第2話 『予想通りのステータスカード』
少し短いですが次がかなり長いと思います。
俺はリーナに案内をしてもらい、ついに”ステータスカード”を作成する受付まで来た。
受付は二つありその内の一つは長蛇の列ができていた。
その列の先端にはまあまあな別嬪さんがいた。
もう片方の列には人が全く並んでおらず、その列の受付のお姉さんは……別嬪なお姉さんをすごい形相で睨みつけていた。まるで仁王像だ。
並んであげようよ……。
俺は並んでない列の方へと向かおうとした。
「少し可愛いから調子に乗りやがって……あんな豚共に好かれたって嬉しくないわよ!こっちからお断りだわ。あんなやつら糞でもあげてれば充分なのよ!」
うわあ、並びたくねえ……みんなあの殺気で近づけないんじゃないか?
思わず後ずさりする凪乃相似。
すると後ろにいるリーナとぶつかる。
「どうしたの? 早くいこ」
「あ、ああ……」
やだ、この子すごい純情!
気づいて!あの滲み出る殺気に気づいて!
「あの~、すみません」
「ブツブツ……あ、リーナさん。今日はどういったご用件でしょうか?」
そしてこの変わりよう。
す、すげえ……リーナって俺の母さんなんじゃないか?
「この人の”ステータスカード”をお願いしたいのですが」
「あ、はい。”ステータスカード”の作成ですね。ではカードの作成料として50銅貨いただきます」
「はい」
リーナは財布から50銅貨を係員に出す。
俺はいったいリーナにどれだけ借りを作ればいいんだ?
もう涙すら枯れて出てこなくなったぞ。
「お母さんありがとう」
「いえい……えぇ!お母さん!?何言ってるの相似さん!」
「あら……大きいお子さんねえ。リーナさんも大きくなって……私感無量でございます」
「違うよ!何言ってるの!周りの冒険者の視線が痛いから!やめてぇ!」
ギルドの受付の姉さんも先ほどの仁王像も解けくすくすと笑っている。
あ、普通に笑えば可愛いんだな。
「では、さっそく”ステータスカード”の作成に入ろうと思います。まずあなたの名前を教えてください」
「凪乃相似だ」
そう言うと係員の人は一枚の無地のカードを取り出し机に置いた。
「凪乃相似様ですね……はい承りました。ではこちらのカードに人差し指を置いてください」
俺は言われたとおりに人差し指をカードに置く。
するとカードの端から青白い光が出始めそれが中央に集まる。
やがてそれが蜘蛛の足のように分散し無地のカードに文字を刻んでいく。
す、すげえ……
机の下にLEDでも仕込んでんのか?
夢がない凪乃相似である。
「書き込みが完了しました。えーっとどれどれ……ステータスの能力値はINT(知性)が少し高めですね。将来は魔法職が有望ですかね。あとは……え!?」
お!なんだなんだ!?なんかすごい能力でも目覚めちゃったか?
いやーやっぱり俺は何かを持ってると思ったんだよ。
ふふふ、これであのイノシシもどきに復讐ができるな。
「え、えっーと大変言いにくいのですが、相似様のですね”固有スキル”が「不明」になっておりまして……」
「「え?」」
その声は誰が発したものなのか。
リーナも目をぱちくりさせている。
「そ、その”固有スキル”ってのは……?」
「えっとですね……”固有スキル”は冒険者に必ず一つは与えられる力、それによって職業を決めたりする、いわば特殊能力みたいなものなんですが相似様の特殊能力は……その、この状態だとないと等しい状態で……」
「あ……そうすか」
よし!イノシシ様に復讐するのは止めようか!
きれいに水に流すがよし!
「ま、まあ、でも!”固有スキル”が”不明”なので発現する可能性はありますし、ランクはDランクからですけど”固有スキル”次第ではいきなりSランクって可能性もあるので、その……気を落とさないでくださいね」
「え……ランクって何ですか?」
それを聞くと受付の人は「あ、しまった!」と言うような顔をしている。
おい……これ以上俺の傷をえぐらないでほしいんだが。
「そ、そのですね……”ステータスカード”は”能力値”と”固有スキル”に見合ってランク付けされるのですが、その相似様のランクは1番低いDということです」
「ち、ちなみにランクは何があるんですか」
「低いほうからD、C、B、A、Sの5つあります」
「……」
もう何も言うまい。
係員は言い終えると逃げるように後ろへ去って行った。
机の上に置いてあるカードを見る。
”LV1 NAGINO SOUZI(凪乃相似)ランク D
HP100 MP50
ATK(攻撃力) 30
DEF(防御力) 30
SPD(俊敏性) 20
INT(知力) 50
MPR(魔法防御力) 30
LUK(運) 0
《職業》冒険者
《クラン》無所属
《固有スキル》『不明』”
これが高いのか低いのか俺には全くわからないが係員の反応を見れば平均以下っていうのが見て取れる。
まあでも初めての”ステータスカード”だ。
嬉しいか嬉しくないかって言われたら嬉しい。自分の能力をこうやってみれるのは面白い。
それに弱くたっていいじゃないか。所詮俺はラノベの主人公にはなれない。
だけどいいじゃないか。俺は危ないこともしたくないし、そんな勇気もない。
まあハーレムを作れなさそうなのは残念だけどな。
これからは俺なりのスピードでゆっくり行こう。
それに俺はまだLV1なんだ。これから強くなるかもしれん。
なんかそう考えると心が軽くなってきた。
「よし!」
後ろを振り向くとリーナはフードを深く被り顔を隠している。
「あ、あのリーナさん?」
「なんか……ごめん」
「謝らないでくれ。せっかく決心ついたのに……あれ、何で……涙が……」
俺は止まらない涙に言い訳をしながらリーナを慰めた。
● ● ●
「相似さん!LVを上げに一緒にクエストに行こう!」
「なあ……リーナ、なんでそこまでしてくれるんだ?」
「どういうこと?」
リーナは俺の言葉の意図がわからないようで首をかしげている。
「正直俺はリーナに世話になりまくった。この恩を一生かけても返せる気がしない、それくらい俺はリーナに世話になった」
本当にその通りだ。
リーナがいなかったらと思うとゾッとする。
とりまあの騎士に殺されただろうし。
飯だって買うことができなかった。
”ステータスカード”だって作ることもできなかった。
「だけどリーナは俺を助けているだけ時間も金も体力も減って……正直なんのメリットもない。寧ろデメリットばっかりじゃないか?そもそも俺とリーナが会ったのは今日初めてで、ここまでする価値がある男ではないぞ?俺は」
そんなことを考えてしまうと正直申し訳なさ過ぎて、これ以上俺に構うのはやめてほしい。
リーナの方を向くとどこか悲しい表情をしていた。
「昔……世話になった先生がいたの」
「へ?」
急な話にあっけを取られる。
リーナは食卓の椅子にちょこんと座り何かを思い出すかのように目を瞑っている。
「その先生はいつも困っている人を助けてるの。馬鹿みたいに人を助けて、助けて、助けて、自分が不幸になってるのに助けてる、そんな先生」
「ある日聞いてみたの「そんなに人を助けて何か利益はあるのですか?」って。そしたらなんて言ったと思う?」
「「これは自分のためでもあり、幸せのためでもある。まあ……周りが幸せならいいんだ」って」
「だから、私も気づかないうちにその先生を目指していたのかも……」
「……良い先生なんだな」
「うん……今でも尊敬してる。それに……その先生のこと……好きでした」
リーナは照れ隠しに頬を搔き「ふふ……」と笑った。
俺はそんなリーナを見て一礼し。
「じゃあ……もう少しの間よろしくお願いします」
「はい。喜んで」
その時の彼女の笑顔はどこか懐かしく感じた。
次も2~3日くらいになりそうです。
目標は29(火)に投稿ですね。




