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ラッキーリップス

この3層の冒険者用施設を管理しているのはラッキリップスというクランだ。

クラン員が次のフロアまでの通路を守っている他、フロア内の治安維持を請け負っている。

3層に来た時にオジさんにお金を支払ったときに「マスターは宿にいる」と言われたけど、全然会ってなかった。

忘れていたわけではない、決して。


とはいえ、何の約束も取り付けずにマスターの部屋へ行くのもどうだろうな・・・。

「こういうとき、どうすればいいんだ?」

「・・・僕こういう挨拶、したことないんだ。どうすればいいんだろう・・・。」

そうだ、隣に居る○百歳の魔女はコミュニケーション能力が俺と同じ程度しかないんだった。

とりあえず、ダメ元でいいか。ノックしよう。

「はいはーい、誰かな?入っておいで。」

お、穏やかそうな男の声が返ってきた。

「失礼します、この2週間前からここに滞在してるんで、挨拶に来ました。」

割と丁寧に答えたつもりだけど、大丈夫だよな?有紀を見ると、「多分・・・」という目で見返してくる。

「ああ、ようこそ。僕はクランマスターのクレスです。どうかな?この3層、過ごしやすいかな?何か困っていることがあれば相談乗るからね。」

耳が長い、エルフ?でいいのかな、ファンタジー要素からしてエルフだと思うが、20代のお兄さんエルフがそこに居た。

背が高くて金髪のイケメンエルフ・・・これはリア充のオーラ出てますわ。

と、変に観察するのも良くないな。とりあえず二人で挨拶交わそう。

「ありがとうございます。」

って、おい、俺しか答えてないぞ、有紀お前も話せよ・・・。

さっきから俺の背中に隠れ気味なんだけど、ちゃんと挨拶しとけって。

有紀を捕まえて俺の隣に立たせる。抵抗しないところを見ると頭では分かってるけど怖気づいてたって感じか。

「よ、よろしくお願いします。」

有紀も挨拶をする。

有紀がペコリとお辞儀をした瞬間、クレスさんがめっちゃ目を見開いた。

怖くは無いんだけどビビる。

「き、君・・・もしかして『龍眼の魔女』さんかな?」

クレスさんがわなわなと震えてる。あれ?因縁の相手だったりするの?

何かやらかしたのか?と有紀を見るけど、有紀も思い当たらず「?」という顔をして首を傾げる。

子犬に異音聞かせるとこんな感じで首傾げるよな、かわいいなあ・・・。

「えっと、そうですけど・・・。」

有紀は答える。さあ、どういう反応するか・・・。

「うおおお!ついにお会いできました、魔女様~~!」

うわ、泣き出した。今度はビビらないけど怖っ。

やっぱり何かやらかしたのか?と有紀を見るけど、有紀も思い当たらずオドオドしてる。

なんていうか、昔飼ってた犬が初めて排水溝の鉄製の蓋・・・グレーチングっていうのかな、そこを越えられずにうろうろしてるときの雰囲気だこれ。

有紀、犬系女子なのか・・・。

一通り感動・・・なのかな?し終えたクレスさんが気まずそうにしてる。

「いやあ、申し訳ありません・・・。龍眼の魔女様にお会いしたかったもので。良ければ3人で食事でも一緒に摂りませんか?隣の飲食店には実はクラン用に個室がありますから、そこで話でもしながら・・・。」

多分俺はオマケだろうから、参加するかどうかは有紀に任せよう。

でも、俺もこの世界で生きてきた有紀のことは知りたい、と思うし、他人の口から聞けるチャンスなので有紀には参加をしてもらいたいな。

有紀に視線が集まるもんだからモジモジしだしてるけど「行きます。」と返答したのだった。


隣の酒場、一応「マロンサロン」って店の名前、あったらしい。

サロン・・・酒場の英語だよね?マロンって?

「ああ、ここの酒場のマスターの奥様がマロンさんなんですよ。」

クレスさんが答える。

奥さんの名前を看板に使うっていうのは良くあるのかな?

「いえいえ、ここのマスターさんの場合は、冒険者としてこの店に来たマロンさんに運命を感じて何度もプロポーズして結婚なさったんですよ。つまり店の名前が先なんです。」

ほーん・・・マスターさん、マロンという単語に拘りまくってるな。さすがのその理由はクレスさんも分からなかった。

さて、酒場の2階の廊下を通って奥に行くと2階調理室(1階にもある)があって、さらにその奥へ行くと個室があった。

ここに用事がある客なんて殆ど居ないだろうし、俺も今までここに個室があるなんて気づかなかった。

しかもここは接待を兼ねた場所らしく、基本的にマスターや役職持ち(中核メンバーかな?)しか入れないそうだ。他のメンバーは別にクラン員が利用する個室があるので、この個室は予約が無ければマスターの利用が優先される。

「すみませんね。本来ならちゃんとした応接間も用意すべきなんでしょうけども、ここはダンジョンですからね。贅沢なスペース作れないんですよ。宿にある事務所は自分の寝室も兼ねてますから人を招くような環境ではないですし。」

クレスさんが申し訳なさそうにいうけど、俺達としては応接間みたいな所は緊張して話せないし、こういった酒場の個室のほうが助かるんじゃないかな。

席につくと直ぐに飲み物が運ばれる。

「これは、僕の里で作られる酒です。結構人気あるんですよ。酒がダメじゃなければ飲んでみてください。」

お酒は飲めるので頂く。

あ・・・これどこかで嗅いだ事ある匂いだわ。なんだっけか・・・

口に含んで飲んでみて気づいた。これウメだ!

梅酒を造ってるのか、なるほど。

「うん、これは美味しい。」

有紀が口を開く。言えたじゃねえか・・・。

「ありがとうございます、魔女様。実のところ、僕がここでクランの活動をしようと思い至ったのは龍眼の魔女様がキッカケでしてね・・・。」

面識あったんだな、って思ったら有紀がやっぱり「?」な顔してる。

「ボク何かしたっけ・・・?」

「魔女様には些細なことだったと思いますよ。何せ200年前の話で、しかも一度だけの出来事ですからね。」

200年・・・このクレスさんはエルフだから、漫画とかであるように長寿なんだろうな。

「魔女様とは一度このダンジョンでお会いしております。」

お、有紀の話が少し聞けるんじゃない?

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