魔法を習得する2
有紀の魔力の流れは暖かい感じで、リラックスできるような感じだ。
対してエミリーの魔力の流れは…
「ふあ…」
声が漏れた。…俺からだけどね!
エミリーの魔力の流れはピリピリと来る。例えるなら背中をなぞられるような、そんな感じだ。というかエミリーの魔力が俺の中を巡るときに背中なぞってるんじゃないのか、これ。
チラっとエミリーを見たら、目が合った…。挑発的でエロさを秘めた目で。
正直めっちゃ反応してしまう。ワザとだって分かってるのに悔しい…!
そしてチラっと有紀を見たら、目が合った…。軽蔑と怒りを秘めた目で。
はい、すみません。集中します…。
「ちぇ…」
エミリーも小声で呟いた。いやいや、有紀が悲しむのは俺の思うところじゃないし、エミリーもそうだろう?とりあえず集中しようぜ。
「はい、終わり!」
集中したらサクっと終わった。ついでに余韻に浸ることも無くエミリーが有紀から剥がされた。
「ええ…もうちょっと良くない?」
「これも節度を守るってルールの内だよ」
節度を守るからという条件で同室してるんだけど、この「節度」はなんとなく有紀主観の判断な気がする。
いや、有紀主観で境界作ってもらっても良いんだけどね。俺は。あのゾワっとした感覚をまた味わいたいなんて思ってないし、別に「もうちょっと良いだろう」なんて思ってない。俺はね。
「まあいいか。修司君、これでフォースが使えるようになったね」
「あ…っと。そうだな、使えるようになってる」
感覚で分かる、頭に中にインプットされた、文字に表せない構築式がイメージできるようになってる。が…
「あれ?」
「ん?」
「いや…」
予想してた通り、やっぱり魔力の消費が効率的な魔法への変質が行われてたようだ。そして俺以外の2人もそれは予想してた結果だったわけで特別驚きはされなかったけども。
「でも凄いね、魔術から魔法に変化するって。ボクは魔法とか使えないし、イメージが分からないや」
「まあ効率化できるなら良いことだと思う。その分他の事に魔力をまわせる…って事でもあるし」
「修司君のその特性、他のヴィルヘルムの人で見たことがないのだけど」
「あ、そうなの?」
「修司君だけの能力…なのかな?でも、同時に先天的に特殊な能力を持っているヴィルヘルムの人も見たことはないんだよ。皆女神達の元で能力を与えられてこの世界に降り立つわけで…」
うーん。普通に考えて女神達に会わずにこの世界に来ちゃったんだよな、俺は…。瘴気に溢れる世界であるヒルメルからこちらには次元の穴を通るので女神達を経由することはない。が、一方でヴィルヘルムからこちらに来るのは女神による召喚になるので女神達を経由しないというのは本当は無いんだよね。
「ある意味レアな事例だな。たぶん俺達が元々こうやって取り込む力があるのかもしれない。女神によって違う能力に上書きされて、今まで俺のような事例が出てないだけ…とかね」
俺はそう推測してみた。でも、ありえない話じゃないよな。色々取り込むような力があっても、正直女神達の付与する能力の方が強い。付与された際に俺達の持っていた脆弱な能力が消えてしまうってのはあるんじゃないだろうか?
いずれにしても、俺の持つ取り込む能力はなかなか面白いなと自分でも思うし、彼女達もそこには興味あるみたいだ。
さて…まあ明日からまた武器を手に入れて依頼をこなすわけだけども。どうしようかな。
この旅館の部屋は珍しく部屋に玄関があってそこで靴を脱ぐシステムになってるし、ついでに敷布団で寝ると言う、なんとなく和風な感じだ。…まあ畳じゃなくてオーク材によるフローリングだから中途半端さは少し感じてしまうな。
それは置いといて。
敷布団も元々2人部屋だから2個しかないんだよね。そこに3人寝るわけで。ただでさえ有紀と密着したら俺の理性どうにかなりそうなんだし、それはたまには良いけどしょっちゅうって言うのは何となく気が引けてしまうわけで…。だから布団は離してたんだけどね。
「布団くっ付ければ3人いけるいける」
エミリーが気楽に言うけど、俺は気楽じゃない。有紀は正直どれだけ一緒に居てもエロいのはエロい。勿論本人はそのつもりは全く無いしたぶんそんな事言ったら怒られてしまうけども、年頃の男には本当にヤバイ。俺がチャラかったら今頃もう冒険どころじゃなくなってるね。言い切れる。
まあ、それはでも俺のチキンハートと理性で抑えられる。抑え切れない性欲は流石に処理するけども。それでも年頃の男にしてはその頻度はかなり少ないはず。…というのも有紀が「手伝おうか」と手を貸してくれるからあんまり「処理したいんだよなー」感出してしまうのも気が引けてしまう。あ、こういう言い方はまるで有紀が痴女みたいな表現になっちゃうな。
ぶっちゃけあれから全然進展はないわけで、でもまあ焦るのもなんか違うよな。だから俺は今の距離感で良いと考えてるし、今はもっと長期の目標に沿って進むほうを優先しようと考えてるわけだ。
話が長くなったけど、今回は更にエミリーも同衾するわけだ。エミリーもまたスタイルが良い。ついでに有紀とは違って彼女はそこに自覚があり、武器として俺に迫ってくるわけで…。
ああ、チャラかったらな。チャラかったら両手に花だし、今頃めちゃくちゃ堪能してたと思う。
だけど俺はチャラくない。っていうかチキン過ぎて怖い。漫画で見るハーレムとか正直憧れてたけど実際その場面になると心臓がきつい。
「いや、エミリー…君はボクの布団で寝たらいいじゃん」
布団をくっつけようとしたエミリーに対して、有紀が布団を離しにかかる。
「いやいや、仲間って言うのは相互理解が大事だと思わない?ならもうちょっと距離を埋めるべきだと思うよ」
エミリーがくっつけようとする。
「いや、休むんだから大事なのは体力の回復でしょう?エミリーの言う距離は肉体的な距離だよね」
有紀が離そうとする。
「いやいや」
「いやいや」
何してんだこの2人は。
とは言え、俺もこの2人の結論の行方が気になってしまってるんだけども。