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女になった親友と異世界ダンジョン攻略  作者: りょうりちょー
第2章 王都からの冒険者生活
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王様と会う3

「跡継ぎ問題の話も確かにしておかねばならないな。ここから先は私が話をしよう。」

先ほどまで沈黙していた国王が話しだす。

跡継ぎ…この世界で「王」は自分が指名した者が後継者となることはない。王族から立候補者を立てて、投票により決めるというやり方だ。

勿論王族は世界中に居るが、王族としての地位は「自身が所属する国」でのみ有効なだけで、他国では「貴族」として扱われるため「この国では王になれないから隣国へ行く」というのは無理立ったりする。あくまでもここで言う王族は「ダース王国の」という話になる。

「王という地位に任期は存在していないが、10年以上就いた後は王族の過半数が『王位継承』を訴えた場合は王位を退くというルールが存在する。…他国のルールは不明だが周辺4国は概ね同じようなものだ。」

この国王は20年任期についているらしいが、最近になり王族からチラホラと退任の声が上がってきているらしい。

なるほど、その声を鎮めたいがためにエミリーを晩餐会に参加させたかったわけだ。「私が王ならエミリーが付くぞ」というならやっぱりその効果は大きい。だが…

「実際にはそう上手くいかん。後ろ盾が大きければ他国に比べ優位に立てる…という話を理解できない者も多いからな。次元の魔女様とのコネクションがある人間を排除しようとする王族の者が過半数を超えることは無いだろうが、完全に沈静させる事は出来ない。」

他にも貴族に対する牽制としても役立つか。

こういう政争もまた戦争の1つと考えれば、国王は「戦争を起こらないように抑えたい」状態だな。

帝国の脅威が近づいてる中で王位交代は避けたい訳で、安定するまでは「余計なアクションを取りたくない」というのが国王の言い分だ。

「だから、修司さんのお仲間も引き止めなかったんですね。」

「そうだ。」

「ふーん、でも王様。嘘はついてないけど、隠してることありますよね?」

「!?いや、隠してることは…」

「王様、私は『魔力の質を見る能力』があります。王様の言葉に含まれる僅かな魔力…本当だけど何かを隠そうとしている質ですね。」

翡翠の魔女…彼女はこの能力を持ってエンドレス・ソウルの人事採用を行っている。スパイを見抜き加入れさせないというのがクランにおける彼女だけの仕事だ。

「あ!分かった。」

翡翠の言葉を受けてエミリーが思いついたようだ。

「王様。鍵の話、した?」

「…。」

そう、国王は覇者の塔上層に行くための扉の鍵を持っている。そしてA組にはその話をしていない、ということだ。

「そのうちしようと思ったんですよ」と王妃が間に入るが即座に翡翠は「それは嘘ですね」と見切る。

この子強いな。


王家に伝わる鍵…王家と言うか王が代々引き継ぐアイテムだったけども、これが上層に行くために必要だという事は「ワザと言わなかった」らしい。

「言わなかった事を隠そうとした」のを翡翠に看破され、国王も素直に白状してくれた。

「勿論帝国の脅威が迫っているときに政争で揉めるわけには行かない、という気持ちは大きい。」

「それは分かります。王様はその辺りは考えて動いてますね。」

「だが、本音を言うと異邦人に王家の鍵を渡したいとは思わない。彼らが『必ず世界を修正する』という保障はないのだ。異邦人が支配者となる世界を作ることも出来てしまう。現時点では私が世界で女神様に継いで高い地位に居る以上。疑心暗鬼になってしまったのだ。」

「なるほど。…はあ。人間ですからね、権力を手放したくないと考えるのは当然でしたね。」

翡翠はがっかりした感じだけど、同時に彼女が今まで接してきたクラン員にも同じような考えの人は多かったんだろうな。

「修司…。」

小声で有紀が俺に声をかける。

「なに?」

「結局のところ、良く分からない。」

流石だぜ有紀!でも俺もわからないんだよね。

結局のところこんな感じか。

・世界の崩壊は数百年後だからあんまり慌ててない

・帝国の脅威+王位を巡る騒動が起きそうで百年単位の未来のために行動できない

・国王が自分の地位を揺るがされないようにクラスメイトにも上層に至る手段は伝えていない

グダグダじゃねえか!

クラスメイトは早乙女先生が甥にナンパされた事で亀裂が入ったし、他は全部自国と自分の保身のため。なんだこりゃ。


国王の話を聞いた後、俺達は案内された部屋に到着する。当たり前だけど有紀と俺は別室だけどね。

隣にある有紀の部屋に向かうとそこには翡翠もエミリーも居た。

「みんななんでボクの部屋に…」

「丁度真ん中の部屋で移動しやすかったからだよ」

「そうですよ、先輩。なんなら夜私と一緒に寝ます?」

2人とも当然って感じの振る舞いだ。

「それにしても話聞いても俺達理解が追いつかなかったんだけど、2人はどうだった?」

戦争と政争、恋愛…これらが絡み合った結果、クラスメイトバラバラになったし、そもそも鍵の存在は誰も知らないからもしこの先A組が集結できても覇者の塔は突破できないんだよなあ。

うーん、とエミリーも腕を組み考える。

「まあ、仕方ないか。先の話だからこそ、国王は王位を退くような事態を避けたがるのは無理もない。」

「そうですね。」

翡翠も同調する。

そして「?」のままの俺達…。

それに気づいて翡翠が解説してくれる。

「まずですね、王位の継承は反対派が一定数居ますから、それを鎮圧するだけの兵士は必要です。王族や貴族であっても結果に納得行かない人を説得しなければなりませんし。要するに内部に労力を割く必要がありますから、国力は一時的に落ちます。そんなときに帝国に攻め込まれたらどうなりますか?…というよりも、帝国(向こう)もそのタイミングを待っているようにも見えますね。」

「そうだね。今回の王様は内部の安定化にはかなり力を入れてるし、外交のバランスも良い。自分の保身に走る傾向を除けば優秀なんだけど…」

国王に会った結果分かった事は、クラスがバラバラになった理由と皆がまだ覇者の塔上層に行く手段を知らないという点だったな。

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