第52話 セリス•クルエラ
レオ様と出会ったのは私が9歳の時です。
我がクルエラ家は代々魔力が高く宮廷魔導師の地位にあります。その為8歳になると北の大砦で冒険者となり、二年間修行するという物があります。気が狂ってますよね。
最初は魔境の外縁部、正直街の近くでちまちまとゴブリンやウルフなどを倒す程度ですが、最終的にはフォレストタイガーを倒してBランクになることが目標です。もちろん護衛はつきます。
9歳になった時私は自分の力を過信していました。いつもより深く森に入ってしまいフォレストタイガー5頭に囲まれてしまいました。1頭なら護衛の二人と協力して倒すこともできたのですが一度に5頭はとても無理です。牽制をしながら逃げました。護衛の二人も私を庇って亡くなってしまいました。
追いつかれもうダメだと思った時に救世主が！
そうレオ様です。ファイヤーランスを10本同時に操りフォレストタイガーを一掃。
更にその後現れたA級の魔物サーベルタイガーも、レオ様自身重症を負うも撃退。私が必死に回復魔法を使い回復しました。その時の傷は今でも背中に大きく残っています。
レオ様はその時の事を恩に感じているそうですが、とんでもない！私が引き連れてきてしまった魔物を倒して下さったばかりか私の命を救って下さったのですから。この命はレオ様のものです。
それからレオ様の通っている学校に編入しレオ様の側に出来る限りいるようにしました。レオ様の顔や麒麟児の名声目当てでやって来る雌豚共からレオ様を守らねばなりませんから。
魔力の伸び悩みはありましたが持ち前の勤勉さと才能でついに無属性魔法に関する論文を発表し宮廷魔導師への士官が早々と認められ、ついには私も協力させて頂いた混合魔法を生み出されました。
宮廷魔導師となられたレオ様は混合魔法の開発者として次世代魔法の研究に没頭されていました。私のお爺様である筆頭魔導師も全面協力です。私も魔導師学校卒業後はレオ様の助手としてまた一緒にいられる筈だったのに……。
お爺様に聞いた話では、政争の具にされており、混合魔法の開発にレオ様が関わり続けるのは危険だという事でした。
代わりに私が混合魔法の研究を引き継ぐ事になりました。混合魔法の優位性を示す事でレオ様の偉大さを世に知らせる。それが私の使命と思い頑張りました。
その間にレオ様が第三王子の教育係として公都を離れる事を聞かされました。魔力量が多い為離宮と言う少し離れた場所が第三王子の教育の場になると。離宮なんて聞いたことありませんが、秘密の場所の一つや二つ国が持っていても不思議ではないと思い、その時は納得しました。
異常に気付いたのはレオ様がいなくなって半年後の事です。レオ様が寂しかったらいけないと毎日手紙を書きお爺様に渡していました。毎日レオ様が行った離宮と連絡をとっているとは思いませんが、週に一回、少なくとも月に一回は連絡をとっていると思っていました。
半年間レオ様からの返信なし。
離宮と連絡をとっていないか、レオ様が他の女にうつつを抜かして私との連絡を取りたがらないかのどちらかです。
レオ様に限って浮気なんてするわけがありませんが、念の為、そう念の為にお爺様の書斎に忍び込み離宮の資料がないか調べました。するとお爺様の机から私の半年間の手紙全てを発見しました。
離宮と連絡をとっていない。または取りたくても取れない。第三王子と共にレオ様が殺された？という最悪の想像が頭を過ぎります。
しかし、第三王子が廃嫡されたとも、レオ様が宮廷魔導師から除籍になったとも聞きません。
生きてはいる筈。
離宮という場所に隔離されていると考えれば辻褄は合いますが何の為に？
お爺様に詰め寄ろうかと思いましたが、話してくれなさそうだったので他の人達に聞く事にしました。他国の諜報部隊の方達です。
筆頭魔導師の孫であり、新魔法開発の一人者という肩書きは他国の諜報部隊の方を引っ掛けるには十分に魅力的だったらしく面白いように釣れました。
ただ私の聞き方が悪かったのでしょう。皆さん口を揃えて知らないとの事でした。拷問という物にも挑戦したのですがダメですね。上手くいきませんでした。壊さないようにするのはあまりに難しいです。
手がかりがないまま時が過ぎました。混合魔法の研究も行き詰まり進んでいません。未だに使えるのはレオ様を除いては私だけです。皆さん二つの魔法を同時に展開することすらロクにできません。あと、魔力量を間違えると死んでしまうのも心理的なブレーキになるようです。
レオ様の同期のユリアンとか言う人も魔力量はまぁまぁあるのですが、魔力量の調整が下手くそで役に立ちません。せめてレオ様の魔法の礎として死ぬ覚悟が欲しい所です。
そんな中、耳を疑うような知らせが入って来ました。レオ様がなんと北の大砦の執政官になったと言うではありませんか！！！
真偽の程は分かりませんが、先ずは行動しなければ、次に有力な情報が入るのは何時になるか分からないのですから。
レオ様、今会いに行きます！！！
