ビーナ
この世界、ビーナは複数の国がある。
一つはここ、女神達が最初に人を住ませた地らしい。
ダーズ王国の東西南北にも王国がある。
ただ、東は海を隔てているし、南はヒマラヤ山脈より険しいっぽい(実物見たことがないし)山々が往来を妨げている。
俺達がいるのは南端の辺境の村だから、この断崖絶壁ばかりの山脈が良く見える。うん、こりゃ越えるの厳しいわ。
一応一部だけ山脈が途切れているところがあるので、そこを通れば良いらしい。
とりあえずそんな地形が原因で周辺に国がある、と言われてもちょっとイメージしづらかったけど、地図上では「隣接している」と言ってもいいのかも。
その国々は4人の女神が中央のこのダーズ王国を作った後、それぞれが1人ずつ作った国と言われている。
なので女神崇拝でも、ここでは4神崇拝に対して、先の4国は1神崇拝となっている。
ただ宗教による弾圧はなく、どの女神を崇拝しても良いらしい。あくまで国としての崇拝先が違う、と言うだけのようだ。
これらの国はダーズ王国を盟主として同盟を組んでいる。ダーズ王国連合と言うらしい。
国境でのイザコザはあっても基本的に喧嘩両成敗で終わらせて国同士の喧嘩にはならないらしい。というかそうなったらこの王国が一番強いので周辺の王国としては「向こうから因縁吹っかけてこなければ多少の損は飲む」という考えだし、ダーズ王国としても「周辺国家は他勢力を抑える防波堤だから国々の力を弱らせることはしたくない」という考えがある。
面白いことに、魔女というのはこのダーズ王国でしか覚醒しない。
これが「魔女は女神の眷属」と言われる根拠の一つだそうで、曰く「4神の恩恵を最も受けているこの地だからこそ眷属として魔女が誕生する」ということだそうだ。
でも周辺の国で覚醒しているという話がないようだからその見解も説得力はあると思う。少なくとも統計とってダーズ王国20人他国0人なら有意差は十分にあるわけだしね。
周辺国も魔女ではないにせよ特殊な人は誕生するようだけど、魔女の不老不死性は国の安全保障面から魅力的に映るんだろう。もしかしたら行方がつかめない魔女はさっきクレスさんが言ってた通り他の国に移動したのかもしれないな。
それはそうと、4王国のほか他勢力・・・例えば帝国がある。
ハガ帝国というのがここ50年で急激に勢力を増しているらしい。
元々は遥か北方に位置する国だったが、ダンジョンが崩壊したことによる食糧難の時代に周辺の国を攻めるようになり50年前には帝国として名乗りを上げさらに周辺の小国家を取り込んでいる。
ただ、クレスさんの話だと帝国として侵略を進めている一方で、支配地域に対する横暴な振る舞いは見当たらないどころか、奴隷の売買を採用していた国を支配した後は理不尽な理由で奴隷となった人は解放するなど、弱い者に対しては保護を厚くしているそうだ。
帝国は周辺国家を取り込むことで帝国内の流通を拡大して食料や人材の偏りが出ないようにしているという意味では非常に人道的だと思う。
が、この帝国はダーズ王国連合を敵視している。
というのも連合はその周辺の中小国家出身の冒険者が王国から出る際に重税を課していたのが原因だ。
周辺国家は自国のダンジョンだけでは経済が成り立たないため、冒険者を他国に出して稼ぎを国に落としてもらう必要がある。
どこも同じ経済事情なので、結局周辺国家はダーズ王国連合の領内のダンジョンに冒険者を派遣することになるが、出国の際に大金を取られれば国に落とせる金はわずかになってしまう。
こうして不満のある国家も帝国に取り込まれたため、北と西の王国は帝国と接する形となってしまったわけだ。
東の王国・・・ユルース王国は海に囲まれた国家だがその小さな国土の割にダンジョンは多く、初心者用ダンジョンよりも中堅~上級者向けダンジョンが多いため、逆に冒険者を募集していたりする。
この国への移動は過酷なので敬遠されがちだけども。
南のほうはダンジョンの数は普通だが土地が持つ魔力が豊富なため、食料となる植物・モンスターも多く食料難とは縁がない。南は他の国の冒険者の出国に税金を課しておらず周辺国家とは穏やかな付き合いが続いているため、周りが帝国に取り込まれる様子はない・・・今のところはだけど。
主な勢力はこんな感じで、他に異世界の侵略がある。
世界はいくつもの層に重なっていて、この世界の上には俺達が住んでいた世界、この世界の下にまた別の世界があるそうだ。
女神が召喚をするのは上の世界からで、次元の魔女も俺達の世界に遊びに来てたりするそうだ。
逆に下の世界は?と思ったら女神は「汚いから無理」と言ってたらしい(神話として語り継がれてて草)。
次元の魔女も有紀には「下の世界は瘴気が酷くて、景色良くなかったから直ぐ戻ってきちゃった」と話してたらしい。異世界旅行でも直ぐ下の世界だけは避けてるんだとか。
で、侵略してくるのはその瘴気まみれの異世界かららしくて、前兆として空間が歪み、そこから瘴気が漏れ出す。どす黒いらしい・・・。
その後空間が開き、中の人やモンスターがやってくる・・・という流れだ。
人間も瘴気の中で過ごしていたので肌の色も紫かかっているけど、会話は可能らしい(ご都合主義)。
会話の結果、ただ迷っただけなら空間が閉じる前に帰すか、もし空間が閉じてしまったらこの世界で生活をしてもらう、という形を取る。
逆に悪意を持ってる場合は戦い、倒す・・・もしくは捕虜にする。
モンスターは会話不能でいきなり襲い掛かってくるため即討伐が必要になる。
これは別に王国だけの話ではないため、ビーナの世界の全ての地域で共通の問題となっている。