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異世界にて生を紡ぐ  作者: マッチョ斎藤
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始まりの町

アルガはかれこれ30分程歩き続けていた。森は徐々に開けた道へと姿を変え始めた。


「なんだかいい匂いがし始めたな」


 そうこうしてるうちに背の低い建物が密集している土地が見えてきた。例えるならRPGのオープンフィールドにポツンと佇む町といった装いだ。


 アルガはその足で町の中へと進んでいく。


 通りでは人っ子一人遭遇しなかったが町には人が溢れていた。否、人だけではない行商人のような出店のような馬車がたくさん街道に出ており往来を行き来するのは人、猫耳のある人、もはや顔が人間ではなく爬虫類のような人?まで様々だ。


 「薄々駅前から転移してた時点で頭の片隅にはあった答えなんだけど……これは異世界転生、いや異世界転移だな! 最近よく漫画にも出てきてたけど実際自分がこの立場になると……」


「ワックワクしてきたー!!」


 突然大声を上げるアルガに冷たい視線が送られるがアルガは気にもとめない。元来アルガは周りの目を気にしない質なのである。また切り替えが素早いのもアルガの特技の一つだ。


「おらおら兄ちゃんあぶねぇぞ!」


 そういってアルガの半身すれすれに馬車が通過する。正確には馬のような生き物なので馬車ではないのだろうが


「さぁ異世界ってことはさっそく探しに行かなきゃな」

「何をです?」

「何ってそりゃヒロイン的な女の子って____誰!?」


独り言に返事があると思いきやアルガの横にはいつのまにか少女がいた。


「わふぅー!っアタシはモコチルっていいますー。お兄さんがキョロキョロしてるので気になって声をかけてしまいましたー!」


 少女は見たところ小学生高学年程の背丈でクリーム色の髪の毛は癖なのかクルクル無造作にへその辺りまで伸ばされている。


「それにしてもお兄さん珍しい格好してるんですねー」


「にしても異世界なのに普通に言葉が通じるんだな……」


「話聞いてますーっ!?」


 アルガが考えを巡らせていると話を無視された形になったモコチルは頬を膨らませ腰に手を当てて不満を露わにする。


「なんか小動物みたいで可愛いな」

「____なっ!なっ!」


 モコチルは不満顔を一転、急に顔を赤くしてあたふたし始める。


 「ダメなんですー!そうやって年上の女性をからかうようなことを言ってはいけないんですよー!めっ!」


 言いながらモコチルはアルガの波乱をポコッと叩く


「年上ってどうみたって年下でしょ」


「モコチルは長人族なのです!」


「ちょーじん?何かとんでもない力を秘めてるの?」


「超人ではないのです!長人族!単純に言って長生きな人族です。こう見えてモコチルは二十歳です!」


 モコチルは再び腰に手をやり偉そうにしている


「はっ、二十歳ぃー?!それなんていう合法ロリ!?ってか精神年齢も伴ってないだろ!」


「ロリ? そこは気にしてる部分だからほっといてほしいですー」


 モコチルは唇を尖らせ抗議する。


「あぁだから無理な敬語使って大人っぽくしてるんだ!」


 アルガはポンと手を叩きモコチルの唇を指差す


「そんな冷静な分析やめてほしいですー!」


 モコチルは再び顔を赤くしクルクルな前髪で表情を隠すように俯いてしまう。


「ところでモコチルは俺の身なりを見て声をかけてくれたって話だけど他に何かようでもあったのか?」


 モコチルは頬を叩き気合いを入れ直すようにしアルガを見つめる


 「用ってほどじゃないんですけどーさっきアナタにそっくりな人をあっちの宿屋の近くで見かけたんでおかしいなーっと思いましてーしかも血だらけ」


 モコチルの話を聞きアルガは途端に冷や汗をかき始める。普段ならなにをバカな話をっと一笑に付してしまうところだが先ほどまでの高層建築物での出来事を思い返すと笑えない。


 「あっ!いましたあそこ!ほらほらっ格好まで一緒じゃないですか!」


 アルガがモコチルの指差す方向を見ると血だらけの少年が足を引きずりながら歩いてくるのが見える。当然少年の周りの人々は驚き顔で距離を置いている。


 「……モコチル……離れろ」


 血まみれの少年は苦痛に耐えるような表情でアルガを見つめそう呟く


 「お前……誰なんだよ?」


 アルガは衝撃に閉ざされた喉を無理矢理にこじ開けかすれた声を出す。その声が目の前の血まみれの少年と同じ声質であることは言うまでもない


 「いいからモコチルから早く逃げろ!!!」


 叫びが響きわたる。と同時に血まみれのアルガの額から血が吹き出して倒れる


 「なっ……」


 血まみれのアルガの額には腕の長さほどありそうな針が突き刺さっている。


 「なにしてんだよ!モコチル!!」


 アルガは声を荒げる


 「何ってお兄さんが余計なことを言うからじゃないですかー」


 先ほどまでと変わらない表情でモコチルは笑いかける。しかし温かみは微塵も感じられない冷たい笑顔で


 ____止まっていた時間が動き出すようにして辺りがざわめき出す。悲鳴をあげる者、逃げ出す者、混乱状態へと変わっていった。


 「いやー、やっぱり何か力を感じると思ったらこんなとんでない能力者だったとは儲けものですねーっ。自分で自分に忠告しにきちゃうなんて便利ですー。でもでも命をかけてまで忠告しにきてー、それでも絶望的な状況は変わらないってー。無駄死にですよねー」


 言いながらモコチルはどこから出したのか右手に先ほどアルガの額を貫いた針を2本持っている


「お前……なんだよ!俺になんの恨みがあんだよ!!」




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