アルカ村ダンジョン3層2週間後
1週間で俺はイノシシ処理に余裕が出来てきた。
次は4層だな、と思っていたが・・・
「もう少し魔術を抑えてから行こう。」
と有紀にお預けされてしまった。
ウォールという魔術がある。
今まで習得した魔術よりも若干頭の中で組み立てる術式が多くて時間がかかる。
確かに重い一撃ならこっちのほうが優秀なんだけど、現時点ではハードスキンのほうが使い勝手が良いなっていう印象だ。
そして2週間後にはセーブという魔術を教わった。
これは発動直前の術をそのまま自身の中にストックさせる魔術だけど、対象が「自分自身」なので場所指定が不要な分、術式構築は簡単だ。
有紀に教わった通り、ウォール術式を構築、発動させずにウォールを組み立てると、自分の脳内に「ストック」されたイメージが伝わってくる。
「って、エフェクトないんかーい!」
俺はもっとこう、ピカッて感じのエフェクトがあるもんだと思ってたよ。
「ファンタジーでよく見る術式の魔方陣だってエフェクトだってバンバン出してたら近所迷惑でしょ?」
一応一部の魔術には魔方陣が出るらしい。
例えば光源とするためのライトって魔術は効果中はちゃんと光源に魔方陣が書かれている。
でも殆どは術式の構築は脳内でやるものだから魔方陣が出てくる様子なんてないし、発動させるときも魔方陣なんて見えないらしい。
すごい地味だな。
そしたらあれか、ボーっとしてるように見えて、実はものすごい魔術を構築中だったりするわけか。
そうそう、と有紀。
「ああ、でも脳内で構築している術式を妨害する魔術もあるんだよ。」
術式の構築というのは自分のイメージでは数式を解くような感じだ。
30桁の足し算や掛け算を脳内で計算している最中に邪魔されたらその計算は止まってしまう、そんな感じだな。
「ついでに妨害を妨害するための魔術もあるよ。」
「そこまでする必要あるのか・・・、難しいな。」
最終的にはそこも覚えてもらいたいけどね、と有紀がいうけど、いくつも同時にっていうのは無理だぞ。
「ここのダンジョン5層が終了したらボクの持つサーベルの用に触媒となるアイテムをあげるよ。」
それ触媒だったんだ。
触媒・・・魔術・魔法を手助けするアイテムだ。魔術の構築速度を上げる、とか威力を高めるとか、用途はアイテムにより異なるらしい。ちなみに有紀の場合は威力を上げる目的で用いるんだとか。
俺の場合はなんだろうな。兎も角楽しみだ。
ちなみにこのキープに封じた魔術を発動させるのは「リリース○○(○○は封じた魔術名)」というワードを声に出すか念じるかするらしい。
念じるだけでもいいなら声に出さないほうが有利じゃない?と思ったが、声に出すというのは「発声の際に生じるエネルギーを利用できるからリリースを行うときの魔力が不要」というメリットがあるらしい。
声に出せば些細な体力を、声に出さないならそれなりの魔力を・・・って感じ?
「ああそうだ、キープでストックできる魔術は3個までだよ。これはボクも例外じゃない。一部例外となる人も居るけど、とりあえず3個までって覚えておいてね。」
今のところ構築面倒なのはウォールだけだから、ウォール3回分キープしとこう。
ギルドの依頼もイノシシ、そしてアイツらの餌である草・・・の採集と二つ受けてこなす。
草というかハーブ?なのかな、水場に生えているのを採集するだけだが、何気に難しい。
というのも3層は水場は天井から落ちて出来る。
ところが、この水場はしばらくすると枯れてしまい、別の場所に水場が出来る。
一箇所ではなく数箇所に水場が出来るのが救いだが、とにかく、イノシシも俺達もこの水場を求めてダンジョン内を探すはめになる。
当然かち合えば戦闘もあるわけで、それならギルドの討伐依頼と採集は同時に受けてしまおう、という訳だ。
昔は討伐だけで精一杯だったけど、今はもうこうやって複数の依頼に手を出せるぐらいには強くなったんだろうな。
ちなみにこのハーブ、少し香りがあり、食欲を刺激して胃の動きを良くしてくれるらしく、採集の依頼はこれを食用として活用するためだ。
サラダとしても、スープの具としても役立つので需要があるんだろうな・・・
と思ったら採集してから保存できる時間が短いため基本的に3層で消化してしまうらしい。
地上まで持ち帰ることが出来るのは、有紀のように収納したり、あるいは鮮度を保つための魔法あるいは魔術を持っている人ぐらいなので地上ではあまり出回っていない。
依頼はあるものの、初心者の人らにはそんな特殊な魔法はないので彼らは受注しない。
受けるのはラッキーリップスのベテランぐらいか?
もっともこのハーブ、需要はあるものの、地上に出回っても「3層の報酬ぐらいしか」売り上げが得られないらしい。
「ぶっちゃけ高額になるなら他で代用するからいいわ。」となるレベル・・・と言うことだ。
それはそうと、早速ウォールを使ってみたけど、これはかなり効率的だ。
声に出すのは恥ずかしいので念じるパターンでストックしてあるウォールをリリースする。
タックルの場合、敵ごとそこで止めるわけで、頭から突っ込んでくるモンスターの場合はウォールでその足を止めてる隙に首筋を狙って攻撃すればクリティカルヒットで一発で落とせる。
ただ、ストックは3回分だし、ストックのし直しの手間と消費する魔力を考えると、すべての敵にやるのは無理かな。
これで防御系は「ハードスキン」「アヴォイド」「ウォール」の3種だけど、アヴォイドは殆ど使う場面がない。基本的にダンジョンの狭い通路での戦闘が多いので避けるスペースがないからだ。
それよりも上手くスペースを利用して受ける(そらす)→カウンターの戦い方が多いため、3層最初のほうは上手くさばけず、ハードスキンも使用して攻撃を受けるというパターンが多かった。
3層も慣れてきたということもあって、防御系の魔術は殆ど使う必要なくなっているな。とは言え、油断は禁物なので、魔術を使えるように集中は切らさずにダンジョンを挑むようにしている。
※現在のステータス
佐野修司
ランク:1
ステータス
筋力:20
敏捷:15
体力:10
魔力:25