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異世界復讐物語  作者: 希他勇
第一章 能力発現編
11/12

第10話 『似た者同士』

 投稿がかなり遅れてしまいました。楽しみにしていた方が居ましたら、本当に申し訳ないです。そして、さらにすみませんなのですが資格の勉強が始まってしまうので、さらに投稿が遅くなると思います。可能ならば、いやできるだけ1週間に1本は出していこうと思います。もし出せない場合は活動報告にて報告しようと思います。


 そしてある知り合いに、魔法名は漢字に漢字に統一したほうがいい、といわれましたので、もしかすると魔法名はそのままですが中に漢字がつくかもです。

「…………………………俺は馬鹿か」


 本当に自分のことしか考えてない、そんな自分に嫌気が差してくる。

 逃げられるかもってなんだよ……あのエミリアを見て俺は何も感じなかったのか。いや……感じなかった、わからなかったから俺はここにいるんだ。

 情けない、と思うと同時にホッとした自分が嫌いだ。嫌なことに目を逸らしてしまう自分が嫌いだ。


 ドクン……


 でも……仕方ないだろ。俺は弱い。そんなこと俺が一番理解している。

 それにエミリアと戦ってわかった。エミリアの強さは別次元だ。俺は逃げるのに徹していて戦っていないが、戦ったら間違いなく負ける。

 そのエミリアが相手にするという”S級冒険者”の実力はわからないが、手紙から多分エミリアより強い。そんな奴相手に俺がどうにかできるわけないだろ。仮に行ったとしても足手まといにしかならない。


 ドクン。


 それに相手は”人間”、”冒険者”。つまりエミリアと一緒に戦うということは、その人間と戦う、人殺しをするっていうことになる。俺に人殺し……絶対無理。

 そんなこと……死んでもやりたくないし……まあ、死にたくはないけど。


(……クス)


 …………何がおかしい。


(おぉ!聞こえておったか。いや……しかしな……ク、……、アハハハハハハハハ!駄目じゃ、我慢できない!何がおかしいって?全てじゃ、すべて!人を殺したくない?力が無い……か。クックック……いやな、それがとても滑稽でな)


 おかしいのはお前の頭だろ。

 生憎こちらは普通の人間ですので、誰かを助けるような力を持ち合わせてないんですわ。

 それに人殺しをしたくないのは、普通の人間だったら誰もが思う感情だろ。


(クックック、これまた滑稽、本当に滑稽じゃ。人間を殺したくないか……クック)


 何だよ……何が言いたい?


(嘘つきさんは自分が吐いた言葉の真偽に気づくことはできるかな?)


 ……は?何だよそれ。俺が噓を付いてるってことか?

 ついてねえよ。本心だ。噓なんて……


(クックック、主よ……そろそろ自分にいい訳をするのはやめたらどうじゃ?)


 い、いい訳?


(ああ、そうじゃ、自分に何か都合の良い言い訳を摸索し、現実から目を逸らしている、まあ、正確には”逃げている”じゃがな、ほらさっきも自分で逃げられるかもって言ったじゃろ?それじゃよ、それ。人殺しも所詮は良い訳の材料。主は足を怪我したとかでも結局はよかったんじゃないか?)


 やめろッ!!そんなこと訊きたくない!違う…違う、俺は逃げてなんか……いないはずだ。

 はずだ?いや、逃げていない、逃げていない。お、俺は言い訳なんて……してない。


(そして、似たような事を最近言われたんじゃないか?)


「はあ……そうやって相似は逃げるの?逃げて逃げて逃げて、最後も逃げる、そんな人間になりたいの?」

 そんなエミリアの言葉を思い出した。


「そう言ってお前はまた逃げ出す」

 ある夢の言葉を思い出した。


 俺はまだきっと黒く塗られた海の奥深く、どれだけ手を伸ばしてもどれだけ泳いでも決して光が差し込むことの無い、そんな海に俺はいる。


(だがな、主よ。主は変わらなければいけないんじゃよ。過去を振り切るために、今を生きるために、今後のために)

 

 やめろッ!やめろッ!そんなこと訊きたくない!

 訊きたくない?俺は認めているのか?違う、認めてなんかいない。


(はぁ……仕方ないな。溜まったMPをあまり消費したくないんじゃがな……)


 そんなミルキスの言葉が俺の頭の中で再生されたのが聞こえた。

 その次の瞬間だった。

 ガタガタと窓がなり、森の草木は風でなびく。だが、それは何かを察しかたようにピタリと動きを止めた。

 

 時が止まった。正確には時が止まったように見えた。


 ドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンドクンッドクンッドクンッ!


「うがぁッ!」


 突如始まった心臓の鼓動。

 胸が、”心臓”が熱く、苦しい。心臓内で火虫が暴れ回っているような痛み。その痛みはどこと無くエミリアの技『血流弾ブラットブレット』に似ている。


 熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いあついあついあついあついあついあついあついあつい。

 なになに?え?俺なんかした?

 俺が謝らなかったからミルキスが怒ったのか?それなら謝る、謝るよ。

 何でこんな……急に……ミルキスが何かしてるのか?俺が謝らなかったから?俺が弱音ばかりはいていたから?


 すると『影』、相似の薄い影が、もやがばらつく様に拡散した。次第にその影は地面から這い出て、もやはコウモリが集まるように1つの場所に集まりだしている。

 

 心臓の鼓動はものの数秒で治まった。

 胸の痛み、焼けるような熱さもいつの間にか消えていた。


「はぁ……はぁ……何が……起きてるんだ?」


 そのもやはゆっくりと形を作り始めた。

 しばらく時間が経つと徐々に形を整い始め、誰もが見たことがある2本足の生き物、”人間”の形になり始めている。

 そして、出来上がったのは……1人の女性だった。


 日本同様のロングの黒髪にパープル色の綺麗な瞳に、相似と同じくらいの背丈。そして青の花火の柄が入った……浴衣を着ている。まるで、THE日本のアイドル、いやまず日本にこんな美人な人はいない。


「ふぅ……やっぱり身体を一から創るのはMPを結構使ってしまうな……また溜めなお……ん?」と自分の身体を見回している。

「な……なッ」


 え……ちょっと待ってくれ、ど、どういうことだ。何で俺の目の前に……急に人が?

 いやなんだこれ、ファンタジーかよ、あ、異世界ってファンタジーか。じゃなくて……えっとどうなってんだ? なんで、女性の人が俺の影から?いや、まじで意味わからん。


「主よ、この姿で会うのは久し振りじゃな」と口元をにっとさせる。

 その特徴的な声でこの女が誰かわかってしまった。


「は、や、え……ま、待ってくれ。お、お前……ミルキス?」

「は?誰じゃそれ」とミルキス?は素っ頓狂な声を上げ、首をかしげている。


「は?え、でもその喋り方……ミルキス、だろ?」

「あーそういえば、そんなこと言ったような言わなかったような……まあいい、じゃあ、改めて自己紹介しよう。我の名はミルキー、初代魔王にして”冒険者に滅ぼされた者じゃ」腰に手をあて、踏ん反り返って偉そうにいう。


「え?ミルキーって……確か」


 俺を異世界に連れてきた張本人。

 適当な手紙だけを残して異世界に置いていった人物。

 というか……何で俺は今まで気づかなかったんだ? 名前的にすぐ気づくだろうが……たった一文字違うだけじゃねえか。自分のあほさに笑いが込上げてくる。

 だがまあ、俺はミルキーに1つの願望を持っている。

 それは、こいつを1発殴るということ。だが……


 どうも殴る気にはなれなかった。


ミルキーはそう言うと1歩、また1歩とゆっくり歩き出し、俺の目の前で動きを止める。

ミルキーは俺の目をまじろぎもせず見る。俺は彼女の目を見続けることができず、目を逸らそうとするが……


「目を逸らすな」

「え、あ……」


 ミルキーの言葉により俺はただ、彼女の目を見続けることしかできなかった。

 彼女の目を見続けているうちに瞳に涙の膜が張り、今にも泣いてしまいそうだ。

 

「……なんだよ?」と強気で言い、泣きそうな自分を誤魔化す。

「主に1つ問おう、主のその”助けたい”という気持ちは……本物か?」

「は?な、なんだよ急に……」

「いいから答えろ」



”エミリアを助けたい”この気持ちは嘘か?



 エミリアは奴隷の俺を救い出してくれた張本人。しかもたった1日しか付き合いがないのに、エミリアは俺をよくしてくれた。最後もやり方はあれだったけど、結局は俺のためにやったことだ。


 俺を奴隷から救い出してくれた時、エミリアの手の暖かさ。

「よろしい」と言ったエミリア表情。

「相似、強くなりたいんでしょ?」と言ったエミリアの言葉が頭の中に染み付いてしまった。

 一度あの人に会ってしまったら、2度と忘れることなんてできない。


 エミリアを助けたい、この気持ちが、噓なわけ……ないだろうが。


「……本物だ」

「そうか……よかった」とミルキーは目を伏せ、口元を緩ませる。


 すると、ミルキーは1歩後ろに下がり両膝を揃えて床につける。

 そこから頭を地面につけ……土下座をした。


「は、え、ちょ……な、何やってんだよ」

「どうか、あの子ら……エミリアとリルルを助けてやってはくれないか?」

「え?」


 ミルキーは床に頭を付けながら言った。


「あの子らはまだ幼い……本来ならば我が助けに入らなければいけない立場なのだが……わけあって助けに行くことができんのじゃ……」


 頭を下げたまま元魔王ミルキーは相似に懇願する。俺はまだこの世界に来て1ヶ月に満たない新人だが、王様の立場にいた人が凡人に頭を下げるのはきっと屈辱、恥辱ともいえる行為なのではないのか?


「助けに行きたい……けど……俺は」


「弱い」と言おうとした瞬間だった。


 どこかの影の一部がいくつかの粒子になり、ふわふわと相似の目の前を飛ぶ。それは相似の目の前で止まりパラシュートが落ちるようにゆっくりと浮いている。相似はそれを手で受け取ろうとする。

 ポトリとそんな音がでるように、そのいくつかもやは相似の手に収まる。手に触れた瞬間、そのもやは集まりだし、ミルキーを創ったように何かに変わろうとしている。

 形作られ、出来上がったものそれは……一つの黒いカード、何も書かれていない”カード”だった。


 こ、これって……

 見覚えのあるカード、あまり良い思い出の無い物。

 その”カード”に触れていると端から血のように真っ赤な色をした光が蜘蛛の足のように分散しカードを刻み始める。

 どこかで見た光景、忘れるはずなんてない。


”ステータスカード”だ。


 俺は恐る恐る”ステータスカード”を見る。


”LV11 NAGINO SOUZI(凪乃相似)ランク ???

 HP200 MP120

 ATK(攻撃力)   51

 DEF(防御力)   50

 SPD(俊敏性)   30

 INT(知力)    60 (100500)《影魔法のみ》

 MPR(魔法防御力) 50

 LUK(運)     -11


《職業》冒険者

《クラン》無所属

《固有スキル》『影響者〈1〉』(全影魔法を無詠唱で発動可能+影魔法の消費MPが1/10+影魔法の威力を◆◆合わせて5段階まで増加)  

        『連なる心臓』(MPが0になった場合、HPをMPの代わりに消費可能。ただし1以下にならない)


 はは……ほんとこの世界は”固有スキルゲー”……なんだよこれ。

 

「ミルキー……この知力だけ馬鹿高いのはあんたの仕業か?」


 俺はそうミルキーに訪ねる。というか絶対にミルキーしかいないだろ。

 するとミルキーは顔を上げる。


「我は何もしておらぬよ。それは主、本来の”能力値”と”固有スキル”ということじゃ。我がやったことといえば主の”カード”に細工を施したくらいじゃ」

「じゃ、じゃあ……あの『不明』は……?ミルキーがやったのか?」

「……そうじゃ」

「な、何でそんなこと……」

「主の能力ちからを周りの人間共に隠すためじゃ。主の”固有スキル”が知られると今後色々と不都合になるからな」

「い、意味わかんねえよ。何で……いや待ってくれ、えっと、ふ、不都合って?」


「…………それは言えない」ミルキーは顔を下に下げ、俺の質問に答えるのを嫌がった。

 

 何が……どうなってんだ?頭が回らない。

 何でミルキーはこんなことしたんだ?……ダメだいくら考えても思いつかない。

 つまり、なんだ?俺は実は強いってことなのか?……

 

「主よ」とミルキーの言葉が俺の考えを遮った。その時のミルキーの声は真面目な声だった。

「……!」


「頼む……お願いじゃ」

「俺は、俺は……」


 俺は理由を探している、逃げるための理由を、行かなくて済む理由を…

 ……ああ、ミルキーが言ってたのはこのことだったのか。言い訳をいつも探している、はは……その通りだな。

 怖い、そう、俺は怖いんだ。

 助けられなかったときの恐怖、人を殺してしまうかも知れない恐怖、自分が死んでしまうかも知れない恐怖が、そんな恐怖から俺はいつも逃げている。……そもそも何で俺が行かなくちゃいけないんだ?

 他に誰でもいいじゃないか。何でいつも俺ばかりこんな危険な目に合わなくちゃいけないんだよ。

 嫌なんだ……、エミリアに殺されそうになった時に感じたあの恐怖、あんな思い二度と味わいたくない。


「お、俺は……」何とかして断ろうと喋ろうとしたときだった。

 1つの疑問が生じた。


 だったら………………エミリアはどうなんだ?エミリアは恐くないのか?

 エミリアとの最期の夜、俺は彼女とわずかに話した。その時……彼女はどうだった?昨日みたいにいつもの調子で話して……いたって普通、大丈夫そう……だったよな?


 ……死ねよ。


 死ねよ、本当に死ねよ。自分に都合の良い言い訳で考えを塗りつぶそうとするなよ。

 消えろ、消えろよ。都合の良い自分を消せよ、消せッ消せッ消せッ!

 俺が最期に見た彼女の顔は……泣きそうだった。

 泣きそうな奴が大丈夫っていえるのか?……言えるわけ無いだろうが。

 エミリアだって恐いんだ。

 

 エミリアは恐い感情を、最期まで俺に隠し通そうとしたんだ、昨日の夜だって俺に嫌われるよう仕向けた。

 全ては俺のためにやったこと。気絶させられる直前に吐いたあの言葉も。どうせ、俺から嫌われるためにやったこと。

 エミリアのことだ「私の事を嫌いになってくれれば私を追おうとはしないし、すぐに忘れてくれる」とか考えてそうだ。 

 お人よしすぎる。それが彼女、エミリア。

 エミリアはきっと損するタイプだ。人を助けすぎて、自分が不幸になっていくタイプ。

 自分の事なんて一切考えない、ただの自己満足に過ぎない。そんなの子供、ただのガキだ。


 だけど、エミリアは最後の最後にミスをした。

 俺を殺さなかったということ。手紙を残したと言うこと。そして……最期の最期で泣いてしまったこと。

 エミリアは『子供』なんだ。所詮は『大人』を演じている『子供』にすぎない。

 だから彼女は泣いたんだ。隠しきれずに、隠し通せずに。


 そんなエミリアが行ったんだ、怖いはずなのに。

 俺はどうすんだよ。震えるな、余計なことを考えるな 自分の事とエミリアを天秤にかけるのはやめろ。俺がどうしたいかだけ考えろ。


 ――――助けたい


 思い出せ、エミリアの優しさを、貰った物を、言葉を。


「相似、強くなりたいんでしょ?」


 ………………そう、だな。


「ミルキー……怖いけど、行く」

「……助かる。やっぱり……主は主のままじゃ」

 

 ミルキーはゆっくりと土下座の格好から顔をあげる。

 

「何だよそれ……まあいいや。ミルキーエミリアの場所を、あと使い勝手が良い影魔法を俺に」

「了解じゃ」

「あとミルキー、この戦いが終わったら1発殴らせろ」

「それは嫌じゃ」


 もう……借りを作られるのはやめよう。


  

 投稿日は未定ですが、一週間以内には投稿できるようします。

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