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女になった親友と異世界ダンジョン攻略  作者: りょうりちょー
第2章 王都からの冒険者生活
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アトス山2日目宿にて

「有紀は俺居ないほうが力出せるんじゃないか?」


つい弱音を吐いてしまう。


「いやいや、そんなことはないよ?」


明らかに有紀が慌ててフォローに入る。


奥から更に1匹出現したシカは有紀一人に倒されていた。


理由は簡単で、俺が居ないときのほうが中級魔術も普通に打ち込めるからだった。


月のダンジョンでも確かに俺が対峙していない方に居るモンスターに向かって使用してたしね。


シカのファーストアタックは全力の突進で確定しているのは昨日・今日で分かっている。


それを把握している有紀はまず突進を仕掛ける直前に泥濘(ぬかるみ)を発生させる。


魔術名はクアグマイア、そのままの意味だ。


泥濘に脚を滑らせ突進出来ずに横転したところを今度はグラビテーション…そのまま「重力」という意味を持つ魔術だが、それを放つ。


ズン!っとシカの巨体が地面にめり込む。


地面が陥没するあたり、割と威力が高いように見えるが実際にはそんな事はなく、シカのほうももがくだけでダメージはなさそうだった。


が、更にシカの頭上から岩が落ちてくる。


ロックフォール、頭上に作り出した岩を落す魔術で、ロックよりも発動が遅いものの直径3メートルの岩が頭上10メートル付近から落ちてくるわけだ。


しかも今はシカの付近には強い重力が掛かっており、これは魔術のロックフォールにも影響を与え、通常よりも更に速い速度で落下し…シカを潰し、そこで戦闘は終了した。


俺はその一連の流れ…本当にコンボのようにスラスラと発動する魔術を眺めているだけだった。


お陰で依頼をこなした後も「なんだかな」という気分になって居るわけだ。


「まあ、分かった。俺は有紀よりもまだまだ実力がないなって」


「修司、ボクも別に普段から手加減してるわけじゃないんだよ」


それも十分分かってる。


あの中級魔術の連発はどれも範囲が初級のものよりも広い。


少なくともロックフォールは通常のダンジョンだとフロアでの戦いぐらいしか使えないし、クアグマイアもグラビティも自分へ影響出るだろうからダンジョン向けという感じではない。


そうなると俺に教えてくれたような初級魔術を中心とした戦いを有紀も強いられてしまうわけで、だから今の有紀の実力だと少なくともダンジョンではソロよりは俺と共に動くほうがメリットがあるわけだ。


なので、ふて腐れても仕方ないな。


「もっと強くなりたいな」


「なんか修司にモヤモヤを残すハメになってごめんよ」


「いや、それよりも…」


いつの間にか俺自身、有紀と同じ実力があると勘違いしてたのが悪い。


モヤモヤを抱えるよりも気持ちを切り替えて俺は俺の実力を高める事をしっかり考えないといけない。


そのために必要な事を考えようと切り替える。


「俺の盾壊れちゃったんだけど、買いなおさないといけないよな」


「うん、このアトス山は鉱石も取れるから剣も盾も防具も一度全部買いなおそうよ」


「そうだな、レザーも今日ので…ほら、ココとか千切れてるんだよ」


「本当だ。修司よく無事だったね…」


俺の脇の辺りが千切れてるのをジーっと有紀が見る。


その大きな目で見られるとその部分が少し熱くなるんだけどな~。


「とりあえず加工魔石と宿泊費用分を抜いたら幾らぐらい余裕ある?」


「ええと…加工魔石をどのくらい使うかで変わるけどとりあえず最大7万コムは使えると思う」


「なるほど…」


うーん、どうしようかな。


どの道、防具は限界だし盾も買わないといけない。


剣も買いなおすとして抱き合わせで安く値切れば結構良いのが揃えられるかな?






宿で一息ついたところで、俺達は外に出る。


ここは寒さの割に陽は長く、もう夕方頃だろうけどまだ太陽が沈むまでに時間はありそう。


陽の長さは日本の夏と同じくらいだけど気温が低いのはアトス山の周辺が霧で覆われており外気が入りにくい上に(そんなに高くないけど)山頂からの冷気が流れてるからだと思う。


異世界考察、中々楽しめるな…。


旅館や冒険者ギルドがある集落から5分程歩いた所に工房が存在する。


少し集落と距離を開けてるのは作業の音が煩いからだろう。


木々が音を吸収してくれるのか、旅館のほうではあまり気にならなかった金属を打ち合う音も目前まで来ると結構響く。


「あーそりゃ距離あけるよな」


「ん?」


「いや、工房と旅館の距離が開いてるなって話さ」


「ああ、そうだね」


たまに独り言を口にする癖何とかしないとな…。


さて、工房はいくつか存在するので手前から入ろうとして有紀に止められる。


「ん?どうした有紀」


「いやね、工房の上にエンブレムが描かれてるの、見える?」


「あー、本当だ」


見ると木造やレンガ様々な創りの工房があるがどれも入り口のドアの上に紋様が描かれている。


「これは、クランのシンボルか」


「うん。だからボクらのクランの工房あるかもしれないよ」


なるほどな~。


クランメンバーとしては自社工房を利用するほうが何かと都合が良い。


例えば値引きしてもらえたり、オーダーメイドも良いものを作ってもらえたり…あるのかな。


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