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異世界にて生を紡ぐ  作者: マッチョ斎藤
3/3

意志を継いでいく

 頭の中に自分とは少し違う記憶が流れ込んでくるのが分かる。これは始まりのあの塔で感じたものと同じ、先ほどモコチルによって串刺しにされてしまったアルガの記憶が現在のアルガに流れ込み一体化していく。


 息絶えたアルガの記憶ではモコチルに出会ったまでは相違ない、その後裏路地に連れて行かれ屈託のない笑顔を向けながら気付いたら足を貫かれていた。なにやら得体の知されない力を感じられますー。と言いながら次の針がアルガの眼球を狙って飛んでくる。

 貫かれた足に力を入れるも激痛で体制を崩してしまう。それが幸いしたのか間一髪針をよけられた。


 「ーーん。ダメですよー。よけたらー」


 そう言いながら針を広いあげるモコチルを背にアルガは走り出す。しかし背後から無情にも針は飛んでくる。


 足、腕、背中、耳、至る所に針が貫通する。逃げ惑うアルガを見てモコチルは幼い顔を満面の笑顔で埋め尽くす。殺そうと思えばいつでも頭、心臓を貫けるだろうがモコチルはそれをしない。


 アルガは幼い頃に蟻の足や尻をちぎって遊んだことを思い出した。


「……因果応報ってやつかな。」


 アルガは手近なドアを掴むと中に飛び込む。


「ーー――」


 アルガは建物の中に飛び込んだはずだが外に飛び出していた。


 そして先ほどまで真後ろまで迫っていたモコチルを遠巻きに見つける。体に開いた穴を手で抑えながら


 「ーーなるほど、そういうことか……」


 モコチルを見ながらアルガは呟く、正確にはモコチルの隣にいる人物を見て悟った。


 ――となりにはアルガがいたのだ。


 これはつまり最初の塔での出来事と同じ、違う点と言えば今度は俺が意志を伝える役割だということだ


 「モコチルから早く逃げろ!!」


 叫びを上げた次の瞬間アルガの視界はブラックアウトした。


 これで終わりだとアルガは覚悟したが意識は完全には途絶えなかった。


 薄ぼんやり、それでいて確かな感覚。意識の共有、気づけばアルガの意識は重なり一つになっていた。つまりアルガは意志を繋ぐと同時に意識の共有も行っている。それ即ち死を乗り越えていると同義である。


「だーからお兄さんの力は貴重なんだーよ」


 考え込むアルガの意識が強制的に現実へと戻される。目の前には針を構えた金髪ロングの幼女。死を乗り越えたばかりだが状況は変わっていない。むしろ受け継ぐ相手が存在しない今死ねば確実にゲームオーバーだ。扉を開けばまた過去の自分の元へ行けるだろうか。――情報が不十分すぎて行動に移すことが出来ない。


 一番近い扉まで行くにも先ほどと同じように蜂の巣にされるのは目に見えているしアルガの能力の一部を目の当たりにしたモコチルが今度は最初から急所を狙ってくる可能性は大いにある


「完全に八方塞がりじゃねーか。 おい! モコチル! お前の狙いはなんだ!?」


 アルガの選んだ手段は交渉だった。動けば死ぬ可能性は飛躍的上がる。ならばまずは交渉から、選択肢から選んだというよりは消去法だ。


「ズバリあなたの能力をもらいたいんですー。限定的とは言え過去に干渉する能力、それはとんでもないですよー」


 モコチルは手を上下に振りながら大げさにアピールしてくる。


「残念だが俺はこの能力を知ったばっかだし使い方も分かりゃしねえ! ましてや能力を他人に譲る方法なんかしらねー」


 アルガは精一杯強気な態度を取るように肩を張る


「その辺は安心だよー!アタシのエナジーチャージを使えばー君の全ての力を吸い取ることが出来るのー!ただこれはー相手の承諾が無ければ発動しないんだよだよ!だーからお兄ちゃんは力と引き換えに命乞いをすればいいんだよー」


 モコチルはまるで友達と遊んでいるかのようにそう言い捨てる。


 素直に従ったところで力の受け渡しが終わった時点で用済み、なんてパターンは使い古されすぎてもはや王道、しかしアルガに他に手がないのも事実、モコチルの針投げの精度は身を持って体感している。


 そんなことを考えていると何処からか風を切る音が聞こえてきた。辺りを見回してみるが何もない、再びモコチルに向き直るとモコチルは上空を見上げて眉根を寄せている。


 徐々に大きくなる音はモコチルの視線の先から聞こえてくる。そしてアルガも上空を見上げてみる。


 空に浮かぶ巨大な白い雲に小さな点が見える。それは次第に大きくなる。


「これはまさか強キャラヒロインの予感!?」


 アルガは思わず拳を握る。


「これはまずいですー!すいませんがあなたの力はまた今度もらいにきますー、それまで死なないようがんばってくださーい!」


 そう言いモコチルはアルガのまばたきの間に姿を消していた。若干の驚きを感じつつもアルガは再び上空を見上げる、黒い点は大きさを増している。


 「あれ? 強キャラヒロインじゃない? むしろなんかドンドンでかく……」

 アルガが気付いた時にはもう遅く一気に膨張した黒い点にアルガルは飲み込まれた。




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