると、温かい料理が温かいまま取り出せる。
「僕は自分の分がありますけど、魔女さん達はありますか?分けますよ」
ライナスが微妙に優しい。まあ有紀達には、だけどね。
「いや、ボクらはここで作ったものを食べるよ」
「私もかな」
ざま~!!という気分になる。俺の分もあったら多分俺は貰ってたと思うし、それに倣って2人も受け取ってたかもしれないけどね。
有紀が俺にこっそり言ってたけど「ちょっと露骨に修司を見下してるのがボクは嫌なんだよね」だってさ。要するにライナスは人の攻略順序みたいなものを間違えてるんだよな。
まあ行商一筋なら別に人との関わりが上手くなくても大丈夫なんだろうけども。
取りあえず飯を作るか…。
フレイムで焚き火を作って、そこに鍋を載せる。
適当に切った人参やキノコを水を張った鍋に入れて米入れて…なんか雑炊みたいなものを作る。
出汁が無いのが痛いけど、味噌と醤油はあるからそれで味付けすれば良いか。
出来上がるまでの間、焚き火に当たり暖を取る。有紀やエミリーはなんとも無いけど俺は寒いからな。
と言うかライナスも寒いはずなんだけど、彼は俺達から少し距離を取るように後方に居る。
あんまり人と関わりたくないタイプなのかもしれないな。
俺の両サイドに有紀とエミリーが座る。一見するとハーレムか、これ。
「こうしたら暖かいんじゃない?」とエミリーが提案した事によるんだけども、まあ両サイドに居る2人が風除けとしても役立ってるし、あとちょっと体温が感じられて暖かい。でも、恥ずかしいんですけどね!
食事を終え、また出発をする。
護衛初日はこのままモンスターと当たらずに中継地の小屋まで行けるんじゃない?
…と思ったのが間違いだった。
「モンスター居るね」
思わなきゃ良かった…。
直ちに戦闘態勢に入る。
前衛に俺、次に有紀、その後方にライナス、最後尾にエミリーと言う並びに変更し、有紀とエミリーがライナスを防御する形になる。
武器を構え待機していると、現れたのは…
「ん?どこだ?」
「ここ、居るよ」
有紀が示したほうを見ると確かに居た。
山道を囲む茂みからヒョコッとリスが出現した。
大体20センチぐらい…大きな尻尾を持ち上げてこちらを見ている。
「可愛いな!」と俺はつい声を出してしまう。いやあ、もこもこして可愛いんだよこれが!
が、有紀は警戒を解かない。勿論エミリーも。
「気をつけて修司」
「なんだよ?こんな可愛いのに排除しちゃうなんて可愛そうじゃないか」
「いや、修司何寝ぼけた事言ってるの…」
有紀の目線の先が右上…左上…と動く。
「修司君、構えて」
エミリーも普段よりも真面目なトーンだ。
「なんだ…よ…?」
有紀の方を振り返っていた俺が改めて正面を向きなおすと、リスが居た。確かにコレはリスだ。俺の小学校時代に学校がリスを飼育してたから分かる。
だけど、問題は複数居たことだ。
「うおお!?」
周囲を囲まれてる中での俺の先ほどまでの発言は馬鹿にしか見えなかったかもしれない。
1…2…パッと見10匹ぐらい居るな。
そして気づいた。俺、ここまで小さいモンスターは初めて戦うかも、しかも10匹だよ?
「来るよ、修司」
有紀が声をかけると同時にリスの集団が襲い掛かってきた。
けど、今回はミストが使えるので少し余裕があるか。
ミストの展開。これは敵の命中率が微妙に落ちる。
ついでに俺の場合は更に微量ながらも体力を削れるから使える場面では重宝する。
展開しつつ、襲い掛かってくるリス(ちょっと早い)の一番手前の奴を下から切り上げるように斬劇を見舞う。
ミストで視界を奪ってるって言うのも功を成して、一発で倒せた。
あれ?余裕じゃない?
と、そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
「痛っ」
見ると切り上げた剣にもう一匹乗って俺の手に噛み付いてた。
(フレイム!)
魔術により噛み付いた一匹を焼き払う。
次の思考…の前にリスが3匹、今度は俺の足にしがみつく。
皮による防具があるから脚は割と大丈夫だが、しがみついたリス達は俺の足からすばやく上ってくる。
考える暇もなく、俺は自分の体から発するような形で軽めにブラストを打ち込む。威力上げると自分もダメージになるから咄嗟の手加減だったけども。
それにより2匹が吹き飛ぶも1匹はそのまま俺の胸を更に駆け上がるように上り、ダン!と俺の首めがけて飛びつく。
鋭利な前歯が俺の首に食い込む前に俺はギリギリウォールを発動し、リスを弾く事に成功した。勿論弾くついでに袈裟切りでそいつを倒す。
こいつらは体力は高くなくて、俺の一発で倒せる。
だが数が多い上に次の手を考える前に襲ってくるから結構焦りそうになる。
幸いミストが効いて居るのか、俺を視認できていない奴も多いみたいで、全員一度に襲い掛かってくる事はないのが救いかな。
俺を認識できた奴は一直線に俺に襲い掛かってくるので、俺は先ほどから考える事を止めて、見かけたら切る、上られたらブラストで弾き…切るという事を繰り返していた。
が、下からの攻撃ばかりに目が行き、木の枝に居た数匹の存在を忘れていた。
「っち!!」
落ちてきたリスの影を認識すると同時にアヴォイドを発動させる。
回避により俺の体への直撃は避ける事はできたが、バックラーにしがみ付かれてしまい、それを振りほどく。
「このっ!!」
俺はバックラーごと左腕を振り切って乗っかってたリスを吹き飛ばすが、腕を振り切った所で先に別のリスが木から俺の腕に降りてきて噛み付きによる攻撃を放つ。
こいつの噛み付きは痛い。小さな歯だけど鋭利な針でブスブスっとやられてるような感じだ。
先ほど噛まれた後から体調に変化はないので恐らく毒はないし、ダメージそのものも1発1発は大きくない。
ただ痛い。
この痛覚がまた厄介で、噛まれたときの痛みで一瞬動きが硬直する。
そこを他のリスが攻撃の取っ掛かりにしてる感じだ。
勿論俺は避けるが、この痛みによる硬直のせいで一撃を放つにはタイミングが遅くなってしまう。




