シカ卒業2
初っ端のパワーストライク。俺の狙いは首。
確かに巨大なツノを支える筋肉ががっしりした部位ではあるけども、それでも生物にとっての急所であることは変わりない。
奇襲で仕掛けたからには狙い通りにヒットするのも当然の流れ。…問題はどのくらいの傷を負わせられるか、だ。
モオオオ!というウシのような鳴き声を放ちながら大きく首を振る。
俺は勿論その反応は呼んでいたのでアヴォイドの効果により後方に下がる。
そして問題の傷はと…
剣先から5センチ…かな?結構刺さったようだ。
切れ味が良いのも、フォースによる効果も相まって今までで一番ダメージが通ってるな!
シカも戦闘状態になっているが、初撃はタックルで決まってる。…というかタックルしてくるように俺が距離を取り誘導したんだけどね。
このバックラーも硬く、ちょっとのことでは壊れることは無い。
だが、受けきるのは馬鹿だ。どれだけ盾が丈夫でも俺が丈夫じゃないからな。
ダン!とシカが大きく跳ねてくる。
アヴォイドという魔法で俺はこれによる回避を何度もやって来たので、今回も活用させてもらう。
突進に合わせてヒュっと上方に回避する。
そのすれ違い様、無防備な背中に一発入れる。
このアヴォイドは避ける速度以上の速度の攻撃なんかはかわしきれない事があるものの、避けられる攻撃はこうやって逆に攻撃に転じることが出来るのが俺の気に入ってる部分だ。
斬りつけるように横薙ぎに払った一撃だったが、今回はダメージあんまり無かったようだ。
こいつは斬撃に対して強いんだよな…。
上空を飛んでいた俺が着地をすると同時に、シカも突進の着地をする。
「あ…」
この位置はちょっとマズい。即直感し、盾を掲げる。
そしてこの直感が俺を助けてくれた。
シカの後脚が伸びて、バックラーに当たり、ゴン!という重い音と共に俺は吹っ飛ぶ。
「っぐ!」
ガードしたおかげでダメージ自体は大きくない。左腕が痺れてしまうが、折れなかっただけずっとマシだ。
2~3メートル吹っ飛んだところで俺は受身を取り、即起き上がる。
ウマも後に立つと危ないと言うけど、こいつも同じように後脚は危険だな。
フシュウ!という鼻息を放ちシカがまた俺に突進を仕掛けてくる。
個体差は多少あるようだけど、攻撃パターン自体はどれも同じだから、距離開ければタックルなのは分かっていたことだ。
ただ上に飛ぶのは駄目だったな…という事で横にアヴォイドによる回避を行う。
そして避け様に剣を刺すように攻撃をする。が、シカのツノは幅が広く、これを避けて攻撃しようとするとどうしても剣先しか届かないんだよな…。
しかし着実にダメージを与えてるし、今度は真後ろにならないように位置を気をつけてるから先ほどのような流れはない。
至近距離では首の力だけでツノを振り回してくるが、これを俺はバックラーでそらそう…としたけど腕が痺れてるので避ける。
一度剣をしまい、急いでカバンからポーションを取り出し、飲む。
攻撃による痺れはダメージの結果だ。ポーションによるダメージ消失で痺れも改善する。
ダメージ消失の効果は即時出てくるが痺れはダメージ回復から少しタイムラグがあり、その間は回避に専念する。
「よし…」
次は気をつけるぞ。
腕の痺れが回復したあとはツノによる攻撃をカウンターシールドで弾き、頭部がそれて首に対する防御が甘くなったところでパワーストライクを当て、離脱…。
勿論ワンパターンな攻撃ではシカも攻撃パターンを変えてくるのは当然なので、カウンターシールド以外には普通にアヴォイドで避けたり、あるいはバックラーで逸らしたりと攻撃への対処法は適度に変えて対応する。
まあ、これは俺の姿勢とか力の溜まり具合によって変更してるんだけど、向こうからしたらそんなことは知らないわけで、ランダムな対応によりシカの攻撃パターンが変わらずに済んでいた。
それでも5分近く戦闘をしてたわけだけど、逸らそうとすれば盾を経由して腕に、避けるときは十分な回避スペースが取れずに掠る事もあり、俺にも少しずつダメージが蓄積する。
だが、俺よりもシカの方が怪我が深く、ついには逃げ出すように動き始める。
勿論逃がすわけがない。
動き出しの一歩目を狙ったバインド…俺の精度だと外してしまうことがあるし、今までの戦闘状態の奴には回避されてた可能性が高いけど、今は違う。
逃避行動のときは周囲に対する感知能力が落ちてるようで、簡単にバインドが成功する。
「っしゃ!」
俺は一気に詰め寄りパワーストライクを一発見舞う。
首にヒットし、しかしシカも渾身の力でツノを振り回す。
「うおおおお」
俺もここは引き下がれない。攻撃でノックバックされてる間にバインドが解ければ次は成功しないだろう。
カウンターシールドを発動させ弾く。先ほどよりも強い一撃で俺も盾ごと後方に弾かれそうになるが…
(バインド!)
地面から黄色く光る弦が自分の体に巻きつき、吹き飛ぼうとする俺を地に繋ぎとめる。
「痛…!!!」
俺の腕は後方に吹き飛ぼうとするが体はバインドにより固定されてるため、左肩が外れるぐらいの痛みがあり、脂汗が出てくる。
だけど、ここがチャンスだ!
「ぐうううううう!」
俺は歯を食いしばり、食いしばった結果変な声でてるけどそんな事は気にせず、弾かれて露出してる首に向かってパワースラッシュを当てる。
斬撃に対して耐性があるとは言え、首には先ほどから何度も与えた刺傷がある。
そこを利用して切り込めば…!
ザン!
…まあ音は出なかったけど、そんな感じでシカの首を半分以上斬ることに成功した。
ここまで斬られたら生存できることは無いだろう。
最後にモオォォ!という断末魔を上げて倒れていった。




