初夜2
夕飯も、その後のノンビリとしたひと時も…
「あのさ有紀、いいかな?」
「ん?なんだい?」
ピッタリとくっ付いてくる有紀がいる。
普段も2人で行動してるから、それ自体は良い。問題は物理的な距離感だ。
「くっ付きすぎじゃない?」
「え?そう?このくらいでしょ、いつも。」
いやいや、普段は俺の腕に絡み付いてこないぞ。良くパーティーで男の腕に女性が腕を絡ませるアレだ。エスコートできませんけどね、俺。
「普段はもうちょっと離れてるよ。ていうか、その…ね。胸当たっちゃうだろ。」
俺にとっては悪い話ではない、正直こうやって触れられればドキドキもするさ。けど抑えが利かなくなるのが怖い。
「私は暫くしたらまた元に戻るからさ、今のうちに甘えたいんだよ。」
有紀はその銀髪を弄りながらこっちに目を向ける。この仕草ダメだろ、反則だろ…!!
チョロい俺はこれ以上言えなかった。
寝るときも引っ付いてくるからムラムラして眠れないし。当たり前だよね。
「修司、ちゃんとムラムラしてる?」
有紀が俺の腕を枕にして俺を見る。
寝るときの彼女はネグリジェ姿だけど、俺の肌に柔らかく張り付く。その感触ですら意識が飛びそうになる。
「しょ、正直やばい。」
普段の有紀がしない格好だし、寝るときは一応お互いこういうのは良くないってことで距離を取って寝てたわけだけども、こっちの有紀はガンガン攻めてくる。
「ごめんね、修司。いつも我慢させちゃってたでしょう?」
有紀の手が俺の体を撫でる。
「ま、待て有紀。」
本当に嫌なら拒否すればいいんだけど、当然拒否できない。本心から嫌がってるわけじゃないからね。
「もしかして、私のことは『そういう眼』で見るけど『そういう事』は対象じゃない、ってことかな…?」
言いながらも俺を撫でる手は徐々に胸…腹…と降りてくる。
「そんなことはない、けど俺も覚悟が…。」
「じゃあ覚悟きめちゃおう?私がこうやって表に出るのは数日だけだからね。『ヤらない後悔よりヤる後悔』だよ。」
言ってることはめちゃくちゃ変態だけど、耳元でこんな囁かれ方したら俺の下半身は酷いことになってたりする。
しかも有紀、息荒いし。
「ごめんね、変態かもしれないけど。ハア…私も我慢してきたんだよ。」
やばい、俺の貞操の危機だ!嫌ってわけじゃないんだけども。
俺の中では有紀は親友のポジだからこういう事は避けたかったんだけども、それにこのライン超えたら歯止めが利かなくなる。それを越える覚悟を俺は出来ていない。
ただ向こうはもう覚悟決めてる。据え膳食わねば…ってやつだな。
「有紀…!」
「修司…!」
抱き合い、キスをする…ところで有紀がストップをかけた。
「ごめん、修司ちょっと待っててね。」
有紀は名残惜しそうに離れて、ドアを蹴る。
「隠蔽しすぎて逆に不自然なんですけどー!」
更に蹴る。ガン、ガンと蹴ると「痛い!ちょっと待って!」と声が聞こえてきた。
有紀がドアから連れてきたのは3人だ。
次元、陽光、新月…三人の先輩魔女が俺達を覗きに来ていたわけだ。
翡翠はクランからの付き添いが居たから自由には動けないようだが、恐らく自由だったらここに加わってたんじゃないかな。
「私たちのステキな時間を見たいのは分かるけども。修司が気にしちゃうじゃん!」
有紀がよく分からない怒り方してるんだけど、俺が気にしてなかったら覗かれたままヤるのは構わなかったわけか、この子は。
「龍眼、私は男女の営みを間近で見てみたい。」
「私もです、龍眼。私達はそういう異性との接点持たないで過ごしてますから。」
陽光と新月は悪びれずに言う。
この2人は普段から異性との付き合いが無い。ブシ市において特別な存在になりすぎて誰も2人を「女として」見ることができてないのが原因らしい。
「そういうのは修司が慣れたらにしてよね。私のチャンスが潰れてしまうんだから。」
やっぱり有紀はこの人らに見られるのは構わないわけか…。
「私は仲間に入れてもらおうと思っただけだよ。ストップさせたのは申し訳ないけど。こっからは私も協力するからさ。」
エミリーはちゃっかり自分も参加させろと言い出す。いやあ、さすがに有紀とエミリー2人と混浴する勇気もないのにそれは無理でしょ…。
「エミリー。キミには…いや、キミだけじゃないけど。修司と寝させないよ、私は。」
「ええ!?な、なんで!?」
「なんでって、修司の貞操概念めちゃくちゃになってしまうじゃないか。」
「でもほら、ヴィルヘルムでも『せふれ』とか作る文化あるじゃん!」
「私の『神城有紀』の中には『せふれ』文化なんてないんだけど…。えっと、修司…あるの?」
有紀がエミリーの話を受けて俺に流してくる。
今の有紀は俺が過ごしていた世界の情報は「記憶」として持っているだけで、実際に見聞きした張本人ではない。そのためにエミリーのめちゃくちゃな話にも全部を否定することができないでいた。
まあでも確かにセフレとか作ってる奴、いたりするよね。けどそれは一部の話なんだけども。
「少なくとも作りたい人は作るだろうけど。俺は…作る気ないぞ?」
女性4人に囲まれて俺の下半身はすっかり萎縮してしまった。緊張に弱い子だからしかたないね。
「ほら、エミリー。修司はセフレ要らないってさ。だから参加できないよ。」
「ええ…。じゃあ陽光と新月と一緒にここで見てるから進めてていいよ。」
3人はソファーに腰掛けて俺達を見る。
「いや、出ていってもらいたいんだが…。」
覗き見の3魔女が帰ったあと、すっかりその気をなくした俺達。
「でも、良く考えたら私じゃなくてもう一人の有紀がヤるべきだよね。だから本番はごめんだけど、お預けさせてね。」
有紀はちょっと申し訳なさそうに、でも笑顔で言う。
「本番はってことは…?」
「それ以外ならやるよ…。ずっと我慢させ続けてたの申し訳が無いからね。」
いいのか?俺は身を委ねていいのか…。
「もう一人の有紀が悩んでいたことでもあるんだよ。」
な、なんだってー!?
「どういうこと、それ!」
「この世界に来た頃からちょこちょこ一人でヤってたでしょう?」
バレてたのか。
「しかも、ダンジョン潜ってる間ずっと自重してくれてたよね?」
そう、ベタ町のダンジョンに潜ってる間は別行動取るわけにも行かず、そういう処理が出来てなかった。特に魔族と共に生活するようになってからは尚更ね。欲求が沸かなくなるぐらい狩りを集中してたから思いのほか耐えられたけども。
「でも、ずっともう一人の有紀がそのことを悩んでるから。あの子より私から迫ったほうが、キミも少しは抵抗ないでしょう?」
「まあ…。」
…確かに俺はそう思う。いつもの有紀だと俺は「これは良くないことではないか」とブレーキをかけてたと思う、今回の状況でも。
それにいつも有紀じゃ俺に迫ってくるという事もしないしね。こっちの有紀のほうはヤらずに後悔したくないからって事で積極的になってくれてるけども。今のこの子のほうがブレーキが緩んでるのが自分でも分かる。
「修司、キミは私の頭を撫でてね。私は修司の処理しとくから。なあに、神城有紀も男だったわけだから、手ならやり方分かるよ。」
コイツは元男だ、男だ…。それを思い出したけども、やっぱり今の有紀に対して俺はブレーキをかけることは出来ないようだ。
言われるがままに有紀の銀髪を撫でてやる。
この子が元の黒髪に戻らないのは(寧ろ今の髪色が通常なんだけど)、久しぶりに主人格が戦闘をしたせいで自分の能力制御が上手くできてないらしい。でも銀髪も夜の地球からの光を受けてキラキラしてて魅力的だな、と俺は思う。
手のひらで撫でる。頭を撫でるというよりも髪の毛を撫でるような感じだけども。
「これで良いのかな?」
「いいよ、修司。…ありがとう。」
さっきのように興奮した状態ではなく、落ち着いているようなそんな声だけど、今までの声よりも柔らかいトーンになってた。
「撫でてもらうのは物心付いてからは誰からもしてもらえなかったからね。凄く落ち着く…。」
「有紀…。」
「あ、ごめんね。こっちもヤるから我慢しないでね。」
佐野修司16歳。本日初めて女の子の手というのを味わいました。