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女になった親友と異世界ダンジョン攻略  作者: りょうりちょー
第2章 王都からの冒険者生活
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アトス山入り口2

さて、次の依頼はシカの狩猟なわけだけども。


「そしてシカはどこだ?」


「もうちょっと向こうに見える森があるでしょ?」


有紀が指を指す先には川を挟んで反対側に森があった。


「あの辺りに気配があるんだけど、シカじゃないかな?」


こういうオープンワールド的な場所でもちゃんと魔力の流れからモンスターの位置を把握できてるんだな。


「あ、というか俺達ここに居たら表れなかったりする?」


「うーん、分からない。ダンジョンなら襲ってくるのが基本だけど、ここはちょっと特殊だし…」


ダンジョンなら基本的にモンスターは草食型であっても冒険者を襲ってくる。


自分の領域に踏み込んだ異物を排除する、と言うような行動だ。


ところが地表で生活するようになったモンスターのうち、草食型は基本的に人間を襲わないらしい。


勿論餌となる食料がなくなれば人里まで降りてくるわけだけども、肉食や雑食型のモンスターに比べれば頻度はかなり低い。


ここはダンジョンと地表の両方の性質を持っている場所なのでモンスターの行動が分かりにくい。


有紀の記憶…は当てにならないというか…


「ごめん、ボク5合目にある洞穴をストレートに目指しちゃったからこの辺りのは分からないんだ」


うん、当てにならないんだな。


ただ5合目に向かう途中からはサル型モンスターに襲われたりしたみたいだから、全く持って襲ってこないって訳じゃないみたいだ。


「あ、確かにチラっとツノ見たいなのが見えるな」


やばい、結構でかい。


「トカゲより…マシってレベル?」


「ボクの見立てではそうなるけど…」


森から一匹シカが現れたけど、まず体がでかいのとそれに比例してツノもでかい。


「奈良のシカみたいなのを想像してたわ…」


俺は正直舐めてた。


シカは草食だから弱いイメージがあるがとんでもない話で、ツノに襲われれば怪我もするし、油断は出来ない。


と、そう考えていたのだけど…。


実際に居るのは高さ…肩高(けんこう)っていうのかな?それが2メートルぐらいある。


覇者の塔のトカゲも全長は大きかったけど、このシカは体積が全然違う。


「えっと、トカゲよりマシ?」


俺は改めて有紀に確認する。


「うん、あくまでも魔力の流れだけで判断するとそうなるはずなんだけど…」


有紀も困惑してる。


「なんだっけ…北アメリカに生息してるのにこのくらいの大きさのシカいたよな」


「あ~!ヘラジカだっけ?言われてみればそうだね」


俺の意見に有紀も賛同する。


よし、こいつはヘラジカと言おう。


ヘラジカは俺達のことは気にも留めてないような優雅な足取りで川辺まで歩いてくる。


そしてそのまま食事を始めた。


スイセンを食するヘラジカ…ってなんか俺達の世界だと見ない光景だな。


ただ、俺達が居るのに警戒しないのも変な話だ。


「俺達のことは大した奴じゃない…ってことか…」


少しずつ近づこう。


とりあえず大したことないと見くびられてるなら最初の一撃を全力で行えば良い。


3メートルのところまで近づいたところで、ヘラジカが反応した。


飛びのくように距離を取りツノをこちらに向けるように前脚を沈める。


「ええ…」


「もしかして修司、このシカ目が悪いんじゃ…」


3メートルまで気付かないって結構間抜けじゃない?


と思ったけど、なるほど…視界をツノが邪魔しているわけか。


そして匂いもこの辺りはニラの香りがほんのり漂うせいで気付かれにくかったのかもしれない。


なんにせよとりあえず、このシカの弱点はその目の悪さだということは分かった。


後は正面から相対している状態で勝てるかどうか・・・だ。




早速ミストの展開。勿論全デバフ乗せだ。


「あ、修司!」


展開しようとした矢先、有紀に止められる。


「ん?」


「ミストはこことは相性悪い…」


「ええ?」


俺達のやり取りの間、シカは…構えたまま警戒している。


向こうからは襲ってこないのは恐らく「攻撃を開始する」一定のラインがあるんだろう。


例えばこちらから攻撃を仕掛けた時や近づいた時かな?


なんていうかモンスター側も警戒するので思考や作戦に猶予があるのは良い。


スケルトンタイプは一定のルーチンで襲い掛かってくるからこういう時間は作れないことが多いんだよな。


まあ、それは良いとして…


「ミストが相性悪いってどういう事だ?」


「えっと、つまり地形の条件が良くないってことだよ」


ミストは霧を発生させる魔術で、俺が重宝している手段の一つだ。


攻撃回避のアップに加えて俺特有のデバフ効果で相手の体力を削る事が出来る。


ただ、俺は今までダンジョンでしか使ってなかったので有紀の言ってる事が即座に理解できなかった。


あれか?気温の関係かな?


と思ったけど、自然発生する霧と俺の魔術は同じものではない。


「水場が近い。小規模な水場なら影響は殆どないんだけど、ここみたいに川辺だと属性の相性が良くないんだよ」


「うん、それは初耳だ」


モンスターには特定の属性に対して防御が可能なモンスターがいる、覇者の塔のトカゲがそうだ。


それと同様に土地にも属性の力があるんだそうだ。


ダンジョンではその影響は殆ど存在しないが、このアトス山を含め地上ではこの属性による魔法・魔術への影響は大きい。


有紀が言う「水場が近い」と言うのは要するにこの付近が水の属性を持っているという事になる。


ミストは水の属性を持つ魔術(まあイメージ通りだけど)だ。


「付近に大きな属性場があると同じ属性の魔術は吸収されてしまい効果が減る、ということだね」


「なるほど」


陰陽五行説にも和比というものがある。


同じ属性同士なら相乗効果でさらに効果が高まる…と言うものだ。


その考えに基づけば本来であれば「より効果的なミストが展開できる」はずだがそういうわけではないようだ。


有紀の話を踏まえると属性の効果は「より大きなものに引かれる」という性質があるんだろう。


まるで星がより大きな重力を持つ星へ引き寄せられるように。


でも早く教えて欲しかったな。


「ごめん」と有紀がいう。


「ちなみに同程度の属性の強さなら修司の考えの通り相乗効果が期待出来るよ。今回は川辺の属性が大きすぎてミストが吸収される形になるけども。」


うーん、難しい。即理解するというのは厳しいし、この辺りは今後魔術を使いながら覚えるしかない。


さて、ここまでシカと対峙して数秒だが・・・ミストが期待できないとなると普通に戦うしかないわけで、どうしたものか・・・。

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