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第53話 公国からの便り

「なんで、こんなに仕事が多いんですか?!」


執務室でレオが嘆いていた。自分も執務室にいるが別に手伝ってはいない。機密書類をひらすら読み漁っているだけだ。


その中にインテリジェンスゴブリンの記述もあった。20年程前に大渓谷を抜け、人類の活動地域を広げようと冒険者100人規模の遠征隊が組まれたようだ。

しかし遠征隊は壊滅。北の大砦に戻って来れたのは3人のみ。体のデカイゴブリン達が隊列を組み攻めてきたこと。一体一体が異常に強く並の剣や矢では傷一つ付けれない事。少なくとも1000体以上はおり、北の大砦の戦力では攻略が難しい事などが記述してあった。


いい仕事しすぎだゴブリン。これを見るとインテリジェンスゴブリンと人間はハッキリと敵対関係にある。公表していれば、大渓谷を抜けてゴブリンと交渉しようなんていうバカな逃亡奴隷なんて出ず、グラディウス家は存続していただろうなぁと思う。

北の大砦の支配者としては攻略不可能な大勢力が割と近くにいるとは言えないか。


「アル君も機密書類を見てばかりいないで手伝って下さいよ」


書類を見て感慨に浸っているとレオが八つ当たりをしてくる。八歳児に仕事を振る大人カッコ悪い。


「そんなの無理に決まっているだろう。八歳児の指示に従うのは皆嫌だろう。それにレギオンのマスターとして忙しいんだ」


レギオンとしての仕事なんてあるわけがない。メンバーは辺境にいるか皆忙しい人ばかりでレギオンは開店休業状態だ。やる事と言えば、エルフ達と一緒に行かず残ったメイと街に買い物に繰り出すぐらいだ。


金ならあるのだ!!しかし子供の姿で買える高級品などなかった。洋服屋も武器屋も自分と、メイだけで入ろうとするとやんわり断られてしまうのだ。仕方なく屋台などで買い食いに勤しむ。高くて銅貨50枚程だ。結局金貨一枚を使う事なく終わった。メイは楽しんでくれたみたいなのでよかったが。


そしてメイは昼間はフォシーユの館に勉強をしに行っている。自分も行きたいとホープに伝えたらニッコリ笑って、卒業証書を一枚渡された。さりげに扱いが酷い。


転移魔法で離宮に戻った時にエマに愚痴ったら


「なぜ離宮で生活する事になったか考えてみるといいですね」


と言われ一蹴されてしまった。主人公なのに扱いが酷い。主人公だよね?



仕方ないので執務室で暇を潰しているのだ。それにしてもレオは本当に忙しい。各種陳情や裁判に関するもの。処理する案件に事かかない。猫の手ではなくとも八歳児の手も借りたくなるだろう。


裁判といえばグラディウス家は財産没収の上南の大砦に追放。息子のルッツは双子砦で一兵卒として根性を叩き治す事になった。根性は治っても性癖治らないと思うが。


北の大砦において奴隷は合法であり、グラディウス家のやり方は人道的に問題はあるものの重大な法律違反とは言えなかった。横領についても公国の法律では死刑になりかねない金額だが、執政官の判断は北の大砦に於いて上位に位置するとの法律があるらしくあまり罪に問えないとのこと。


結局エルフの姫を攫い北の大砦の治安に重大な危機を招いたとしての罪だけとなった。

いくら執政官の判断が法律の上位に位置するとは言え住民の安全を守る為と言う建前がある以上今回の件は誰も庇う事はできないのだ。


今までのグラディウス家の悪事を暴き、エルフの姫を救い出したレオは北の大砦の英雄にして新しい時代の希望の星として住民達から絶大な支持を得ている。


その為余計にその威光にあやかろうと様々な人々を呼び寄せてしまうのだ。


「レオ執政官、公国からの使いが参りました」


リュイがレオを呼びに来た。ギルドマスター代理を引き続きしながら執政官補佐として収まっている。


「公国から?用件は?」


レオが訝しげな顔で聞く。


「公国王ゲーリック様よりレオ執政官を正式に認める使いの者ですよ。手土産もたんまりです」


当然の様に答えるリュイ


「おかしいでしょ?執政官として認めて欲しい旨や、グレンを街の軍事上のトップにする事などを認めた手紙を出したのは2日前ですよ。早馬でも往復4日かかるのに……」


まるでスパイでも入り込んで、こちらの動きを見ていたような対応の早さだ。


「あぁ、それでしたら私が先に公国に報告書を提出して置きました。副業でラクトニア宰相直属の工作員をしておりますので」


明るく言い放つリュイ。とんでもない事言いやがった!


「そうですか。なら良いんです」


割と平然としているレオ。なんかビックリした自分がバカみたいだ。


「それにしても公国は随分弱気だな。北の大砦の兵士は警備兵を中心に2000余り。4万以上の兵力がある公国ならもっと上から来ても良さそうだけど」


思った事をそのままレオとリュイに言うと


「え?!今更何を言っているんですかアル様。貴方がいるからじゃないですか?!それにグレンの傘下には街のトップ冒険者達1000人がいます。1人1人が実力者の冒険者です。その気になれば2万人以上の冒険者を集める事ができますよ」


「アル君は何故離宮で生活する事になったか考えた方がいいですよ」


なんか可哀想な物を見る目で見られた。そんな目で見るんじゃない!たまに自分の立場を忘れるだけだ。


そんな話をしているともう一人の補佐官のアデーレが飛び込んでくる。ホープの推薦で補佐官になった冷静沈着な男だがひどく慌てている。


「面会希望者が突如暴れ出し此方に向かって来ます。かなりの実力者で止める事ができません。早くお逃げになって下さい!!」


その瞬間扉がアデーレと共に吹っ飛び、1人の美女が現れる。


「レオ様〜〜〜〜!!!」


レオの胸に飛び込む美女。


「セ、セリス?!」


レオに美女の知り合いだと?!!!

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