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異世界復讐物語  作者: 希他勇
第一章 能力発現編
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第5話 『手のぬくもり』

見直してみると誤字と脱字が酷いです。

何度も見直しているんだけどな……もう少し細かく見ていこう。

 目を覚ますと真っ暗で何も見えなかったが、時間が経つにつれ徐々に目が慣れてきた。

 ここは……どこだ?というか寒いな……え?

 俺は自分の身体を見ると生まれたての赤ちゃんのごとくすっぽんっぽんになっており、茶色のボロボロの布が1枚あるだけだった。

 俺の服は……?”ステータスカード”もない。リーナに貰った魔道書も……

 周りを見渡すと猫耳を生やした人、顔が犬や猫そして竜っぽいのもいる。彼らの表情は暗く、泣いてる者、騒いでる者そして生きる気がなく絶望を顔に表している者がいる。彼らに共通している点といえば俺と同じ裸ということ。

 俺は彼らに触れようとするとそれを何かが妨げる。

 え……

 確かめようと立とうとするがまたもや何かが俺の行動を妨げる。

 ぺたぺたと手を張り付かせながら何があるかを確認する。

 これは……水槽?

 形を確認すると円柱のような物に入れられていることがわかった。

 何で俺はこんなとこに入れられてんだ?というか俺は何をしてたんだっけ?

 俺は……俺は……そうだ!!思い出した。俺はローズとクラインとシェインのパーティに入れてもらってたんだっけ?そういえばその3人はどこいったんだ?

 すると遠くのほうから足音がこだましていることに気がついた。

 次第にその足音は近付きその音の正体が現れた。

 巨大……というより肥満か、その肥満な身体を黒いタキシードのような物に身体を包んでいる。

 顔はむっちりと付いた肉に真ん丸の黒いサングラスにちょびひげを生やし黒いシルクハットをつけ外見から言ってしまえばマジシャンに見えなくもない。


「なあ、おい!ローズ達をしらね……え…………か」


 え……なんだよ……あれ。

 その男は手にいくつかの鎖のような物を持っており、その鎖は後ろに続いていた。

 ジャラジャラと音が鳴る先には獣人が3人重たい足取りでその男の後ろに横に並んでいた。

 いや……並ばされているというほうが適切かもしれない。

 その鎖は彼らの首に繋がっており、よく見ると何かの金属で作られた首輪のような物をつけていた。

 彼らが歩く度にジャラ、ジャラと音が響いている。

 

 すると彼らの中の1人の女の子がタキシードの男にしがみついた。

 ネコミミの女の子は泣きながらタキシードの男に必死に懇願していた。


「な、なんでもじます……なんでもします。だ、だがら、わ……だじを売らないで……」


 ……売らないで?どういうことだ?

 するとタキシードの男は振り向きネコミミの女の子と身長に合わせてしゃがみ……そして。


 パンッ!


 男はネコミミの少女にビンタし、小柄な少女は吹き飛ばされる。

 そして男は腰に持っていたムチのような物を少女に向け何度も何度も叩いた。


「お前ら!奴隷がっ!俺様の行動を!阻害するな!!お前らはただ俺のために金になってればいいんだよ!」


「おい!てめえ、やめろ!!」


 俺はいつの間にか叫んでいた。

 だが男は俺がいないかのように扱い少女を何度も何度も叩いた。

 俺は透明なガラスのような物をバンバン叩いているが壊れない。

 クソ!どうなってんだ!?

 

 次第に少女の皮膚はところどころ充血しており、気を失うまで叩かれていた。


「ち……めんどくせえな。ティル・フィン・シス・パルム」


 男の手から青白い光が少女の体を包み充血していた部分が綺麗になくなった。


「あぶねえあぶねえ、あやうく傷物にするところだった」


 男はそう言って再び歩き出した。

 気絶した少女を引きずりながら……


 ジャラ……


 その音が自分の近くで鳴ったことに気づいた。

 恐る恐る俺は自分の首を見ると彼らと同じような物が付けられていた。

 

 俺は……ローズ達に騙されたのか?

 そ、そんなわけ、ない……よな?

 きっと、きっと何かの間違いだ。そうだ、きっと仲間が助けに来てくれる。

 ……仲間?俺に仲間?

 ローズ、シェイン、クラインあいつらは何もできない俺をよくしてくれた。

 あいつらは仲間…………だ。


 リーナ……

 ふと頭によぎった彼女の名前、異世界に来て右も左も分からない俺に親切にしてくれた彼女。

 彼女なら……

 そうだ、リーナ。彼女に助けを!

 俺は”ステータスカード”を探すがあるのは汚い布一枚のみ。

 

 ははは……大丈夫、大丈夫。

 きっと、誰か助けに……


 

 微かに差し込む日の光でわかったが1日が経った。

 誰も来なかった。


 いや、黒のタキシードが粗末な飯を投げ捨てに来た。

 それは巨大なカメムシのようなもので、青ずんでいてプルプルと震え生きていた。

 こんなの食えるわけないだろ……

 俺はその虫を檻の端に寄せ、ただ時間が経つのを待った。

 大丈夫、大丈夫……助けは来る。


 2日が経った。

 今日もタキシードの男が虫を掘り込みに来ただけだった。

 俺は虫を端に寄せ、うずくまる。

 腹減ったな……またコッテリア食べたいな。それにトイレにも行きたい。

 大丈夫……明日こそ

 

 3日が経った。


「フォール!・ディス!・ドロッッー!!フォールゥ!・ディス!・ドロッッー!!フォール……・ディス!・ドロッッー!!フォール……・ディス・ドロッッー……」


 俺はやけくそに『ファイヤボール』の呪文を唱えていた。

 ここから出たい!陽の光を浴びたい!飯を食べたい!風呂に入りたい!トイレに行きたい!人に会いたい!喋りたい!そんな色んな思いが頭の中を埋め尽くしこの檻に破壊を試みたのだが……

 俺の低い”能力値”か『ファイヤーボール』の威力が足りないのが原因なのか、檻みたいな水槽に傷一つすら傷つけることができなかった。そして『ファイヤボール』を4回唱えたぐらいで声が枯れ、頭痛が始まった。

 

「フォ……ル・dぃス……ド……ロ……ッ」


 手のひらから出た火の玉は”チャージボア”の戦闘よりも小さくなっており、ピンポン玉くらいの大きさになっていた。

 火の玉はゆっくりと水槽内部に近付き……檻に衝突する前に消滅した。

 

 そして唱えた後、頭痛が酷くなり……

 床にポタリと口から一滴、何かが落ちた。

 え……なにこれ?

 それは決して健全な色ではないドス黒い血、使い捨ての油のような色をしている。

 気づいた時には一滴また一滴、そして目からも血が流れるようになった。

 

 それを見たあとほどなくして俺は気を失った。

 目を覚ましたあと我慢していた尿が垂れ流しになっていた。


 4日、5日が経った。

 流れた尿はそのまま乾き水槽の中のにおいは酷いことになっていた。

 俺は端に寄せていた飯に目が留まり手を伸ばした。

 まずい……でもおいしい。

 俺は5日分の虫をその日でぺロリと平らげた。

 ああ……早くご飯を食べたい。


 

 何日が経ったのか……少なくとも2、3週間は経っているだろうか?まあ……どうでもいいか。

 俺はただ狭い水槽の中で何をして過ごそうか考えていた。

 

 そんな時だった。

 コツ……コツと小さな足音が近付き、やがてそれは俺の檻の前に止まった。


● ● ●


 熱い……熱い、溶ける。

 空上空に浮く天敵の”太陽”は今日も私を上から見下す。

 お洒落な青のパラソル傘で陽の光を遮断するがそれでも熱いものは熱い。

 だから昼は嫌いなのよ……

 1人の少女は愚痴を言いながらある目的地にまで足を向ける。

 初めていく目的地で今後の戦闘で必要になる人員の補充をしなければならないのだ。


「せめて夜からの開店にしてくれないかしら……」


 歩くこと10分で目的地に着くことができた。

 店名は『何でも屋のジャンク』。そこは町外れのスラムのような居住区にひっそり建っていた。

 名前の通りなんでも売っている。そう何でもだ。すなわち奴隷を扱っている店でもあり店主も人間ではないため私でも買い物がしやすいのである。

 まあ……値段はぼったくりらしいが私の魅力で安くなることを願おう。


「いらっしゃいませ~」


 店に踏み入れるとタキシードを着た太った男がこちらに近付いてきた。

 下卑た笑みで笑うたびにだ液が口元に流れ出ている。

 うわ……こいつやば。見た目からもう人間じゃないことが丸分かりだ。


「探し物は便利な武器ですか?防具ですか?それとも……」

「奴隷ですか?……っておや珍しいですね。”吸血鬼(ヴァンパイア”なんて絶滅したと思ってましたよ」

「滅多なこと言わないでよ。吸い殺すわよ」

「これは気に障るのでしたら謝りましょう。さて今日は何をお探しで?」

「奴隷よ。戦力になる奴隷を一匹」

「ではこちらへどうぞ」


 タキシードの男に案内され私は店の奥へと歩いていく。

 最初は武器や防具などが置いてあったが、歩くにつれ雰囲気は暗くなる。

 タキシードの男がカーテンを通り抜けたので私も通り抜けた後から雰囲気は一変した。

 さまざまな生き物が透明な檻に入れられている。なんというか静かである。


「ではごゆっくり」


 男はそう言うとカーテンの外へと出て行った。

 ふむ……初めて見るが見てて気分のいい物ではないのは確かね……。

 奴隷と思われる生き物が檻を叩いたり泣いたりしているが物音一つたっていない。

 静かすぎる原因は多分この檻にあると思われる。

 多分檻に防音などがついているのだろう。おそらく逃亡防止の物理耐性や魔法耐性などもついている。

 

 私はとりあえず商品である奴隷を見始める。

 どうせ買うなら龍人族ドラゴン長耳族エルフがいい。

 彼らの能力は人間に比べはるかに高く、龍人族は生まれ持ったオリジナルの魔法が使え、エルフは人より数倍も知力(INT)が高いといわれている。

 さっそく子供の龍神族の奴隷を見つけたのだが……


「15金貨……高い」


 私の財布の中身は3金貨、少なくないとは思うがこれは高すぎる。まあ……龍人族だもんね。

 な、なら長耳族なら……と思い、長耳族を探す。

 そして見つけたものの値段表を見ると6金貨と書かれていた。


「……いっそのことあのデブ殺して奪ってやろうかしら」


 私の血が騒ぎ始める……とはならない。

 これ以上”敵”を増やしたくはない。

 仕方ない……龍人族や長耳族以外を探そうかな。


 私はさらに奥へと進むことにした。

 だけど奥に進むにつれて確かに値段は安くなるのだがどこか体の一部を欠損していたり、病気持ちなのだ。レアじゃない種族じゃないほど扱いが雑になっていっているのだ。

 酷い……まあ奴隷を買いに来てる私が言えたことじゃないけど。


 確かに買える……のだが私はこれが戦力になるとは到底思えないのだ。

 

「これなら私とあの子の2人で戦ったほうがいんじゃないの?」


 私はさらに奥へと進む。

 値段表を見ていくと、80銀貨、50銀貨、20銀貨、10銀貨、3銀貨と値段は下がっていっている。

 それならいっそのこと沢山買って数で勝負とか?

 いや……それがS級に通じるとは到底思えない。


「はあ……今日はもう諦めようかしら」


 そんな時だった。

 私の足を止めたもの。

 それは1人の何の変哲もないただの人間……なはずなのだが何かが違うのだ。

 その人間の目に光はなくガリガリにやせほそっている。外見から言ってしまえば生きることを諦めた、又は絶望した人間なのだが……

 周りに売られている人間と同じなはずなのに同じじゃない。そう私の直感が言っているのだ。

 まあ……ただの直感なんだけど。

 ただ中途半端な戦力の奴隷を買ったって負けるのは明白だ。ならいっそ最底辺の戦力の人間を買って私がこの子を育てる、それで勝つのは絶望的なはずなのだが……何故か頭の中で「この人間を買え」と囁くのだ。

 私の人生最大の賭け……悪くない、それで負けたら負けただ。その時はその時で潔く死のう。

 私は息を飲む。


「すみませーん!この子ください!!」


● ● ●


 1人の少女が相似の檻の目の前に止まりじぃーと見ている。

 その少女は綺麗な金髪のロングの髪の毛に140cmくらいの背丈。黒のブラウスとに白ふりふりの付いたシフォンスカートに包み込んでいる。そして印象的なのが背中に生えている小さなコウモリのような翼と血のような緋色の目。

 見た目から言ってしまえばコスプレをしている幼げな女の子にしか見えない。

 

 その少女が何か大声で叫ぶが相似の耳には聞こえない。

 するとあのタキシードの男がのっそのっそとゆっくり近付いてきた。

 

 もう……飯の時間か?

 タキシードの男は金髪の女の子と何かを話している。

 

 タキシードの男が指をパチンと鳴らした。

 すると今まで相似を閉じ込めていた水槽が地面に吸い込まれよう沈んでいった。

 だが相似はその事には気づいていない。


「本当にいいんですか?確かにかなり格安ですけど……ただの人間ですよ?それにあるクランの人から戦闘はからっきしと聞いてますが……」

「なに?私が欲しいって言った物を売ってくれるのが商人じゃないの?それともここは私みたいな魔王軍の残り物に売る物はないってこと?そんなに殺してほしいならそう言ってくれればいいのに」

「まあ……こちらは在庫処分を売るような物なので構いませんが。はあ……後悔しても知りませんよ」

「わかればいいのよ。はい1銀貨」

「まいどありがとうございます」


 何をこの人達は話しているのだ?早く俺に飯をくれよ……

 こっちはお腹すいたんだ。

 話が終わったタキシードの男は俺に飯を置いていかずどっかに行ってしまった。

 おい、俺の飯は……?

 すると金髪の少女は座り込んでいる俺の身長と同じ目線になるようしゃがみこむ。


「こんにちわ。私はエミリア、今日から私があなたの主よ。さあ、私にあなたの名前を名乗りなさい」


 この子は何を言っているんだ?この子の主?

 それに名前……名前。

 俺の……名前は……


「な……ぎぃ……の……そ……う、じ」


 枯れている声を精一杯振り絞って答えた俺の名前。そう俺はなぎのそうじ、凪乃相似だ。

 そんな小さな呟きをエミリアは聞く。


「なぎのそうじ……変わった名前ね」


 不思議そうにエミリアは俺の顔をまじまじと見る。

 しばらく見た後エミリアは立ちあがる。


「相似、行くわよ」


 行く?行くって……どこに?

 それより俺の飯は?腹へって死にそうなんだよ。


 すると呆然と見ている俺の頬を両手でわしづかみし、無理矢理顔を合わせられる。


「イ…………ァッ」

「もう!ほらッ!何ボーっとしてるの!いくわよ!」


 エミリアは俺の手を無理矢理掴み立たせる

 え……立てた?何で……?透明なガラスがあるはずなのに。

 エミリアは俺の手を引っ張り歩いてく。

 俺は数週間立つことも歩くこともできなかったので歩くスピードは赤ちゃんのハイハイくらいしか歩けなかったがエミリアは俺のスピードに合わせて歩いてくれた。


 数週間ぶりに温もりを感じた。

 そのぬくもりはどことなく彼女、リーナとよく似ていた。


 暖かい……


 エミリアに引っ張られながら俺は気がつくとポタリ、ポタリと涙を流していた。


「う…………う………ッ…」


 エミリアはそんな俺に何も言うことなく一緒に歩いてくれた。

次は3日後の6日(水)に投稿しようと思っています。

時間帯も変わらずです。

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