プロローグ
拙い文章ですががんばりたいと思います。何か誤字脱字等のことなどありましたら教えてくれると助かります。目指すは5000PVを目指したいです。
生命を照らす明かりの象徴とも言える太陽は雲によって隠れている。
それは自然に発生した雲ではない。
広大な草原に聳える塔のてっぺんにある”魔法陣”によって生み出されたものだ。
だがこれは副産物であって、主産物ではない。
主産物はこの魔法により完成する。
「な、なんでこんなこと……君は何のためにみんなを助けていたの?」
地面に横たわる少女が今にも泣きそうな声でポツリと白い狐の仮面を付けた男に言う。
周りを見渡せば剣や杖を持った人達もすごい剣幕でその男を見ている。
そりゃあそうだ、みんなは彼を英雄視していたのだから。
「なんでって、そりゃあ……」
この世界にこの終止符を打とうとしている彼、凪乃相似は仮面を外し一言告げるのだ。
「自分のためだろ」
だって俺はこの世界を滅ぼしに来たんだから。
● ● ●
仕事帰りに沈む太陽を眺めながら、半額弁当を求め市場に行き、明日も仕事かと憂鬱になりながら弁当を食べ、深い眠りについたはずだったのだが……
目を覚ますと俺は草原にいた。
「……どこだよ」
知らない場所に、生き物そして空を飛ぶドラゴン……ドラゴン
ドラゴン!?
待て落ちつけ。こういう時こそ冷静になれ、こういう言葉があるじゃないか。
そうだ、深く息を吸って……はいて……
よーし俺は冷静な男。クールな男だ。
もう一度ゆっくり目を開けると……イノシシの様な動物が目の前にいた。
そのイノシシは鼻息を荒くし、俺に何か期待を向ける目で見ていた。それは決して犬や猫が向ける友好的な目ではなく……捕食者の目だ。
フゴァアアアアアアアアアアアア!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
なんなんだよ!本当なんなんだよ!神様俺何か悪いことした!?自分は誰よりも善良な市民だと自負してたはずなのに!何で普通に仕事してただけなのに何でこんな目に合わなきゃいけないんだ!
俺は自分でも驚くほどの速さでイノシシみたいな化け物から逃げた。
● ● ●
「はあ……はあ……おえ、気持ちわる」
こんな全力で走ったのは高校生の運動会以来だ。二人三脚をやる人がいなくて一人だけ50m走で1位になったのはいい思い出だ。
それから俺はひきこ……いや、この話はやめよう。涙が滲み出てくる。
俺はイノシシもどきから逃げ伸びて現在は生え伸びていた木に小休憩をしようと腰を下ろしたとき、胸ポケットから何かが落ちたのが見えた。
「なんだこれ、手紙?」
それは赤いバラのシールで閉じられた黒い手紙だった。
なにこの中二くさい手紙……全く見に覚えがないんだが。
恐る恐る開けてみると……今回の件の元凶がそこに全て記されていた。
”凪乃相似様へ
え~と、急なんだけど主には異世界に行ってもらうことにした。主ならきっと大丈夫、大丈夫さ。異世界の言葉は主の脳を少しばかり弄ったから日本語に翻訳してある。
転送先は多分ランダムだと思うけどきっとどこかの街に転送されるはずじゃ。
街に着いたら最初にギルドホールがあるので、そこのギルドの綺麗なお姉さんの受付とかに並んで適当にフラグを建てておくれ。
「俺の熱い美貌でお前を惚れさせる」とか言っちゃったりしてな……(笑)
うん、ないな。
まあ、そしたら「ステータスカード」という物を作っておくれ。
それが主がいた世界で言う身分証明みたいなものだから。
作り終えたら適当にそこらへんでゆっくり仕事でもしながら生きていてね。
異世界に来ても仕事とか……(笑)社畜精神もほどほどに。
あまり危ないことをしないように!
主はいつも危なっかしいからな。まあ、ビビリだしできないか!
あとこっちの世界の主の家族のことは大丈夫じゃ、我がしっかり面倒をみておくから!
ま、てことでよろぴこ。
親切な魔王ミルキーちゃんより
追伸 我が主のパソコンの『男の魂』というフォルダは消しておいたから。”
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
俺はその手紙真っ二つに引き裂いた。
いきなりすぎるだろ!せめて事前に連絡ぐらいしやがれ!
脳弄った?こえーよ!
それに何が大丈夫だ!全然大丈夫じゃないじゃないか!
街? ここ草原の真っ只中ですけどぉ!
しかも”うん、ないな”ってなんだよ!せめて(笑)つけて!絶対ここだけ真顔で書いたよな!
いや、まあ惚れさせるなんてできないけど!ないけどさ…………
軽く認めちゃうじゃん。うん、悲しくなってくるからやめよ。
でも、俺が一番ムカつくのは……
「何でパスワードわかったんだあああああああああああああああああああ!」
秘蔵フォルダを消したことである。
自称魔王ミルキーってやつにあったら一回殴らないと。
そう硬く決心したのだった。
● ● ●
それにしても異世界か。
なんとか機嫌を取り戻し現状もなんとなく理解してきた。
(よくラノベであれと同じ状況になってるのか……)
しかし……虫も殺せないような奴にミルキーって奴は何を求めてるんだ?
いや、何も求めてないか。手紙にもゆっくりしてねって書いてあったし。
何か俺にチート能力でも芽生えていたら俺は勇者とか奉られるのだろうか?
そして女の子を助けたりしてハーレムに……ふむ悪くない。
それにミルキーって奴のいうとおりにするのが尺に触るのだ。
まあ9割の理由がそれなんだが。
はは、ざまー味噌汁。誰がミルキーの言うとおりにするものか。
よし、とりあえずの目標は。
「ギルドを探しますか」
俺はその場で立ち上がりさっきの化け物に注意しながらギルドに向かうことにした。
しかしこのとき相似は理解していなかった。
この世界に地図もコンパスも身を守る物なしで出歩くことがどれだけ命取りになるか。
相似は魔王ミルキーの敷いたレールの上をコロコロ転がされていることに気づいていなかった。