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第51話 公都激震

今回の一人称はゲーリック•クロノア。公国王で主人公のパパさんです。

「これはどういう事だ!!」


八つ当たりと知りつつも大声を出さずにはいられなかった。

目の前には報告に執務室に訪れたラクトニア宰相とクルエラ筆頭魔導師の2人。


麒麟児レオ、北の大砦の執政官就任


この知らせは公国の中でも特に上層部に与えた衝撃は大きかった。

三年前、第三王子の教育係として離宮へと送った麒麟児レオの執政官就任。これの意味する所は、


「アルフレッドが魔境を抜けたか?!」


「間違いないかと」頷くラクトニア宰相。

隔離していた王子が更なる力を身につけ離宮から舞い戻って来たのと同じ意味。


「冒険者登録したらすぐに手の者が接触する手筈ではなかったのか?なぜこんな事態になるまで放置していた?!」


公都側でも用意はしていた。離宮に一番近い街の北の大砦にアルフレッド達が向かうのは自明の理。公都からの工作部隊も常駐しアルフレッド達の動きに備えていた。


「北の大砦に来たら歓待し怒りを和らげてから公都に迎える予定だったではないか!宰相よ!」


離宮に飛ばし転送陣まで壊してしまった以上連絡はとれない。せめて北の大砦でアルフレッド達の力を測りつつ宥めて公都に丁重に迎える。

問題の先送りをし、その上確実に大きくなった問題に対して出来る対策だった。


「冒険者登録したその日に大砦を制圧されまして……その報告書がここに」


レオの就任は北の大砦を制圧した次の日正式に発表され、接触を図ろうとしていた工作部隊は慌てて詳細を調査まとめた。調査に時間が掛かったのか報告が遅れ、今日でレオが就任して4日立っていた。


「早馬を飛ばせば2日の距離だ。それが何故4日掛かる?もう公都の民衆は知っているのではないか?」


実際朝一に伝わった麒麟児レオ執政官就任の知らせは民衆の間に様々な噂を呼んでいた。

言い訳のように分厚い報告書を見ながらそう言い放つ。


報告書は良くで来ていた。レオが所属しているレギオンの情報。レオに協力した有力者であるグレンやホープの情報からグラディウス家の破滅に至るまで流れ全てがまるで見て来たように書かれている。


「報告者のリュイは長年北の大砦に潜入させていた工作員の一人だな。何故リュイの名がレオと同じレギオンに示されているのだ?宰相よ」


何度目になるか分からない問いかけがラクトニア宰相にされる。リュイはアルフレッドの件とは別件で送られていた工作員だ。グラディウス家の不正の証拠を集め、自浄作用がない事を理由に、北の大砦をから自治権を取り上げる為に送られた工作員。それがアルフレッドとレオと同じレギオンに所属している悪夢。


「それは自主的にアルフレッド様達の情報を得ようとした結果ではないかと……」


珍しく口ごもるラクトニア宰相。計画の一つに自治権を取り上げた北の大砦をアルフレッドに任せる計画があったのだ。それが結果をみるにウェイが積極的に関与し北の大砦をアルフレッド達に献上してしているように見える。


リュイはアルフレッド側についたに違いない。この報告書は最後の奉公のつもりか、おちょくっているつもりか分からないが、これ以上詳細な情報はない為、出さざるをえない。


「もうよい!それよりこれからの事だ。クルエラ筆頭魔導師よ。北の大砦と戦って勝てるか?」


宰相を追い詰めるのをやめ筆頭魔導師に話を振る。


「アルフレッド様を抜きに考えれば勝てます。我が孫セリスも混合魔法の使い手ですから、麒麟児レオを抑え込む事はできるでしょう。ただその為の犠牲が多すぎます。籠城された場合、公国軍の7割が失われる可能性があります」


顔をしかめながら筆頭魔導師は答える。


「7割か。全滅扱いではないか。兵糧攻めというわけにはいかないか?エルフ自治領と双子砦を利用すればいけるだろう」


息子が出てくれば負けるのか。


「不可能とはいいませんがラクトニア王国から間違いなく攻められます。キラ帝国も呼応すると港を抑えられて此方が干上がります。ちなみにエルフ自治領はレオに付くでしょう。エルフの姫をグラディウス家より解放してますので」


つまり北の大砦を包囲するどころか逆に包囲されるのか、公国内の砦すら自由に出来ないとは、本当に私は王なのだろうか?


「つまり攻めることはできないと、直接頭を下げれば許して貰えるだろうか?いっそ降伏でもすればいいのか?」


投げやりにそう言うと、ラクトニア宰相が言いにくそうに答える。


「ゲーリック様、それは出来ません。謝罪しようにもアルフレッド様は偽名で冒険者登録をされております。またレオに関しても宮廷魔導師の職を解任しておらず頭を下げる理由がないのです。降伏に関しては宣戦布告を受けていませんし、公国領内の都市に降伏を行なうことは物理的に無理です」


そうアルフレッドは偽名で登録しレギオンを結成した。アル•クロイワだ。隠すならキチンと隠して欲しいと心の底から思う。本名であれば、悪徳執政官を追い出した功績で任命することができるし、全く違う偽名なら知らぬ顔で握手を求める事もできるのに……。頭と尻尾が隠れていない名前だと対応しにくい。


「分かった。取り敢えず、正式にレオ•グリセラを執政官に認める使者をだせ。当然北の大砦の自治権はそのままだ。就任祝い名目で贈り物も送れ!筆頭魔導師はブルーシュ大将軍と共にセリス•クルエラを中心とした公都防衛計画の練り直しだ」


できる事をやるしかない。当面の指示をだす。するとクルエラ筆頭魔導師が


「じつはブルーシュ大将軍が持病を理由に引退を考えておるとの事です」


「あいつ逃げる気か?!ブルーシュが辞めたら後任はどうなるのだ?」


ブルーシュ臆したか。


「2人候補がおります。双子砦で補給のスペシャリストであり軍略にも明るいシオン将軍、そして南の大砦で武勇を誇っておりますベルタ将軍ですが……」


「どちらが次期大将軍に相応しいのだ?」


2人も新世代の芽が育っていたか!!思わず声が上ずる。


「それが、どちらもベルナルド殿の息子です……」


場の空気が固まる。言われてみれば、そのくらい知っていたのだ。あまりの事態に頭から飛んでいたのだ。


「認めれるか〜〜〜!!!ブルーシュには引退は認めない!!公国の大将軍として死ねと伝えろ!!」


また八つ当たりをしてしまう。ラクトニア宰相とクルエラ筆頭魔導師は逃げるように退出する。


その1時間後、私の元にセリス•クルエラがレオの元に向かったとの知らせが入った。



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