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第56話 公国激震その2

「レオ執政官!!やりました!!ラクトニア王国から親書が届きましたよ!!」


リュイが嬉しそうに執務室に飛び込んで来て報告する。執務室にはレオ、セリス、あいかわらず機密文書を読み漁っている自分がいる。


「何故外交権を持たない自治領の執政官にラクトニア王国から親書が届くんですか?私自身ラクトニア王国に知り合いなんていませんよ」


レオにそんな伝手はないだろう。公国内にも少なそうだ。


「そう思って、私がラクトニア王国に報告書をあげておきました。副業でラクトニア王国のスパイもやっているもので」


リュイがまたとんでもない事を言う。前回もあったから今回は驚かないぞ。


「なにやってんですか?!リュイは自分のしてる事分かっているんですか?!」


レオが驚いている。今回は不味かったのか?


「レオ執政官の夢のお手伝いをしております。ラクトニア王国に北の大砦の主権を認めて貰えれば国としての独立出来ます」


そういえば国として認められるには、領土と国民と他の国がその国を認識する事で成立するとか聞いた事があったな。つまりリュイは本当にレオ王国をつくろうとしてるのか?


「そんなに仕事を掛け持ちすると早死にしますよ。ほどほどにして下さい」


呆れながら親書を確認するレオ。


「内容は執政官になった事のお祝いの言葉とエルフ自治領を含めてラクトニア王国は私の領土と認識しているそうです。更に近々クロノア公国との国境沿いで大規模な演習を行う予定があるので会談も希望してますね」


分かりやすく煽っている内容だった。


「チャンスですぞ!執政官!」


リュイも煽る。


「なにがチャンスですか!この街の収入の八割以上がギルドからの収入。つまり公国を通して得ている利益です。独立してどうするんですか?」


「それは公国を滅ぼした後、他国との貿易で利益をあげればいいのでは?魔物の素材は世界中で引くて数多です」


一応まだ第三王子の自分を前にしてする話じゃない。考え込むレオ。


「駄目ですね、信用できません。大体ラクトニア王国が来なかったら公国とこの街が潰しあって終わりじゃないですか。そもそも王国は公国に対して二度も大敗をしてるんですよ。まだ負け足りないのですか?!」


「前の戦いから50年ですから、そろそろ雪辱を果たしたいのでは?賠償金は何もなければ後50年払わなければいけませんし。それに王国の諜報部員達は三年程前に壊滅したのでロクな情報が手元にないのかもしれません」


「三年前ですか?私がいなくなってからですね。セリスは何か知ってますか?」


レオが聞くと少し首を傾げてから横に振る。


うん。絶対知ってるよね。


「セリスが知っているわけありませんよね。情報不足にしても短絡すぎるでしょう。公国にも兵は約4万いるわけですし宮廷魔導師もいるわけですから、公都まで落とすとすれば王国の常備軍15万をまるまま動員する必要があるでしょう。それでも落ちないかもしれませんが」


「そこまで考えていないと思いますよ。この街には混合魔法の使い手と公国で魔力が多過ぎた為疎まれた王子が手を組み北の大砦を乗っ取ったと伝えています。手紙一つで調子に乗って兵を挙げてくれたら嬉しいなぐらいじゃないですか?」


散々煽ったリュイがそう言い放つ。


最後にセリスが、


「いっそレオ様がクロノア公国、ラクトニア王国ともに平らげてしまえばよろしいのでは?」


怖ろしい事を言ってくる。


しないよね?



★☆★


「ゲーリック様。ラクトニア王国から国境付近で軍事演習を行いたいと伝えて来ました」


ラクトニア宰相が報告してくる。


「北の動向は?」


「使いに行かせた者の話では、こちらの贈り物に大変満足していたとの事です」


小さな会議室の中に安堵の溜め息が満たされる。会議室には自分とラクトニア宰相、クルエラ筆頭魔導師、ブルーシュ大将軍(軍務卿)の四人だ。


「とりあえず安心か。ブルーシュ大将軍、ラクトニア王国と戦って勝てるか?」


前回逃げようとしたブルーシュも今回は強制参加だ。


「防衛戦であれば、負ける事はありません。引き込んでから敵の補給線を断てば済みますから。こちらは籠城しても3年分以上の食糧の備蓄があります」


「それに我々魔導師部隊もおります。宮廷魔導師50名、魔導師部隊2000名の魔法力を以ってすれば何万いようと物の数ではありません」


ブルーシュ大将軍とクルエラ筆頭魔導師は自信満々に言い放つ。ブルーシュ大将軍は元々兵站のスペシャリストであり軍略にも明るい。個人の武勇はそれほどではないが本来頼りになる存在だ。


「それは良かった。大将軍は体調に十分に気を付けてくれ。肝心な時に倒れられたら困るからな」


それだけにイヤミの一つも言わずにはいられなかった。八つ当たりと分かっている。ブルーシュはアルフレッドの手綱を取れないなら殺すべきだと主張していたのだから。

手許におく事もせず、殺すことも出来ず中途半端な対応をしてしまった自分の責任だ。


「クルエラ筆頭魔導師、セリスは連れ戻せそうか?」


レオをアルフレッドの教育係に推薦したクルエラ筆頭魔導師に冷たく言い放つ。

レオでなければ執政官に成り上がる事はできなかったのではと考えてしまうからだ。


レオがブルーシュ大将軍に命を狙われていた為にレオを離宮に送ったのは知っている。混合魔法を魔導師部隊が覚えれば相対的に通常戦力たる兵士の価値が下がるからだ。


「それが補佐官の仕事が忙しいと言うばかりで会うようになりません」


セリスがレオに懸想していたのは周知の事実だ。連れ戻す事は難しいだろう。


「引き続き交渉を頼む」


無理と知りつつそう言うしかなかった。


全ては王たる自分が至らなかった為に起こった事態。責任は自分にしか取れないのだから。


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