第49話 グラディウス家
本日2話目
「では、夕方にでもグラディウス氏にアポイントいれときますか?」
なぜか場を取り仕切っているリュイ。
「では早速アポイントを取ってきますね。部屋はそのまま使って貰って大丈夫ですから。ただ机の上の書類は見ちゃだめですよ。機密情報ですから、グラディウス家がなくなっちゃいますから」
と言って部屋を出て行く。
「アレを味方にして大丈夫なの?!」
グレンに問いかける。
「まぁ敵にするより味方にした方がいいだろう。頭は切れるぞ間違いなく」
頭が切れるからタチが悪いんじゃないかな。その点レオはバカだから安心だ。
「なんか私の悪口考えてませんか?」
レオがなにか感づいた?!
「なにを言ってるんですかレオ先生。レオ先生の悪口なんて考えませんよこのレギオンの副代表として、事実上の代表として働いて貰わないといけないのに」
「そうですよね〜」とか言ってご機嫌になるレオ。
なにかあった時、人柱として頼みます。
「話としては、グラディウス家を排除する方向でいいんですよね。執政官を排除して治安が悪くならないか心配ですけど」
「執政官と言っても対した仕事してませんから。この街は優秀な官僚達によって支えられています。官僚の約7割がフォシーユの館出身ですのでご安心を」
ホープが言ってくる。日本みたいに上がコロコロ代わったりしても崩壊しないみたいなもんか。
「兵士とかどうなるの?グラディウス家を守ろうとするんじゃないかな?」
「この街は人類の最前線言わば冒険者の街だ。この街にはアル様が作ったレギオン、俺のレギオン、その他が五つだ」
あれ?!グレンの傘下のレギオンが5つじゃなかったっけ?
「この街のS級冒険者は全て俺の下についてます。万が一兵士達が此方に牙を向いても負けはしません」
力強く保証してくれるグレン。貴方すごい人だったんですね。
「兵士指揮官の約半分はフォシーユの館出身ですから。此方に手を出すことは考えにくいですね。それに兵士の給料は街の自治政府から出てます。グラディウス氏の私兵ではありません」
ホープが、この街の実質的な支配者ではないだろうか
「グラディウス家が雇っている私兵は約100ですね。私の一撃で葬ることができますよ」
レオがリュイの置いていった資料を見ながら話してくる。
「しかも私兵の給料は自治政府からの流用ですね。横領してる額もすごい事になってますね。こっちの奴隷に関する資料も酷いものですし。これは、グラディウス家の見取図ですね。地下室の位置までバッチリ書いてありますね」
地下室の一室に赤い丸でエルフの姫と書かれている。本当にすべて知ってたんだなリュイは
「グラディウス家が無くなったとして後任はどうするんだ?いくら王子とは言え実家からは追い出された身だ。年も八歳だから民衆も不安だろう。できればグレンかホープにして貰いたい」
そんなメンドくさい事したくない。この二人なら上手くやるだろう。リュイも上手くやりそうだが正直後が怖くて任せられない。
「ご指名は有難いのですが適任者は別におりますので」
「俺も多分ホープと同じ考えだ。適任者は別にいる」
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どうしてこうなった?!
私はグラディウス家の当主として上手くやっていた筈なのに……
「父上、エルフ達も姫をそろそろ諦める頃でしょう。マイを手元に置きたいのです……」
この馬鹿息子の所為だ。子供の頃手習いとしてフォシーユの館にやったらエルフ好きなって帰ってきた。エルフ姉妹の教官だったらしい。
べつにこの国はキラ帝国の様に人至上主義を掲げてエルフを迫害している訳ではない。エルフ自治領も近い。将来好きな相手と結婚すれば良いと考えていた。それなのに
「……つまり、私とマイは愛し合う運命にあるのです。どうかご許可を」
何の許可だウルサイ。息子ルッツのエルフ好きは有名だ。この街に常駐しているエルフ達もマークしている。今はルッツを別邸に住まわせて目を逸らしているがいつまでもつか。
大体気になる相手が居るからと言って攫ってくるとは、公国内の奴隷商はエルフに手を出さない。キラ帝国かラクトニア王国辺りの工作員だったに違いない。この騒動が終わったら脅迫にでも来るのだろう。
この馬鹿息子が一粒種ではなかったらすぐにでも放逐してらやるのに。
この馬鹿がエルフの姫を拉致したと聞いてすぐに動いた。奴隷の大脱走事件の自作自演。
姉のマイの方にはルッツ自ら隷属の首輪を嵌めてしまったのでエルフに返す事はできない。大脱走事件が起こり妹は保護できたが姉は行方不明。その上でエルフ自治領にいくらかの見舞金を払う事で手打ちにする。これが筋書きだった。
しかし結果は行方不明。どうやら東の魔境に逃げた様だ。幾人か死体も回収できたが何れも違った。
エルフ自治領の奴らをそろそろ追い払いたいが名目がない。どうするか?
「グラディウス様。失礼します」
「リュイか。入れ」
なかなか有能なのでギルドマスター代理を任せているリュイだ。いい報告だと良いが
「本日ギルド登録した若者がキングバッファロー10頭、グレイトグリズリー1頭持参し本日A級ライセンスを獲得。さらに買取金を孤児院へ寄付しS級へと昇格いたしました。できれば本日の夕方にお会いして頂きたいのですがいかがでしょうか?」
これは朗報だ!
「グレイトグリズリーとは!魔境に入るのは危険ではないか。エルフ達にも知らせるのだ」
手土産に熊も持たせてやろう。エルフ共も言い訳が必要だろう。
グレイトグリズリーが現れ街は厳戒態勢に入る。エルフ自治領にも危険が及ぶ可能性があり。エルフの調査隊も引き上げざる得ないだろう。
「エルフは魔力は強いが接近戦は弱い。グレイトグリズリーは魔力が通じない。一刻も早く教えてさしあげねば。被害が出ては遅いのだ。信じない可能性もあるのでグレイトグリズリーもエルフに送れ」
「はっ直ちに手配致します。ギルド予算の金貨2000枚で買取りしましたが、予算の枠はいかように」
「いつものように街の予算から出す。2500枚で出しておけ。処理は此方でする」
思わぬ臨時収入にもなった。屋敷の補修代くらいにはなるだろう。朗報をもたらしてくれた若者にも会わねば
「グレイトグリズリーを倒した英雄にも御礼を言わねば。公国の守護者たるベルナルド卿以来の快挙だ!盛大に祝おうではないか」
問題が解決し、またグラディウス家の栄光の日々が続く。今日は素晴らしい日だ
盛大に祝おう!