表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女になった親友と異世界ダンジョン攻略  作者: りょうりちょー
第2章 王都からの冒険者生活
160/229

寝よう寝よう

「分かった、こうしよう」


先ほどからエミリーと有紀が布団の配置で揉めていたわけだけど、エミリーが一度手を止める。


「うん?」


「有紀の提案受け入れるよ」


「それが懸命だね」


「で、私は修司君の布団で眠れば良…」


「良くないよ?」


即座にエミリーの提案を有紀が即却下した。


「修司君はどう?」


エミリーが振り返り俺を見る。…止めるんだ、そのおねだり目線は俺に効く。


「うあ…えっと…」


俺はエミリーの後ろの有紀を見る。…止めるんだ、その軽蔑の目線も俺に効く。


「エミリーは有紀と寝たほうがいいんじゃないかな…なんて…」


「ええ!?」


「ふふん」


何か有紀がドヤ顔してるんだけど。まあね、俺が有紀の気持ちを汲んだわけだから、そうなるか。


「ごめんね、エミリー。修司がこう言ってるからボクの布団おいで」


有紀はいつもの布団配置よりも離してエミリー受け入れ準備を宣言する。


よし、一応話は着いた。俺としては残念な部分もあるけど、眠れなくなりそうだしなあ。






「そうだ!そう言えばね」


「寝ないのか」


布団に入るや否やエミリーがしゃべりだして、つい俺もツッコミを入れてしまった。


「修学旅行とか、向こうの世界にはあったでしょう?アレは良いものだった…夜のワクワク感、なかった?」


「ああ…それはあったな」


「あったね」


こうやって夜寝るときに何かしたくなるんだよな。


「今の私はその状態だよ」


まあ、気持ちは分かる。そして俺達もまあ眠いって訳じゃないから話に付き合おうかな。


「アラシャク王国とイスト帝国の状況と、それから王都…と言うか早乙女だっけ?君達の教師の話とあるんだけど」


「割と重要そうな話じゃないか」


寝るときにする雑談じゃねえよ…。


ちなみにアラシャク王国は北の王国の名前で、イスト帝国は更に北方にある国だ。


アラシャク王国は周辺国に対する態度が良くない、というより出国に税金を多く取るため、周辺国からの出稼ぎ冒険者が利益を国に持ち帰れないと言う問題がある。抗議しているもののアラシャク王国は取り合わず、武力をチラつかせてるとか。…まあ何にせよ周辺との関係は良くない。


一方でイスト帝国は徐々に国を吸収して大きくなっている国だ。アラシャク王国のせいで冒険者の持ち帰る稼ぎを得られず、貧困化が進む国が増えており帝国はそれらの国々に対して武力や対話を経て吸収しているようだ。


そして早乙女先生、王都で行われた晩餐会で会ったのが最後なんだけども、あれからどうしてるんだろうな。


うーん、気になる話だな。


「じゃあ、まず早乙女先生の話からしようか」


「わかった」


早乙女先生は若いながらも俺達のクラスを纏めようと頑張ってくれたけど、それを妨害した女子生徒…東原のせいで心が折れてしまっていた。


そんな彼女に声をかけたのがジョス・ジョスラン・ダース。王族なのに農業に勤しんでる好青年で、早乙女先生は彼の夢溢れる姿勢に惚れて、A組を捨てて彼の元に行った。まあ、異世界で教師として纏めなきゃいけないっていう義務があるわけじゃないし、仕方ないよな。


ただそれが発端となって今まで表面上は纏まっていたクラスがどんどん亀裂入ってしまって、今は皆バラバラになってしまったんだけどね。


「あ、まさか早乙女先生、振られた?」


有紀が心配そうに聞く。俺もちょっと思ったけど、ジョスさんはそんな感じの人でもなさそうだし、逆に早乙女先生が振った可能性もある。…まあ正解はどちらでもなかったけどね。


「いやいや、相変わらず良い関係だったよジョスとは」


エミリーが答える。俺達が出発した後も王都には滞在してたので、2人の様子は把握していたようだ。


「ジョスは相変わらず土をいじって土壌の開発研究してるよ。彼は熱心だね」


ジョスさんは手にタコが出来るぐらい地道に、熱意を持ってる。ああいう一途に進むタイプは男の俺でもカッコいいと思ってしまう。


「じゃあ、早乙女先生は何かあったのかな?」


「うん、まあ…ぶっちゃけると早乙女先生、妊娠した」


「えええ!?」


俺と有紀はガバっと布団から起き上がる。


「え?妊…?え?」


有紀がもう一度確認する。


「妊娠ね、子供を宿してるよって話」


ええ…早くない?と思ったけど、あれか。男女の付き合いってそんな感じなのか?


「そっか…」


有紀が俺よりも一歩早く落ち着きを取り戻し、考える。


「という事は早乙女先生は元の世界には戻らないかもしれないね」


え?どういうこと?


「私もそう思う」


あ、俺も理解追いついた。


帰るって事はこれから生まれる子供を捨てるって事になる。まあ出産までにすべてが終了して元の世界に戻れることになるとしても、それは帰ったら即シングルマザーとして生きる事になるし、彼女は帰ることを拒否するだろう。今の幸せを手放す選択をしたい人間はそう居ないし…。


そしてこれは「戻る」「戻らない」の選択を各個人が選択できるなら良い。全員一括で召喚されたから一括で戻るかどうか決定させられる可能性もある。


「クラスが完全に分断するかもしれないね」


「そうだな。覇者の塔の攻略も妨害が行われる可能性もあるか」


というか、元々そういう妨害は考慮に入れるべきだったのだけど、全然頭に無かった。早乙女先生が戻らないという立場なら同じ立場の人と手を組むだろうし、困ったな。


困ったと言えば、上層に行くための扉…あれは王家というか国王が代々所有する鍵が必要だけど、彼は自らの権力維持を優先しているので鍵の譲渡を渋ってるんだよな。


支配者の間で世界を自分の思うように作り変えることが出来るという事は、人間という括りの中で頂点に立つ自分より上の存在が現れる恐れもある。世界の崩壊までまだ先の話なので彼にとっては「自分が死ぬまでにおきる話ではない」訳で、次の世代…あるいはその次の世代の国王が解決すれば良いという考えてる。


「君達が考えてる内容と同じ事を私も考えてたんだけど、ただ一括で帰すって事は無いと思う。過去に召喚したヴィルヘルムの人も、女神達は留まりたい人はそのまま留まらせてるし、意思は尊重してる感じだよ」


ふむ。そうなるとクラスの中で争う可能性はないか。…ないか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ