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エンドレス・ソウル

クラン「エンドレス・ソウル」

翡翠の魔女がサブマスターとして所属している、60年続いているクランだ。

クランマスターは現在4代目と結構代替わりが激しい。・・・というか長寿の種族で無い限りこういうもんだろうけどね。

このクランは王都に拠点を置き活動している大手クランだが、クランメンバーの中には冒険者として登録しているがダンジョン以外の活動をメインとしている者も多く居る。

ダンジョン攻略だけでなく商業にも精通しており、幅広い活動で有名な大手クランだ。

冒険者の戦闘能力が高くないものも適任の分野を見出し、そちらで活動する事が出来るため加入希望者は後を絶たないが。

「そう、私達のクランは冒険者としてのダンジョン依頼だけではなく、王都およびその周辺都市の不動産や製造、あるいは出版も手がけています。幅広い活動範囲と、各業界毎に得られる情報の全てを集めることが出来るんです。こういうクラン、本当に珍しいんですよ?」

翡翠がクランの説明をすると、付き添いの男女4人がウンウンと頷く。

業界毎に得られる情報は実は微妙に違う。

ポーションの製造であれば材料の流通や価格の情報が流れてくるし、出版分野でも売上げの変化からどのようなジャンルが流行っているか分かる。不動産であれば人の流出入が把握できる。

これらの各業界の情報を合わせれば最終的に1つの情報を多方面から裏付ける事が出来るわけだ。

エンドレス・ソウルは確度の高い情報の入手に優れているということになる。

もっともこのように色々手広くやるようになったのは翡翠の魔女が加入してからで、彼女の「魔力の質を見る力」によって信頼の出来る人材が増えた事に起因する。

「すごいな。」

「すごいね・・・。」

俺も有紀も関心する。翡翠の魔女は対人分野では強いというのは何も戦闘の話だけじゃなくてこういう能力の使い方もあるのか・・・。

「先輩達。話はここからですよ。私達のクランから集まった情報では、もはや王都に行く理由はありません。なぜなら修司さんのご友人方、分裂してますから。」

ふぁ!?

な、なんで!?


召喚された異邦人達・・・要するに俺のクラスメイトは、最初は王都に居たらしい。

王家の保護の下、冒険者として訓練を重ねていたらしいのだが・・・

「女神の与えた加護には戦闘向けじゃないものもあるのよ。それが引き金になったというべきかもしれないね。」

「その通りです、次元の魔女様。」

戦闘出来るものと出来ないものとの間に亀裂が生じたらしい。

戦闘向けじゃない者を格下扱いするようになった一部に対して、非戦闘型のやつらが反発し、離脱。

そして戦闘型の間でも意見の対立から分裂し、最終的に全員が王家の保護を脱して各地で動いてるらしい。

「ええ・・・それいつの話なの・・・。」

「1ヶ月前ですよ。」

俺はちょっと脱力しそうになる。ダンジョン潜ってる間にそんな事があったとは。

だが・・・。

「翡翠さんは皆の場所、分かるんです?」

「どこの誰が居るかなんて名前も知らないので当然分かりません。それに分裂した事で今までよりも規模が小さくなった分、情報の変化も少ないんですよね。なのでいくつかのグループは分かりますが、少人数で動いてるのは分かりません。」

いや、それでも十分だろう!

「お、教えてもらえません?」

先ほどから俺は翡翠に敬語になっちゃってるな。でも俺や有紀にはどうやってもこんな情報手に入らなかったと思うし、頼れる人には媚びとかないとね。

「条件、ありますよ?先輩と修司さん、2人にね。」

ニヤリと翡翠が笑う。

「私達のクランに加入してください!」

「え?なんで・・・?」

情報を入手する見返りを求められるのは分かる。

しかし、加入を条件にするって意味が謎だったりする。

「ああ、勿論、所属するだけで良いです。クランメンバーと関わりあう必要も無いですし、集まりに参加する必要もありません。他のクランに所属できないというデメリットはありますが、今まで通りに自由に動いてもらって大丈夫ですし、所属してくださればご友人方の情報は定期的にお届けしますよ。」

益々謎だ。所属する恩恵があるからこの見返りなんだろうけども・・・。

「欲しいのは私達が所属している、という事実だね?」

有紀が翡翠に確認を取ると、彼女は「流石先輩!」と顔を明るくしていた。

前回ボコボコにされてから翡翠は有紀に対して今まで以上に懐くようになってしまったわけだ。有紀としてはあんまり宜しくないようで、顔少し顰めている。

「クランに魔女が所属しているというのはそれ自体が他クランへ牽制にもなりますし、貴族に私達が足元を見られないよう威圧を与える事ができます。現時点で『翡翠の魔女()』が居ますが、正直最近はランク0候補が大量に流出してますよね?更に非戦闘型も別方面に特化した人材ですからね。私達にとっては異邦人は喉から手が出るほど欲しい人材なんですよ。・・・だから、彼らの確保のために各クランが勧誘に力を入れ始めました。」

ランク0候補、というのはクラスメイトだな。確かに王都から分散した事で地方では彼らを求めようとクランが勧誘活動に必死になりそうだ。貴族もお抱えにしようと熱を上げてるだろう。

「更に近年は魔女が増加していますよね?今までよりもクランに所属する魔女やランク0が増加する可能性を踏まえると、私だけではクランの優位性は保ちきれないと思っています。そこで、『龍眼の魔女(先輩)』や『異邦人(修司さん)』をエンドレス・ソウルへ勧誘しておきたいと考えています。」

他クランとエンドレス・ソウルは翡翠の存在がその優位性を作っていたがその優位性が一気に崩れる要因が2個ある。その優位性を確保しておくために俺達2人を求めている、と言うことだな。

あとは俺と有紀はセットで他クランに入れさせないために先に所属させる、という作戦か。

なるほどね。

俺や有紀は情報収集は苦手な方、というか有紀は絶望的だから、クランに所属する事で情報収集せずとも集まってくるのは非常にありがたい。翡翠によればクラン所属による行動の制約も無いらしいし、俺としては承諾しかないな。

有紀も別にクラン自体は興味なさそうだし、寧ろ「悪い話じゃないと思う」と俺に自分の意見を伝えてくる。

決まりだな。

「所属するよ。」

「本当!?ありがとうございます!!2人とも損はさせませんよ!」

翡翠は「ひゃっほー!」とジャンプして喜んでいた。この子は魔女の中でも感情が豊かな気がする。クランと言う場所で人と触れ合ってるからだろうか?

ちなみに次元、陽光、新月は「流石に魔女多すぎるとヤバいクランって言われるから」と加入を見送ったけど、そのうち加入しそうな雰囲気もある。まあ他クランとのバランス見て考えていくんだろう。

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