第4話 『弱くて愚かで馬鹿で勇敢な冒険者』
また文字数が11000……また多くなってしまいました。
本当申し訳ない。どうにかして軽量化できないものでしょうかね?
あとだんだんアクセス回数が増えて嬉しい限りです。
ミスがありました。ジェイナに誘われたとかありましたけどローズです、
誰だよ……ジェイナって
「う~ん、このクエストも駄目か……」
俺は掲示板に張られているクエストを見て一人唸っていた。
どれも俺が参加できるようなクエストはなく、誰かに手伝ってもらわないと絶対に死ぬようなクエストばっかなのだ。
まず参加できたとしても1人では絶対に行きたくない。
”~病原菌が蔓延しています~
クエスト内容 ”リターンゾンビ”を5匹討伐
予想難易度 A3
必要受託ランク B以上
報酬 10銀貨 ”
*注意事項*
何らかの病原菌を持っている可能性があり感染する可能性があります。
”~吸血鬼を殺して頂戴☆~
クエスト内容 吸血鬼の姉妹を討伐
予想難易度 S1
必要受託ランク S以上
報酬 100金貨”
~息子にプレゼントがしたい!~
クエスト内容 A級のロッドを製作
予想難易度 B1
必要受託ランク 鍛冶系の固有スキルを持ったAランク以上
報酬 50銀貨
死ぬようなことはなくてもまず俺1人ではクリアできるものがないのだ。何も討伐系だけじゃないことはわかったが、生産系の固有スキルを持たない俺には関係ない話だ。
俺みたいな最弱は誰かに手伝ってもらわないとクリアできないのだが、まあそれは無理な話だ。
理由は……
「おい、どけよ雑魚」
後ろの3人の冒険者が俺の後ろ威圧するように立っていた。
俺は今嫌われているのだ。
リーナと仲良くしたせいか俺の評判は悪いのだ。
多分リーナはこの街のアイドルみたいなものなんだろう。それを俺みたいな寄生虫がまとわり付いてたら嫌われるのも当然だろう。
これ以上問題を起こしたくないためクエスト掲示板から離れ食堂の椅子に向かう。
「はあ……金ほしい」
それもそうだ。
昨日リーナが行ったあと、もう時間も遅かっため宿屋を借りたのだが一泊20銅貨という昨日俺が報酬で手に入れた額と同じなのだ。そのためお金を全て使い果たしてしまったのだ。そのため俺は今日何も食っていない。30銅貨のコッテリアすら買えないのだ……というかコッテリア30銅貨って宿よりたけえじゃねえか。
今日クエストでお金を稼ぐことができなければ俺は今日野宿をしなければならない。
お金ってこんなに大事な物なんだな。まあ……どの世界もお金は大事なのはあたりまえか。
俺はため息混じりに自分の”ステータスカード”のある一覧を見る。
”フレンドリスト
・リーナ 現在位置 『イフェリオンの洞窟』”
”ステータスカード”には”能力値”や”固有スキル”を見るだけではなく、友達の登録やお金の貯蓄やメールなどの機能が備わっている。
そして友達の登録をした人とは居場所などがわかる。
そうー俺のフレンドリストには1人、女神がいるのだ。
さらばボッチの神様、さらばボッチ人生。
何故俺がリーナと友達なったのか、それは昨日の事である。
● ● ●
「何でも言ってくれ、でも飯奢れとかはかんべんな」
俺の全財産……20銅貨
コッテリアも買えないという、かなりやばい状況に至っているため奢りたくても奢れないのである。
「ふふ、相似さんにそんなこと頼まないよ。え、えっとね……」
リーナは猫耳フードで目線を隠しているが、頬が赤く染まっていることはわかる。
ああ、なんか子猫をめでたくなるような可愛さだな。
というかなんか俺も緊張してきたな……
「わ、私と友達登録してほしいの!」
「と、ともだちとうろく?それは何だ?」
「”ステータスカード”にフレンド機能がついててね、登録するとその人とメールや登録した人の位置がわかるようになるの」
「へえ~、便利だな」
でもそれって俺が如何わしい店に入ったらそれも表示されるってことなのか?
だとしたら相当最悪じゃないか?それなら俺友達0人でいいんだが。俺はボッチ正義を貫くぞ。
「だ、駄目かな?」
目をウルウルと上目遣いでこちらを覗いてくる。
「いいに決まってるじゃないか!」
ああ……ボッチ人生さようなら
俺の輝かしいライフこんばんわ。
俺は今後の未来の後先を考えず、友情を手に取ったのだった。
● ● ●
それにしても俺が受けれそうなクエストがないな。
あの”チャージボア”の討伐みたいなクエストはないのか?何でこんな”殺傷蟻を討伐”のようなデンジャラスなクエストしかないのか。名前からしてやばいだろ。
絶対死ぬじゃん俺……
「ねえ、きみ!」
後ろを振り返るとブラウンのバンダナを付け、黒の胸当てを付けた軽装備の女の人がいた。
その人は大らかな胸を揺らしなんと言うかエロい……いやすごい大人らしい。
どうしても目が胸に……っていかんいかん、惑わされるな!
「え、えーとどうしましたか?」
「君いまクエスト探しているんでしょ?ちょっと人手がほしいんだ。どう、悪い話じゃないでしょ?」
「俺Dランクですよ?クエストに貢献はできないぞ、それにクエスト自体受けれないんじゃないか?」
「君は何も知らないのね、パーティを組んでリーダーがクエストのランクを満たしていれば受けられるのよ。それに君に戦闘力は求めてないよ。君には荷物持ちをやってほしいだけだから」
「ぱ、ぱーてぃ?な、なんだそれは?」
「一時的に簡易的な”クラン”のような物を作れる……みたいな感じ?」
なるほど……どんなにキツイクエストでもパーティを組めば俺みたいな最弱でも受けられるのか。
良いことを聞いたがそれじゃますます寄生虫だな。
「誘ってくれるのは嬉しいのだが荷物持ちなら他にも俺より腕のいいのが空いてるのがいるんじゃないか?」
そんなことを言うと女の人は腕を組み、机の上に座る。
行儀が悪いな、躾がなっていないな。俺が調教……俺は馬鹿か!
ええい!どこかに”サキュバス”でも潜んでいるのか!そうだ!きっと俺がこんなにエロいのは”サキュバス”のせいだ。そうだ、そうに違いない。
「私は君がいいのよ。誰が良いとか関係ないの」
「それは誘っているのか?」
「かもね」
女は目を細め、にやりと口を歪めベロで口元を舐める。
その姿はさながら獲物を狙う蛇のように見えたのはきっと気のせいだろう。
● ● ●
「おーい、シェイン!先急がないでよ~」
「ローズがおせえんだろ?いそがねえと夜になっちまうぞ」
「全く……君たち二人は何でいつも喧嘩ばっかしているんだろうね。僕は相似君と一緒に話そうかな」
「はは……」
騒がしい二人を目視しながら俺たちは『ジャンカル山』を登っていた。
『ジャンカル山』は俺がいた街『オラリア』の北に位置する大きな山だ。
現在俺は女、ローズの誘いに参加しCランクのクエストへ来ていた。
ちなみにクエストはゴブリン討伐というものだ。
てっきり”ゴブリン”はDランクかと思ったが、そうでもないらしい。”ゴブリン”は単体では”チャージボア”にも劣るらしいのだが、常に”ゴブリン”は団体で行動し前衛、中衛、後衛と分かれ冒険者と似たような連携を取るそうだ。
この『ジャンカル山』はゴブリンの生息地帯になっており、初心者の狩場になっているそうだ。
稀に後衛に魔法を使う”ゴブリンメイジ”が混ざっていて、その場合クエストランクはBランクだそうだが、今回確認されたのは”ゴブリンメイジ”がいないのでCランクだそうだ。
ゴブリンが魔法使うって半端ねえな……俺でもまともに使えないのに。
「ねえねえ、相似君は将来何になりたいか決めてる?」
今俺に話しかけている男の人はクライン、青ローブに身体を包み小柄な身体をしている。
見た目からして”魔法職”だろう。
「そうだな……受付のお姉さんが君は”魔法職”が有望って言われたからな」
「いいね。僕も魔法職の”アークメイジ”だよ!やっぱり魔法は男のロマンだよね!」
「は!何がロマンだ。男は戦士職一筋だろうが!!だからクラインはひょろっひょろなんだよ」
口が悪いこの男はシェイン、大柄の男で鋼の鎧に体を包み込んでいる。まあ、見ためからして多分前衛系の職業だろうか?
「相似くん、シェインは脳筋だからあまり気にしちゃ駄目よ」
俺にクエストを勧めてくれたこの女の人はローズ、軽装備で装備が短剣なことから盗賊職なことがわかる。印象から言ってしまえばエロ……大人らしい人だ。
「ああ!!ローズ、てめえはこそこそと俺の倒してるモンスターを横取りしてるだけだろうが」
「はいはい、そうね。私はシェインがいなければ何もたおせないわ。これでいい?」
「はは、そうだ。それでいい」
シェインは上機嫌そうに「ガハハ」と笑う。
いいのかそれで、シェイン……
クラインはその光景を見慣れたようにため息をつきながら眺めている。
なんか……いいな、こういう会話。
俺もいつかこういう仲間たちと喋ったり戦ってみたいものだ。
「おい、相似!お前は俺のことどう思ってる?」
「そ、そうだな……かっこいいんじゃないか?」
「ガハハ、だろぉ!お前もクラインより俺みたいなイケメンを目指すこったなあぁ!」
シェインは後ろにさがり俺の背中を平手でバンバン叩く。
痛い!痛いから!折れる折れる!俺の貧弱な身体が悲鳴あげてるからやめて!
「な、なあシェイン……いた―――」
「相似あぶねえッ!」
シェインが俺の言葉を遮った。
「-え?」
俺めがけて飛んできた一本の弓矢をシェインが大剣を横薙ぎし、飛んできた矢を跳ね返したのだ。
すると木の上から大量の”ゴブリン”が目の前に現れる。
うわ……本当に”ゴブリン”だ。コケのような肌の色に猫背のような背中、小さな牙に原始人みたいな格好をしている。なんとまあ想像通りに出てきたな。
え……と数は1、2、3…………7,7体か。
手斧を持ったゴブリンが3体、槍が1体そして弓矢を持ったゴブリンが3体いる。
これいけるのか?こっちには4人しかいないんだぞ?実質は3人なんだが。
「シェイン助かった、ありがとう」
「気にすんな!ほら、有望な魔法職さんは後ろで待機してな!!」
俺はシェイン、ローズの後ろに下がりクラインと横に並ぶ。
ポジション的にはシェインが前衛、ローズが中衛そしてクラインが後衛である。
今回俺は荷物運びなため今回は戦闘を見学し、何か得られるものを得れたらいいなと思う。
「いくぞぉ、ゴブリンども!!『フルバウンド』」
シェインが足を大きく上げそれを地面に足を叩きつける。
すると傾斜の前にいるゴブリンたちの地面だけ揺れ、後ろの俺たちの方は揺れていない。
どうやら地面を震動させる技らしい。
”ゴブリン”はその振動のせいで倒れてる者や地面に武器を刺して倒れないよう支えている者もいる。
あれも”固有スキル”なのか……?
「頼む、ローズ!」
「あいよ!『バックスタブ』」
グギャア!!
ローズが槍を持った”ゴブリン”の背中に短剣を突き刺す。
何故槍を持ったゴブリンを狙ったかは多分前衛の中で一番リーチが長いので厄介だと思ったんだろう。
”ゴブリン”はしばらくの間、ピクピクと震えていたが数秒経った後ピタリと動きが止まった。
なんかグロイ……。
というかローズいつの間にゴブリンの後ろに回ったんだ?さっきまで俺の目の前にいたよな。
グギャ!ガアアアア!
ゴブリンの叫びと共に手斧を持った”ゴブリン”の後ろにいる弓隊が弓をローズに構えている。
「おい!ローズ、あぶねえ!」
俺はリーナに貰った魔道書の中の防御魔法を唱える準備するが……
「え、えーと、あ、あれ!?」
やべえ……詠唱忘れた!
俺は持っている魔道書を開き印の付けてあるページを開き防御魔法を唱えようとするが、クラインが本の上に手を置き俺が呪文を唱えるのを静止する。
「大丈夫、リーン・パルム!」
クラインが唱えるとローズの目の前に風の壁が現れる。まるで風のカーテンだ。飛んできた矢は風の壁により全てはじかれる。
え……あれって風魔法の初級……じゃないよな?中級だよな、詠唱短くね?
確か中級魔法って10ワード以上ってリーナから聞いたんだが……
「サンキュー、クラクラ!『スネークハット』!」
ローズは短剣を体ごと回転させ、周りにいる”ゴブリン”を目を搔きっ斬る。
前衛の”ゴブリン”は3体は目を斬られて周りをよたよたと歩いている。
手斧を持った”ゴブリン”はやけくそに武器を振っている。ローズは後ろに少し飛びその光景を見て隙がないか探っている。
「シェイン!」とローズが指示する。
「わかってる!!『バッシュ』!」
大剣で目を斬られたゴブリンを横薙ぎし手斧を持ったゴブリンは真っ二つにされる。
そして残りの弓隊の”ゴブリン”はその光景を見たせいか山の奥へ逃げていく。
「逃がさないよー。ポル・ティル・ウィンドォ!」
クラインの杖から風の刃が1体の弓隊の”ゴブリン”の背中を斬りつける。
残りの2体はそれをかわして山のほうへと逃げていった。
それをローズが追おうとするがシェインが肩に手をのせて追うのを静止する。
「身ぐるみを剥ぐぞ」
ローズ、クラインそして俺はシェインの合図によりゴブリンの身ぐるみを剥いだ。
俺は上手く剥ぐことができず取れた牙や角はボロボロになってしまった。
本当に俺役にたたないなー。
● ● ●
「今日の身ぐるみの稼ぎは2銀貨くらいか。それにクエストの報酬で5銀貨、これで7銀貨か。まあまあな稼ぎだな」
俺たちはあれから”ゴブリン”を狩ったあと、空も暗くなっていたので野宿をする事になった。
何故夜に帰らないのかと思ったのだがどうやら『ジャンカル山』の夜にはアンデット系のモンスターや初心者殺しと言われた”黒猫”というモンスターが出るためあまり歩かないほうがいいらしい。
「はい、これ相似君の分」
ローズが俺に皿のような物に白い液体を出される。
「ありがとう」
それは牛乳に似ているんだが微妙に違う。
牛乳に薬のような物を混ぜた……なんか苦いミルクのような味がする。
ま、まじい……
「なあ、ローズとシェインの使ってたあの技ってあれも”固有スキル”なのか?だとしたらかなりショックなんだが……」
俺はこの世界の仕組みが少しずつわかってきている。ようはこの世界は”固有スキルゲー”、あのリーナの固有スキルを見た時から、俺は商人になろうか考えている。
そんなことを言うとローズとクラインそしてシェインも目をぱちくりさせただ俺の顔を見ていた。
おい、そんな見ないでくれよ……照れるじゃないか。
「相似……お前本当に何も知らないんだな」
「え?」
「相似君、あれは”職業スキル”だよ」
「しょ、しょくぎょうスキル?それはなんだ?”固有スキル”とは違うのか?」
「”職業スキル”はね……えーとLvが上がると職業を選べるのは知ってる?」
俺は首を横に振る。
え……それってギルドのお姉さんが教えてくれるんじゃないの?
俺それ知らなかったんだけど。
「ある程度の強さまでいくと職業を選べて……えーと、戦士、弓使い、魔法使い、盗賊が選べるの。職業を選ぶとその職業に見合ったスキルが覚えられるの。それが”職業スキル”。まあ……魔法使いには魔法があるからスキルはないんだけどね。まあ……職にも中級とか上級とかあるけど……相似にはまだ関係ない話だ」
「なるほどな」
今日の戦闘でわかったことは、俺と違ってみんなLvが高かったことが身に染みてわかった。
それはただ単純にLvだけではなく、技術もそしてモンスターに対しての知識も。
今回、せめてじゃまにならないよう支援ぐらいやってやると思ってた、いやできると思ってたが俺はただ呆然と見ることしかできなかった。
あの戦闘が目に焼きつき頭から離れない。
特にあの連携がすごかった。
シェインは相手の動きを封じ、ローズは相手の戦力削り、クラインは2人の補助そして隙があれば攻撃。
到底俺にはまだできなさそうだ。
俺もいつか……
「みんなみたいにできるかな」
「「「え?」」」
あ……声に出てた。
「あ、その、なんだ。みんな連携とても格好良かった」
「……」
何故かみんな顔が暗い。
「俺もみんなみたいになれたらいいなって思って、な」
「ハハハ……」
ローズの笑い方に何か違和感を感じる。
どこか枯れている、そのような感じが……
「なあ……俺と”友達登録”してくれないか?また、俺とクエストに行ってくれないか?まだ俺は寄生虫だけどいつかお前らのように強くなって……肩をなら、べ、て……」
あれ、急、になんか……眠く、なっ……
相似は急な眠気に耐え切れず眠りについた。
● ● ●
メラメラと燃える焚き火の奥に1人眠る男。
彼の名前は凪乃相似、弱くて愚かで馬鹿で……勇敢な冒険者だ。
「…………その言葉は以前の私らに言ってほしかったな」
「そう……だな」
「……」
私はローズ、卑劣で、下劣で、最悪な盗賊だ。
『パペットヒューマン』
私たちの所属しているクランである。正確には所属させられているクランだが……
このクランは決して戦闘向けのクランでもなければ生産向けのクランでもない。初心者冒険者を騙して身ぐるみを剥ぎそして商人、奴隷商人に売るいわば奴隷クランだ。
このクランは初心者の身ぐるみを剥いでその買取値をクランのリーダーに渡し、その分け前の3割をそのパーティに分け与えることで循環している。
私たちのパーティのやり方はとても簡単だ。
まず1人でクエストに行けないような初心者冒険者に”クエスト”を手伝ってほしいと言う。
そしてできるだけ遠い狩場に行き日が暮れるまで狩りを続ける。そして夜には危険なモンスターがいっぱい出るといえば、ほとんどの初心者冒険者は私たちと野宿するしかない。
そして私の”固有スキル”、『眠れる羊の子』で冒険者を眠らせたところで身ぐるみを剥ぐ。
だが私たちは”クエスト”を本当に受けるわけではない。
毎回私たちが受けるクエストに行方不明者が出ればさすがにギルドの連中に目がついてしまうからだ。
だからこうして”クエスト”という囮を利用して初心者を拉致するのだ。
私達は相似の身ぐるみを物色し始める。
「う……噓!まさかとは思ったけど……ね、ねえ、この本見てよ!」
クラインが相似の本を見せてくる。
え……これって。
「これS級の『魔道書』じゃない!なんで相似がこんなもん持ってるの!?」
S級魔道書、初級から超級の魔法、そして神級と言われる全ての魔法が書かれている魔道書だ。
買うにしても100金貨はくだらないはず……
「まじかよ!?こいつってDランクだよな?」
「うん、”ステータスカード”にはDランクって書かれている」
なんで相似がこんな物を……
「そういえばこいつ、あのリーナと関わりがあるらしいぜ」
「なッ!あの”宝具使い”と!?」
”宝具使いのリーナ”突如現れた冒険者でいきなりS級認定された冒険者だ。
まさか……本当に?何かの見間違いじゃ?
「うん、フレンドリストに彼女の名前が載ってるよ」
「それなら相似がこの魔道書を持っているのか納得できるわね」
「でも、やばいんじゃないか……?そんなリーナとフレンドなんて?俺たちが相似を拉致したなんてばれたら殺されるぞ!?」
「大丈夫よ。”ステータスカード”で位置は分かるけどそこらへんに捨てておけば相似の居場所は分からなくなるし、まずリーナは相似が最後に行動した人なんてしらないんだから」
「そ、そっか。そうだよな」
「ガハハ」と活気な声でシェインは笑う。
クラインもその光景を見慣れた風に眺めている。
ああ……そんな二人の会話は何度見ても和む。
心が落ち着く。
今日の稼ぎは過去一番だろう。なんせS級魔道書だ、今回の件で私達の目標金額にかなり近付いた。
もう少し……もう少しだ。
いずれあの『パペットヒューマン』を抜けて、3人で自由に冒険するんだ。
誰にも縛られることなく、みんなで……
「さあ、奴隷商まで行くわよ」
私達は燃える焚き火を背にして山を下る。
その焚き火から出る煙は宙に舞い、そして風に飛ばされ、夜空にきらめく星の空に消え去る。
どうか。どうか、私たちは……煙のように消えませんように。
● ● ●
相似さんと別れて1日が経った。
私は今『バルーンラビット』と『オラリア』のずっと南にある『イフェリオンの洞窟』にいた。『オラリア』からここまで来るのにほとんどの冒険者が一ヶ月はかかるが、ある”固有スキル”の持ち主のおかげにより3秒足らずでここまで来ることができた。
「ゼン!右に”デビルパンサー”が3体、リオン!ゼンの補助に徹しつつ、全体に回復魔法を!”地雷虫”がそこらじゅうに沸いているから踏まないように気をつけて!」
「「了解!!」」
今、私達『バルーンラビット』は9人という最小人数のクランでできており、その中でもAランク以上の冒険者は私を含めて3人しかいないのだ。それに対し『イフェリオンの洞窟』から出てくるモンスターはランクA以上のためクランの子たちには留守番してもらっている。
目の前にいるのは”デビルパンサー”という、豹のようなモンスターなのだが悪霊に取り付かれたとか何とかで背中に悪魔の翼が生えたのを”デビルパンサー”。
通常は”パンサー”というBランクモンスターなのだが、”デビルパンサー”になることによりランクAとなる。
彼らの厄介なところは危険時”デビルパンサー”は遠吠えで仲間を呼ぶのだが、ただの”パンサー”だったら、その同系等の”パンサー”が出てくるのだが”デビルパンサー”の場合悪魔系モンスターが来てしまう厄介なモンスターだ。
だから必ずこいつらは一撃で仕留める必用がある。
”地雷虫”はその名前の通り踏むと爆発するモンスターだ。
「ティル・フィン・シス・パルム!」
リオンの回復魔法の発動により青白い光がゼンを包み込みゼンの傷をみるみる癒していく。
ゼンはデビルパンサーの方へ走っていく。
「さんきゅー、へへ!行くぜぇ!『シャドウウォーク』」
ゼンは影のように黒くなり姿を消した。洞窟は暗いためこの技はかなり有効だ。しかし”デビルパンサー”の鼻はよく効く。
常時は目で敵を視認しているが、敵が消えたり逃げたりした時の緊急時に匂いで敵を追跡するのだ。
だがゼンは追跡の時間を与えない。
「『ステルスブレイド』」
その声と共に”デビルパンサー”3体の首がポロっと落ちる。
「さすがの威力ですねーさすがゼンです」とリオンが言う。
「へっへ~だろぉ!?俺様は世界一強い盗賊だからな。リオンも回復よかったぜ!」
「いえ、これが私の仕事ですので」
ふふ……相変わらず二人は仲がいい。
私はちらりと自分の”ステータスカード”を確認する。
”フレンドリスト
・凪乃相似 現在位置 『ジャンカル山』”
”ジャンカル山”は確かゴブリンの生息地帯だったはず……でも相似さんのランクじゃ受けれないはず。
ということは……
ふふ……相似さんは浮気者だ。
私もがんばらなきゃ。
「二人とももう少し奥へ行こう、今のLVじゃあのクエストはクリアできないからね。もうちょっとだけがんばろう!」
「「おう!」」
次相似さんに会う時はもうちょっと強くなって、今度こそ今度こそ。
私が相似さんを守るんだ……
*ローズ達の”ステータスカード”は今後後公開する予定が多分ないので今公開しようと思います。*
”LV31 ROZUランク C
HP210 MP25
ATK(攻撃力) 410
DEF(防御力) 195
SPD(俊敏性) 390
INT(知力) 200
MPR(魔法防御力) 115
LUK(運) 215
《職業》盗賊
《クラン》パペットヒューマン
《固有スキル》『眠れる羊の子』(標的の運が自分の運より低い場合、見た標的の状態を”睡眠”にする。)
”LV29 KURAINランク B
HP155 MP615
ATK(攻撃力) 125
DEF(防御力) 150
SPD(俊敏性) 90
INT(知力) 715
MPR(魔法防御力) 395
LUK(運) 80
《職業》アークメイジ
《クラン》パペットヒューマン
《固有スキル》『風の子』(初級から上級の風魔法の威力を上昇+全ての風魔法の詠唱ワード-6)
”LV30 SYEINランク B
HP750 MP30
ATK(攻撃力) 365
DEF(防御力) 675
SPD(俊敏性) 105
INT(知力) 110
MPR(魔法防御力) 690
LUK(運) 110
《職業》クルセイダー
《クラン》パペットヒューマン
《固有スキル》『赤い的』(敵が高確率で自分を狙うようになる)
『戦士王の鎧』(状態異常無効+DEFとMPRが少し上昇)
次は2日後の3日(日)を出そうと思います。
あと時間帯ですができるだけ7~8時ごろにだそうと思うのでよろしくお願いします。




