とある男の独白
もともとファンタジーの作品作るつもりだったんですが、特に考えなしに冒頭書こうとしたらこうなっちゃっいました。書き直そうと思ったんですが、割と切りが良かったんでちょっと修正して詩という形で投稿することにしました。
別に俺はこれと言って大したことはできない。
どこかの剣士のように敵をすぱすぱと切れるわけでもなく、どこかの盾職のように人を守れるわけでもない、どこかの魔術師のように殲滅を行うこともなく、どこかの聖職者のように人を癒すこともなく、どこかの盗賊のように体を自由に動かせるわけでもない。
それが俺だ。比べるまでもない。
だから、俺は英雄にはなれない。そんなことはとうに知っていた。だが、英雄にはなれなくても目の前の手を掴むことなら出来る。その手を戻すことは出来なくても、きっと。その手を留まらせることなら出来る。
卑怯でもいい。矮小でもいい。希望なんて綺麗な言葉で表さなくてもいい。
どこまでも汚く惨めで見るに堪えないものであっても別にいい。
それが俺のたった一つの願いだ。それだけでよかった。俺の手を離さなければそれで。
それがどんなに嘘に塗れていても。目を逸らし続けていたとしても。
俺の想いに綺麗なものなどいらないのだから。
だけど、きっと何よりも綺麗な彼女を触ることに俺は躊躇うだろう。その手を握ることに罪悪感を覚えるだろう。その目で見られてしまえば俺はすべてを恥じるだろう。
だからせめて汚いままで俺を殺してくれ。