第11話:非常事態宣言
どうも。的場です。
そろそろ物語も大詰めといったところでしょう、いろいろ面倒なことが起こったところで、我々SARの東京に出張していたメンバーは全員急遽、暴走セルウスの警戒に備えて香浜に戻ったところから話をしようと思う。
「もーまったく、勘弁して欲しいよ~面倒くさい気しかしないよ」
私はそうだいぶ大きめなため息をついて、伊丹と相楽に構ってほしいオーラを全開で大きな独り言を言った。
蘭島空港のターミナルに響いた私の声はどうやら二人には届いていないようで、待合室にあるテレビに釘付けになっていた。
それもそのはず、私が言った言葉とまったく同じことを二人も感じていたからだろう。
テレビからは、香浜政府の政府報道官が会見を開いている映像が流れており。我々が聞きたくない面倒な仕事が増えることをつらつらと述べていた。
「現在の香浜政府が所有する警察力では対処できない不測の事態に備えて、非常事態宣言を発令し。香浜統治法に基づいて本土政府に正式に治安維持活動のために自衛軍の派遣を行政長官が要請」
そう、画面のニュースのテロップにはそう映し出されていた。
今回のセルウス暴走事件に関する資料がどこかで漏れていたようで、香浜で起こった我々が対処した二つのセルウス暴走事件の映像がニュースで公開されていた。
同時に自衛軍のSU-32という最新の対特殊作戦用工作機体が本土でのセルウス暴走事件で鎮圧に成功しているとのことで香浜に持ち込めれるようだ。
私の信頼できる情報筋によると、そのSU-35は最も嫌なことに依然暴走を起こしたホーネットX2と同じOSを搭載したAIを使用していると聞いており、一連のセルウス暴走事件のことを考えると、ホーネットX2と同じことが起こりえるのではと考えている。背筋が凍ってしまいそうな話だ。
なぜ、そのSU-35を香浜に持ち込むかは不明だが何か理由でもあるようだ。製造元の圧力で実戦データを蓄積させるためにわざと暴走セルウスと戦わせようとしているのか、それとも香浜政府に圧力をかけるためにわざと最新鋭の兵器を活動が返還条約で制限されている地域に特例として入れ込むつもりなのかはわからないが……
兎にも角にも、私が落ち着いた居場所として好きになった香浜を戦場にさせるように感じ、それだけは首を横に振って駄々をこねても嫌だと叫びたい。
せっかくの非正規活動部署から流れついた安息の地でもあり、楽しい仲間たちが住み愛する街を守らなければと私は感じた。
蘭島空港に続々とオリーブドラブ色の輸送機C-2が滑走路に降りていたーーーー
あまり見ない軍用機に興味津々なのか何人かの人が、その光景に目を光らせていた。中には、嫌悪感を隠せない嫌な顔をする人もいる。私はそれを冷静に見ているだけだった。
「隊長。とりあえず……戻りましょう」
いつの間にか、見入っていたのは私だけだったようで、
部下の二人はテレビ画面から完全に目線を外していた。
基地に戻ると、
デイブと見慣れない十数名の体格のいい香浜警察の制服を着た警察官たちが集まっていた。近くには大きなキャリーバッグやハードのアタッシュケースが置かれていた。
そのデイブ以外の警察官たちの目を見て私は彼らが何者なのか大体見当がついた。
「SDUですか……」
香浜警察が極秘裏に抱えている対テロ対策部隊であるSDUだ。数少ない、軍事行動がとれる部隊の一つだ。
彼らの目からは何かしらの使命感があふれ出ているように感じられた。
私と似ているがどこか違うようには感じるが……
「Captain的場。自衛軍が香浜の重要拠点の警備を行うようで、PTUがすでに郊外に押し出さる用意がされているようだ……情報が正しいかは分からないが、警察局長がこれを自衛軍のクーデターという情報をキャッチした。どうやら、意図的に暴走セルウスを発生させて、自衛軍がこの町で戦争を始めるつもりのようだ」
デイブはそう言って、大きなため息をついてこう言いつけたした。
「自衛軍は我々の基地と拠点にも警備配置を置くようで、事実上。香浜の実働の治安維持部隊は全て武装解除をすぐにでもさせられる状況になると考えている。香浜の主権を守るためにも最後の切り札でもあるSARとSDUは秘密の場所に隠れるようにと指示が出た。旧英国軍が利用していたSASの詰め所に必要とされるものと人員を待機させる予定だ」
私はそれを聞いて、相楽と伊丹にアイコンタクトを送った。すぐに事務所に向かいだした。意図は伝わったようで、大きな声といろいろ駆け回る足音が基地内に響き渡った。
「で、肝心の場所はどこなんですか?」
デイブはそれを聞いて、肩をすくめた。
「さぁー郊外としか聞いていない。私はオージーSASだから聞いてないんだ」
「あちゃー、そうなんですか」
「大丈夫、長官から地図と船の準備はされていると聞いている。準備ができ次第、SU-21二機と人員輸送バンを用意して、赤場港に向かわせてほしい。居残り組はここで本土の人間をバービーでもして迎え入れたいと思う」
デイブはそう言って、横にある大きなカバンから冷凍の牛肉の10㎏はあるだろう重たそうなブロック肉を取り出して、的場に渡した。
「私と的場はここで居残りだ、パイロットと実働部隊の一部は隠れ家へ、SDUここにいる奴らは肉焼き要因だ!ガハハ」
デイブはそう言って、大声で笑ってSDU隊員が持っていた大きな荷物から何かを探すようにカバンを選び始めた。
「あ、もう駄目だ。完全にBBQモードに入った……」
苦笑いをする屈強なSDUの隊員達を横目に私もデイブの準備を手伝い始めた。
「おーい。伊丹!剛山と相楽を残してそれ以外の実働部隊は隠れ家に向かってくれ!!」
すると建物内から了解と声が返ってきた。
「さて、カモフラージュの非番日BBQ大会の始まりだな」
――――
私はBBQを事務所で眺めながら、テレビをつけてニュースを見ながら香浜警察の無線を聞いていた。続々と迷彩服を着た自衛軍が武装をしたまま。町に入ってきているようだ。
モニター越しでも、無線から聞こえる声も。どこか普段とは違う空気が流れていた。銃声は聞こえないだが、いつなってもおかしくないそんなそんな雰囲気はないが、弾倉を付けた兵士の姿を見るとどこかバンダリでの風景を思い浮かべた。
街を行きかう人の雰囲気はいたって普通にではあったが、中には不安そうな顔をしている市民もいた。警察無線からは続々と警察署や政府の主要施設に到着する軍の人員や車の種類が伝えられていた。
少し押し問答が警察無線から聞こえてきた。どうやら、香浜の政治の中心をつかさどっている行政院のPTUの警備隊と自衛軍の間で少し言い合いがあっているようだ。事前に連絡がないだとか、ここの警備は自衛軍が単独で行うと指示を受けているだとか....
メディアでは流されたくないような内容を警察無線でやり取りをしている。
警察局長が行政院と警察本局は警備を譲るつもりはないのか、各所から自衛軍に関する無線が本部に飛ばされていた。
弾丸は飛ばないだろうが、ある意味戦争が始まっているようにも感じられる。
下っ端の隊員には何の詳しい意図はどちらにも伝えられていないのだろう。そろそろ、現場から混乱の声がいろいろで始めていたのを聞いていた横で、SAR専用の無線機から伊丹の声が聞こえてきた。
「こちら、伊丹。家に到着。操縦手の桜井。整備班4名待機完了」
「了解。無事にこっちも肉が焼けたよ」
私はそう言って、無線に返信を返した。SDUも同じく実行部隊と指揮隊を半分は隠れ家に入れているようだ。近くには水上警察隊が協力体制でいるようだ。
ところで、我々SARの基地に残ったのは支援班の4名と予備機として保管していたギリギリ稼働するUS‐17とパイロットの剛山に非番参集した整備班の4名だ。
SDUは非番参集した半分を隠れ家に送ってそれ以外はSDUの駐屯基地である場所に配置しているとデイブは言っていた。デイブが用意したSDUから引き抜いた肉焼き隊はこれから市内に潜伏して諜報活動を行うとのことらしい。
そういえば、言い損ねたが。香浜にある工作機体に関しては、自衛軍と警察で順次起動停止を確認することにしているらしい。香浜にある足の生えた固定作業を除く工作機体は約400体程度であるのですぐに止まるだろうし。AIを搭載した問題の機体は20機程度だ。
まーあまりないだろうが、お手製AIですべてをとなると大変な事態にはなるが、そうはいかないだろうと踏んでいるようだ。理由はあの調査で分かったことだが、あの暴走セルウスをAI未搭載のものを動かそうとすると特殊な工事が必要なようでそう簡単にはいかないとのことらしいからだ。
しかし、いつ自衛軍が持ち込んだSU-35が暴走するかわからないという恐怖だけは逃れられない。
対戦車兵器が対物ライフルしかない香浜警察には対抗する手段が、SU-21での迎撃でしかないからだ。
私はそんなことを考えながら、頭の中でいろいろと香浜を守るための行動と今後起こりうる事態を想定してみることにした。
手元にあるコーラと牛肉のステーキと共にではあるが……
To be continued....