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005.おにい、五十鈴と一緒に寝ようよ……ね

『借りて借りて借りて踏み倒す異世界逃走記!?』連載中

 御鏡家一族の夜は早い。

 子供たちは躾られているのもあるが、修行の疲れで早々に寝てしまう。

 1年ちょっと前に知ったが、一族の夜が早いのは、当主が『がんがんヤろうぜ』と早々に寝室に籠もってしまうからだ。

 危険な仕事や修行もあるし、俺や五十鈴のように事故に巻き込まれて死んでしまうこともある。

 だから優秀な跡取りや子孫を残すために、たくさん子供を作る。

 これが当主の一番重要な仕事だから仕方がない。


 もちろん、俺や五十鈴もだ。

 


     コンコンコン



 夜も早々に寝ようとしたら、不意に部屋のドアが叩かれた。


「おにい、起きてる?」


 『こんな時間に誰だ?』って五十鈴しかいない。

 と言うか、2人暮らしで、他に来訪する予定のない亜空間ハウスに五十鈴以外がドアを叩いたら怖いわ。


「起きてるけどどうした?」


 少し眠そうな感じで答える。


「部屋入っていい?」


 今まで、こんなことを言ってきたことはない。

 それだけ、重要な用件があるんだろう。


「別に構わないぞ」


 ドアを開けて薄暗い俺の部屋に入ってきた五十鈴は、俺に部屋の入り口に立って、手を後ろに組んで、ピンク色のスケスケのベビードールだけを着て、目のやり場に困るような、ちょっとエッチを期待した格好ではなく、ジャージですよ、ジャージ。

 せっかくのファンタジーな異世界観と俺の期待をぶち壊しですよ。

 分かるか?

 この気持ち。

 まあ、俺が勝手に妄想しただけだけどな。


 ただ、スケスケのベビードールにファンタジーな異世界観なんて、これっぽっちも無い。


「おにい、一緒に寝ていい? 奴隷を買うから、今日で2人きりの兄妹水入らずの生活最後なんだよね?」


 自分の枕をギュッと抱き締めて、モジモジしながら、そんな魅力的な提…………あ、いや、いじらしいことを言ってきた。

 確かに、五十鈴の言う通りに、俺と五十鈴、兄妹水入らずの最後の夜だ。

 色気の欠片もないジャージを着てるってことは、本当に一緒に寝たいだけだろう。

 背格好だけを見れば、まだ甘えたい盛りの女の子だ。

 ちょっとエッチなことを考えていた、そんな俺が恥ずかしいぜ。


「分かったおいで」


 一緒に寝るくらい問題ないだろう。


「おにい、ありがとう」


 そう言うと、五十鈴は、ノレパンダイブをして来た。


 あまりの肌色しかない率に、パニック、パニック、パニック、パニック、パニックで、俺、超慌ててる。

 ぞーさんじゃなく、俺の相棒がパオォォォォォォンと凄いオーラ出してパワフル、パワフル、パワフル、パワフル、パワフル全開で、元気者になっている。

 このまま、理性が飛んで野性的になるとカモンベイビー、カモンベイビー、五十鈴を食べれる…………って、将来が楽しみ……じゃない、大変なことになっちまう。



 落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、俺、超落ち着け。



 暗い中、ゴミだらけで足の踏み場の無い部屋を歩くのは危険だ。

 その危険を回避するためにノレパンダイブをしたに決まっている。

 裸になってたのも、ゴミでジャージを汚して、洗濯物が増えないように、一時的に脱いだのではないかと推測できる。


 脳筋の俺でも落ちつけば、これくらいは考えられるんだぜ。

 

 答え合わせは、すでに布団の中に潜り込んで、俺に抱きついている、五十鈴の感触を確かめれば良いだけだ。


「五十鈴、なに裸になってるんだ?」


 ジャージの感触が全くなかった。


「えっ? 五十鈴、寝るときは、いつも裸だよ」


 『なに当たり前のこと聞いてんの?』って感じの口調だ。


「俺と一緒に寝るときも、裸で平気なのか? 俺も一応男だぞ」


 初見で50%の確率で女と間違えられるけど男なんだぜ。


「おにいは、おにいだから平気だよ。あ、でも、五十鈴、ひとりだけ、裸なのはおかしいよね。おにいも、裸になろう。ね、いいでしょ?」


「な、な、なんで裸に?」


「だから、寝るためでしょ? 他、何かあるの?」


「い、いや、ないな」


「だから、いいでしょ?」


 天然なの?

 誘ってんの?


 あぁぁぁ、寝間着用のTシャツの背中ごしに押し付けられた、ささやかな胸が……ささやかな胸が……、俺の正常な判断力を奪っていく。


「ねぇ、おにい、ただ寝るだけだから、裸でも全く問題ないよね?」

 

 やっちまった。

 ウェアラブルディスプレイの装備メニューから『全て外す』を選んじまった。

 直に当たる五十鈴の胸。

 至高の感触だ。

 乙女流の道場の跡取り息子が熱弁してた通りだった。

 五十鈴の胸なら、大きさは気にしないつもりだったけど、これはいい。

 マジいいぞ。


「じゃあ、おにい、おやすみ」


 そう言って、寝息を立てる五十鈴。


 えっ?

 本気で寝るだけだった……のか?


 慌ててた俺ってバカみたいだ。


 やっぱり、五十鈴は、まだ子供だな。

 俺と2歳しか違わないけどな。





 そして、俺は、一晩中、五十鈴に胸を押し付けられたまま、寝相の悪いと言うか、寝手癖、寝足癖の悪い五十鈴から、パワフル全開の俺の相棒を守るボディガードをしていた。


 ここ天国なの?

 それとも地獄なの?


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