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007.おにい、五十鈴はもふもふして待ってるよ

 紹介する前に、ニヤリとするクロさん。

 もしかして、こいつらが、頼んでいたヤツか?


「2人ともついさっき入荷したての奴隷です。戦争難民を手厚く保護していたら、クーデターを起こされて、国を乗っ取られた東の方の島国の元お姫様とその従者です」


 クロさん、ナイスチョイス。


「こっちの娘は元お姫さまです。花嫁修業の一環で一応家事は出来るようですね。そっちは元お姫さまの従者兼奴隷です。元々は元お姫さまの従者だったんですが船を降りるときに密航がバレて暴れて船員4人を殺して犯罪奴隷になったのを、元お姫さまが奴隷落ちまでしてそのお金で船長から買いとっています。私が間に立ったんですけどね」


 説明が終わると、俺に向けて、軽くサムズアップするクロさん。

 マジぐっじょぶだぜ。

 ちょうど金策が終わった後なんて、本当にナイスタイミング。

 まるで神様がいるようだって、でも、実際、いるんだぜ。

 異世界転生の受付カウンターで見せて貰ったパンフレットの表紙を飾ってたな。

 見事な土下座姿だったけどな。


 それはさておき、元お姫さまは、長い黒髪で丈長を結っていて、緋袴の巫女装束を着ている。

 なんとなく、五十鈴に似ている。


 従者兼奴隷は、黒髪のポニーテールで、明るい青の短い馬乗り袴に、黒の軽量化した鎧を着ている。

 そして、なんとなく、俺に似ている。


 2人の様子を見ると、武器は取り上げられているが、装備を着替えをさせる時間もすらも無かったようだ。

 本当に入荷したてだな。


「ややこしいな。元お姫さまを買うと、オマケでもうひとり犯罪奴隷が付いてくるが、元お姫さまの命令しか聞かないし、食費はこっち持ちになるんだろ?」


 芝居がかったような口調そう言い放った。


「そうなりますね」


 俺のセリフに乗ってくるクロさん。


「そんな状態で、売れるのか?」


「絶対に売れませんね。このままでは大損です」


「邪魔な犯罪奴隷の従者はいないものとして、死ぬまで幽閉するしかないな」


 元お姫さまが手が出ない場所に閉じ込めて、兵糧責めで亡き者にするってことだ。


「それくらいですかね。奴隷の持ち物は奴隷の所有者のモノになりますが、今回のケースだと、私どもがそれをすると……」


 今回のケースだと、犯罪奴隷を買うために用立てたお金で買った犯罪奴隷を没収する形になる。

 無理矢理に犯罪奴隷の所有者を変更することは出来るが、それをすると、奴隷商人商売人の信用問題になってくると……。

 言葉を濁してるのは、代わりにそれをやってくれるのなら、さっきの言葉通り出来うる限りのサービスをしてくれるってことか?


「いくらになる?」


 クロさんが真剣な表情に変わった。


「例の件、拓海様は本気なんですよね?」


「もちろん、本気だ」


 俺も真剣な表情で返してやった。


「でしたら、サービスで、こちらは利益0で出させて貰って、金貨1,200枚になります」


 当然、奴隷購入の前知識は仕入れている。

 奴隷1人の販売価格の相場は金貨300枚。

 人を殺した犯罪奴隷の個人売買は、相場×(殺した人数+余罪)が普通である。

 従者の場合は余罪が0で計算されていたんだろう。

 金貨1,200枚は奴隷商が船長に渡したお金と言うことだ。


「クロさん、あんた、いい人だなぁ」


 奴隷の原価率は10分の1であることを考えれば、元お姫さまに金貨1,200枚出したのも、元からこの2人でそんなに儲ける気はなかったと思う。

 

 プラマイゼロでも、奴隷商は良かったんだろう。

 ただ、タダより怖いモンはないけどな。


「いえ、悪い人間ですよ」


「じゃあ、俺が元お姫さまを買い取った場合は、元お姫さまの所有物を渡し忘れたってことにしてくれ」


「かしこまりました」


 交渉成立だ。


「お待ちなさい」


 元お姫さまが、口を出してきた。


「口の利き方気を付けな。あんた、立場分かってんのか? 元お姫さまか知らねぇが、今は奴隷だぞ」


 さて、今度は、元お姫さまと交渉だ。


「そんなことは分かっています。でも、ここで口を挟まないと、従者のアキラが、いえ、妾の所有物の奴隷のアキラが殺されるってことですよね?」


 そのアキラって犯罪奴隷が元お姫さまの所有物になってるのは、その奴隷商のお情けだぜ。


「いいや違う。罠にかかったあんたの奴隷が勝手に野垂れ死ぬだけだ」


「そんなことはさせません」


「させないって、どうするんだ?」


「そこの奴隷商と交渉します」


「奴隷商の私がどうして奴隷の言うことを聞かなくてはいけないんですか?」


 クロさんが援護してくれた。


「と言ってるが?」


 黙り込む元お姫さま。


「ひとつ提案してやる。従者を奴隷商に売れ、そしたら、一緒に買ってやる。奴隷の奴隷なんてややこしいんだ。それも犯罪奴隷なんて、遅かれ早かれ、処分されるだけだぞ。で、どうするんだ?」


 元お姫さまと犯罪奴隷のアキラがコソコソと話し合っている。

 当然、俺も、奴隷商と悪い相談はするぞ。


 五十鈴は、狐の獣人をもふもふしている。

 あの娘も買いだな。



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