第8話:雷文
予想はついていたが案の定。
眠り込んでいたら2、3時間なんてあっという間だなと思うほど気がつけば新東京空港に飛行機が着陸していた。
伊丹に起こされて気がついたが、本当に椅子に座ったものの1分で睡魔に襲われ眠っていたようだ。
「あーごめんよ」
私は未開封のペットボトルのコーラを開けて飲みながら席を立って入国審査場へ向かった。
公式には入境審査のなるのだが、窓口はほぼ一緒だし、そもそも国際線のターミナルに香浜往復便はつける。
物騒と生い茂る香浜の高層ビル群と山々が少し懐かしく思うぐらい、空港の外は開けていた。
「そういえば、滞在はどこなんだ?審査表に書けないじゃん」
私はそう、入境審査用紙をカウンターで書いていてふと疑問に感じた。
やーやー面倒だから、大阪にある実家の住所を書いた。
「そうですよね。どこなんでしょうか。私も聞いてないですよ」
「まじっすか」
伊丹と相楽は困った顔をしていた。
すると、制服の武装した入国警備官の集団が私たちを取り囲んだ。彼らの目は鋭くあまり歓迎しているようには感じられなかった。
普通の観光客なら恐怖ものだろうが、今回の出張の背景を考えればお出迎えなのかもしれない.....
「的場警部ですね。こちらにお越しください」
そう、リーダー格であろう同世代ぐらいの警備官は、私に話しかけてきた。
「ええ。おーいみんな、行こうか〜」
私たちは警備官に連れられて、向かった先は個室でそこにはDI5のシライシはニコニコと少しばかり不気味な笑みを浮かべながら待っていた。
「まー座ってくださいよ」
「やっぱり、シライシさん関係だったの」
私はそう言って、彼の前の前に座り両側に伊丹と相楽を座らせた。
「ようこそ。東京へ」
「いやいや、挨拶はいいですよ。一応、みんな日本人ですし」
私はそう、何か言いたげなシライシの言葉をそう言って遮った。するとシライシは顔色を変えて真剣な顔をして、足元にあったトランクケースを机の上に置いた。
「マクレガーさんからこれを預かってますので、お渡ししますね」
トランクケースには香浜警察局のシンボルマークが描かれてあった。
まさかと私は感じたが、そのまさかだった。
SARとSDUは香浜警察局内でも特殊な任務を言いつけられる部隊の筆頭だが、DI6出身の私が配属されてからよく非正規の捜査任務を付与されることも多々ある。
以前は前行政長官の東京訪問の武装しての警護だったが....
トランクケースの中には自動拳銃のグロック17が三丁と弾が入った弾倉が6本入ってた。香浜警察局のバッジも私と二人のものが入っていた。
「あ、面倒なやつだ」
私はそう思わず、思ったことが口から零れ落ちた。それを聞いた伊丹は銃とバッジを手にとってこう言った。
「政府から期待されてる証拠ですよ」
伊丹はそう言って黙々と装備をつけた。きっと彼自身も以前にいたSDUで十分な程そういう任務は済ませてきているのだろう。
私はそういう彼を見て、溜息をついた。
「もー極秘ミッションは懲り懲りなの」
私はそう言いつつも、受け取った装備を確かめベルトに付けた。
「我々とともに動いていただきたい。それとこの前のホーネットX2での事件の内容の情報共有をしていただきたい。我々DI5としてもあなた方に手伝ってもらいたい事や知ってもらいたいことが多くありますので」
シライシはそう言って、上着のポケットからスマートフォンを取り出して一枚の画像を見せて来た。
「現在、この前のホーネットX2で犯行声明を挙げた相手からこのような画像が送られて来まして、名指しで的場警部を挙げてましたよ」
その画像が煮えたぎる鍋事件の時に撮った、極秘扱いとなった秘密保持レベルの高いものと言われた写真の一つで私と他の文民警察活動で集まって笑みを見せていた写真だったが、異なる点があった。
黒いばつ印と赤いばつ印が顔にかかっており、
どうやら生き延びた雷文 拓海に赤いばつ印があったので赤印と黒印とで分ける意味があるようだ。
私と佐伯警視には罰が付いてなくて横に文字が書いてあった。
「真実を知る二人...」
私はそう書いてある文面を呟くように読み上げた。
「そう、この意味がわかるのは的場さんだけなのかなと思いまして」
私は何のことを指しているのか分からず首を横に振った。シライシはそれを聞いてスマートフォンをしまい、こう言った。
「顔を見てわかったとは思いますが、赤いばつ印の方は煮えたぎる事件の生き残った雷文 拓海です。あの暴走事件以降で行方不明になっています。警察サイドは雷文 拓海が何かしらの事件との関連があるとして捜索を続けています」
「うーん、雷文さんの秘密の場所にでもいきますか?」
私はふと、雷文 拓海の呟いてた場所をふと思い出した。思い出の地というところだろう。
もしかすると、そこにいるのではと感じたからだ。
多分だが、警察サイドは誰は知らない情報だと思う、なぜなら本人談ではあるが、同僚にも上司にも家族にも言っていない好きな場所を言っていたからだ。
「彼を探すにもこの事件の真相に何か関係はあるかもしれませんね」
シライシは私のその言葉を聞いて、席から立ち上がりそう言った。
「それでは、そこに連れて行ってもらえませんか?」
「ええ、構わないですよ。もともとそういうつもりで我々を呼んだんでしょ?」
私はそう言って、大きく欠伸をした。どうやら、面倒なことに巻き込まれたこともあるだろうが、まだ昨日の寝不足が身体に負担をかけているようにも感じる。
私は記憶の限りを思い出しながら、シライシとその付き添いの自衛軍の私服警務隊員達3人と伊丹と相楽とともに3台の車の別れて乗った。
私は助手席に座り、流れる数年ぶりに見る日本本土の風景を横目に目を閉じた。
その場所は、空港からそう遠くない場所にある。都心から離れたところにある今では廃墟となった遊園地がその場所だ。
確か、そこのとあるセルウスを使った日本初のアトラクションを彼は言っていたことを思い出しそこの説明をシライシ達にした。
限りなく、雲を掴むような情報ではあるがDI5としてもこの事案は大きく見ているようで、捜査の優先順位が高い任務なんだろうとふと感じられた。
国防省国家情報局5課(DI5)は噂では良く警察の公安局との勢力争いをしてるとか何とかで、良く国防だというの特権を使っては強引な情報収集をしている輩なのか、今回もその色が良く分かる。
一緒に乗り込んでいる警務隊員がどう見ても元レンジャーか特殊部隊の引き抜きだと感じられ彼らの手にはMP7というマシンガンを持っていたし服の下に防弾チョッキも着込んでいるようだった。
元本土の警察官としてはこれが明らかに法律違反であって下手をすれば、メディアが黙ってなく世論が大騒ぎになって国民感情を逆撫でするだろうが、そこも情報統制というきついお縛りで黙らせている背景がある。
外は曇りはじめ、夕方になりかけていることもあってか空の色が明るさを失いはじめ、外の色が全体的に灰色になっていた。
少し雨が降っているのかフロントガラスに数滴雨水がつき始めた。
雨はそんなに本格的なことにはならなさそうだが、少し嫌な予感を感じ取れた。この予感が良く寝てない疲労からくる予感で済んでくれれば良いのだが....
私がそう思っていると、車は目的の場所に到着したので私はふと止まるように伝えた。
「日本初の作業用ロボットを使用した、アミューズメントパークですか....フューチャーワールドですか」
シライシはそうボロボロになって塗装が剥がれかけた看板を見てそう言った。
灰色の空の下で、ボロボロになって私が若い頃に流行ったアミューズメントパークパークは時代が止まったようにも感じられるセピア色の景色が広がっていた。
唯一、時は止まっていたが、やはり朽ちているのに気がつく。
雷文拓海。過去のあまり思い出したくない思い出の世界にまた足を踏み込んでいかなければならないのかと私は感じたが、
まだ心のどこかで燃えている警察官の端くれとしの正義感かなにかが、足を進めていった。
To be continued....